第8話「ラスボスだったけど、分身します」
宿屋の自室に戻ってきた俺、アスノ・パウワー
一人で歓楽街に行くこともできたけどアークに悪いと思ってやめた
イスに腰掛けながら今後のことを考える
数日中に“ジュエル系大量湧き”のダンジョンへ行き、安全を確かめるつもりだ。
だがその前に。
「俺がどれだけ戦えるか確認するのが先か……」
ゲームとは違う。
ターン制でもなくなったこの世界で、スキルの挙動がどう変わるかも調べたい。
アーク達はギルドで別の依頼を受けているからそれを片づけるらしい
エミルはダンジョンに行くような依頼はないらしいけど…心配だな─
(俺との接触で未来が変わってる可能性もあるし……
四六時中監視する方法、ないかな)
危険が迫ったら知らせが来る魔道具を渡す──という案も浮かぶが
「これ!エミルさんのために作った警報アイテムです!
危なくなったら俺が飛んで行くンで!肌身離さずつけててくださいね!」
「わー!ありがとう(ゴミ箱にポイー)」
(信頼関係が構築できてないのに渡しても受け取ってもらえんだろう…
あと普通にどっか置き忘れることもあるだろうし)
「せめて俺がもう一人いれば……」
そう呟いた瞬間──ふと思い出した。
(……あ。 デニスって分身してたよな)
剣聖ルート、剣術大会の決勝。
一対一のはずが、分身で場をひっかき回してた。
「とりあえず一度やってみるか。」
《心像分体》
空気がぐにゃりと歪み、俺の“もう一人”が現れた。
……と同時に、身体の中のステータスがガクンと半分抜けるような感覚が走る。
「うおっ……結構くるなこれ……」
分身体は俺そのものの姿、ただしパラメータは半減。
手数は増えるが火力は減る。
あまりメリットを感じない。
「質を落として何体も作れないか……?」
試しに魔力の配分をギリギリまで削り、低品質で分身を生み出してみる。
──ぼふっ
(あ、崩れた。ダメだ)
何度も模索してわかったことは
見た目を同等にするには“自分のステータスの5%”が必要。
それ以下では形が維持できず、俺の姿にならない。
だが今回欲しいのは、戦力ではなく“監視役”だ。
「よし……実用目的で作るか」
俺はステータス2%分だけ使って、分身を生成した。
──ぽん。
生まれたのは、二頭身のミニアスノ。
身長15cmくらいで、下半身はスライムのようにとろりとした流体。
まぁ見た目はこんなもんでいい
ミニアスノはぷるぷる震えながらこちらを見る。
「よし。任務だ」
俺はミニアスノを指先で持ち上げ、静かに命じた。
「エミルの影に潜んで、危険が迫ったら俺に知らせろ」
ミニアスノは小さく胸を張った。
そして、迷いなく影に溶けていく。
(よし、これでエミルに危険が迫ったら、分体を元に転移魔法で駆けつけられる)
胸の奥に残る不安の棘が、少しだけ丸くなる。
そしてそのままベッドに倒れ込むと、
途端に身体が深く沈み込み、意識が落ちた。
――――
朝。
「……あれ」
頭がスッキリしている。
身体が軽い。
疲れが……ない。
(……え、え? なにこれ?)
俺は上体を起こし、思わず叫んだ。
「な、なんだこれ……睡眠って……こんなすごいのか!?!」
長い間、精神を病んで眠れなくなっていた。
眠っても、疲れなんて取れた試しがなかった。
だが今は──
「身体軽ッ!? 脳ミソめちゃくちゃ動く!?
お、おいこれチートじゃねぇか!!」
気づいたら俺は小躍りしていた。
「睡眠最高!睡眠最高!!」
その時、ドアがノックがされ、扉が開いた
「アスノ、起きてるか?朝飯でき──」
踊る俺と目が合ったアークが固まる。
「……おまえ、何してんの?」
「アーク!睡眠最高!睡眠最高!!」
「こっっわ……変な草でもキメてんのか?」
「お前も睡眠最高ダンスを踊りなさい!」
「何言ってんだお前…」
と言いつつ、踊りのステップを確認してくるアーク。
(なんだかんだで付き合ってくれるんだな……)
二人でテンション高く踊っていたら──
「うるさい!! 二階で暴れないで!!」
エミルに怒鳴られた。
……うん、そりゃ二階でどったんばったんしたら怒られるよね。
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