ちょっと一休み。競馬へ
1月1日。今日はパチンコは休みだ。理由は簡単。一部地域を除き、元日や3が日はパチンコ屋も開店時間が遅かったり、店休だからだ。
午前8時。俺は家から少し離れた小ぢんまりした神社にいた。
気まぐれで初詣をしてからパチンコでの勝ちが大きくなったので、毎年すいている神社に初詣に行くのだった。
誰もいない神社の鳥居をくぐり、5円玉を賽銭箱に入れて二拝二拍手一拝。
願い事は―俺の胸の内に秘めておこう。他の人間に知られるとよくないというし。
この後はアカリと競馬に行く。常々他のギャンブルもしてみたいと言われていたので確実にパチンコを休みのこの日に席を取っていた。
(ん? あれ? アカリか?)
いつもよりずいぶん小綺麗なギャルっぽい恰好で待ち合わせ場所に駅前に来たアカリ。
俺と同じで友達と初詣にでも行ってきたのだろう。
「よっしゃ! ビギナーズラック! 万馬券取ったるにゃ!」
万馬券なんてそう簡単に当たるもんではないのだが、本人はやる気に満ち溢れているのでそのままにしておく。
ちなみに賭け額が大きくなると色々危ないので、今日は軍資金2万4千円までというルールで賭けることになっている。
この金額になっている理由は、行われるのは12レースなので1レースに2千円賭けることができる。
3連複5頭ボックスは10点なので200円で買っても2000円。初心者がそれでやっても、まあまあ的中して配当もそれなりに狙える金額というわけだ。
コンビニでアカリはカップ酒とつまみを買い、場前で適当な競馬新聞を2枚買ってから競馬場の中に入る。
「新聞の見方は・・・・・・」
有料観覧席に入った俺たち。
アカリに競馬新聞の見方を教えてやる。個人の見解は教えずに本当に見方だけだ。
馬名、父母の名前、乗る騎手、勝率、直近の成績などなどなど。
「わっかんねーにゃ。とりあえずラッキーセブンの7番に賭けるにゃ」
「賭け方も色々あるぞ」
「万馬券取れるやつにゃ!」
「それなら馬単、3連複、3連単あたりだな」
アカリにそこらから持ってきていたマークシートと鉛筆を渡す。
「タバコいってくるにゃ」
「はいよ」
アカリがタバコに行っているその間に俺は自分の予想を立てる。
聞かれていることに返事をしながら予想をできるほど器用じゃない。
5分で決めよう。完璧な予想を。
(アカリの言っていた7は―悪くはないか? 騎手の乗り替わりだけ気になる)
一番人気の4と組み合わせて4-7のワイド一点勝負にすることにした。2000円を一点に。
予想オッズは3.5倍だ。的中すれば2000×3.5の7000円。
一方、タバコから戻ってきたアカリはというと。
「モニターでは7の単勝は9倍だったにゃ」
アカリも3連単を2000円ほど全部7番を頭にして買ったようだ。
出走。
7番は出遅れもなく、先頭集団につけていい位置だ。
俺がワイドで買っている4番も悪くない。すぐに外に持ち出して前へいける位置にいる。
7番は2番手でコーナーを曲がり、最終直線に入る。
アカリは緊張の面持ちで7番の行方を見守る。
前の馬が追い比べる中、すごい勢いで内側からごぼう抜きしてくる馬がいた。
『勝ったのは人気薄の10番。惜しくも7番は2着、3着は一番人気の4番―』
「なにが起きたんにゃ? 7番負けたにゃ?」
「一着は10番だってよ。俺はワイド当たったけどな」
画面に映し出される単勝払い戻し11000円の文字。
アカリは最も簡単な単勝万馬券のチャンスを逃したのだ。
それからのレースはずっと本命、対抗決着。
多少荒れることもあったが、そのときは小頭数で、3連単でも万馬券になることはなかった。
7レースが終わったところで、
「残りはあと1万円にゃ」
「俺も同じだけど、2万ほど増えたな。じゃあ次のレース分を買って飯行こうか」
増えた分は入れないで、使える金額は全部で2万4千円なので俺の勝ちは濃厚だ。
「タンメンに~、もつ煮込みに~、ポン酒にゃ!」
「俺はかつ丼で」
「めちゃくちゃ験担ぎするんにゃ」
「いいんだよ。普段毎回かつ丼食ってたら太るからここぞというときだけだ」
併設の食堂で注文した約3千円分の食事。
これが高いかどうかは馬券の的中具合によるだろう。
「うまいにゃあ!」
「だいたいギャンブルする場所の飯は美味しいところが多いよ」
「そうなんにゃ。なあアンタはどんだけいろんなところに行ったにゃ?」
「沖縄と北海道以外の大都市にはいったかな。田舎じゃあパチンコ屋少ないし」
「いいにゃあ。にゃあも行きたいにゃあ」
「そうだな・・・・・・自分で打てる台見つけられるようになったら旅打ちにでも行こうか?」
「行くにゃ! にゃあ頑張るにゃ!」
張り切るアカリ。だが、一人前になるのはまだまだ先だろう。
俺も大学卒業する前くらいまではボコボコに負けていた。勝てるようになったのはマジメに立ち回りを考え出した23歳から。就職できなかったからキッパリ割り切って、勝てるようになった。親も稼げるのならばと放任された。
それくらい甘い世界ではない。パチンコ屋で常時勝てる人間は1割以下と言われている。一説にはMARCHに入れるくらいの人間だとも。
飯を食い終わり、席へと戻った俺たち。アカリは生ビールを席に持ち帰っていた。
「そろそろ来るにゃ。頭に7!」
「まあ来ても安いけどな。一番人気だし」
ダントツ一番人気の7番。オッズは単勝2倍。
単勝に2000円入れても当たったところで4000円。
俺は7番を頭にして3連単を各100円ずつでフォーメーションで広く買う。
2着に2頭、それ以下をたくさん。
「当てるなら馬単の表裏がいいんじゃないかな」
「じゃあそれにするにゃ」
アカリは7と穴めの5番、1番との馬単を表裏で500円ずつ。どちらも来れば20倍以上つく。
「決まったにゃ! 7は絶対一着にゃ!」
最終コーナーを回った時点でぶっちぎりで7番がトップだ。
あとは1番が2着なら俺もアカリも当たりだが・・・・・・
『写真判定中』
1番と3番が競り合っていた。見ていた感じどちらでもおかしくない。
「ドキドキで頭が爆発しそうにゃ」
ビールをあおるアカリ。
それは酒の飲みすぎではなかろうか?
7
> 4バシン
1
> ハナ
3
ということで二人とも的中
アカリの配当は21倍。500円賭けているので1万円越えの配当。
俺は3連単的中。2万馬券だ。100円が約2万円に。
これが今日の見せ場だった。
そのあとは特に大きく当たることはなく、最終的にアカリは1万負け。
俺は3万円ほどプラスになった。
「楽しかったにゃ~。また来たいにゃ~」
「またパチンコ行かない日にでも来よう」
・有料観覧席:昔と違い、現在は殆どの席が有料である。おおむね300円くらいから数万円。
・マークシート:受験などで使うマークシートのようなもの。文字や記号や番号のところを塗りつぶして書く。
・頭:その馬が1着になる予想。
・ワイド:1から3着に選んだ2頭が来れば当たり。そこそこ的中しやすい。
・験担ぎ:勝つにあやかり、カツを使った食べ物を食べる。




