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ブレイカーズ ─大好きなゲームのラスボスに転生したので破滅を回避しつつ続編を生み出します  作者: 七宮ペポポ


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7/10

第7話「どこへ行くんだぁ?」

 アーク達が泊まる宿は木造の二階建てで、冒険者がよく使う安宿だが

 外壁は古いながら手入れが行き届いており、温かい灯りが窓からこぼれている。


「アスノ。二階の角部屋、一つだけ空いてたらしい」


「よかった……野宿せずに済んで」


 受付をすませ、鍵を受け取り、案内された部屋の扉を開ける。


 木の香りが残る床、清潔なシーツのベッド。

 そして部屋の隅には小さな机と椅子、それから本棚。

 普通……本当に、普通の部屋だ。


(こういうのでいいんだよ、こういうので)


 壁に耳を寄せても隣室の声は聞こえない。

 窓の鍵もしまるし、虫もいない。

 まっとうな部屋で一安心。


「……さて、暇だし本でも読むか」


 本棚に近づき、古びた背表紙の一冊を抜いた瞬間──


 ひらり。


「ん?」


 一枚の紙切れが舞い落ちる。

 拾い上げて開くと……


(……風俗の広告……!?)


 濃厚な色気全開の文字、刺激的な絵柄、

 そして店名──《蜜の館》。


(あ……これ……モニュモニュだ……!!)


 思い出す。

 マジブレには、「モニュモニュ」という謎の行為を受けると

 魅力ステータスが上昇する(ただし詳細は描写されない)

 という謎のイベントがあった


 制作のバラムウェアソフトの別ゲーにも

 「モニュモニュ」は登場するのだけど詳細は不明

 「察してください」という態度を公式が毎度貫いている


(今の俺なら……正体がわかる……!

 体験することすらできる‼️)


 妙な使命感に駆られ、俺は勢いよくドアを開けた。


 すると──


「あっ」


「……ん?」


 廊下をこそこそ歩いているアークと、バッチリ目が合った。


「アークさ、コホン アーク、どこ行くんだ?剣の鍛錬かい?」


「ま、まぁそんなところだな」


下手っぴ、嘘が下手っぴだよアークくん

君が本当に行きたいところはここ


《蜜の館》──ッ!! 


でもまだ知り合って間もない俺にそのことを言うのは気恥ずかしいよな

だけどな、お前は知らないだろうが俺はお前のファンでな

お前がどういうやつか、よーく知っているんだよ


「アーク、ちょっとこっちに来てくれ」

「な、なんだよ…しょうがねぇなぁ」



 俺は後ろ手に部屋の扉を閉め、



 静かに──例のチラシを掲げた。





「こ こ へ 行 か な い か ?」





 その一瞬、アークの目が大きく見開かれた。


 理解。

 共感。

 同族発見の喜び。


 すべてが、その一瞬に宿った。



 アークは拳を握りしめ、

 俺の前に差し出してきた。





「共に行こう」





 その右腕は固く、揺るぎない決意に満ちていた。


 俺達は熱い握手を交わす。






(そうだ……俺達は……男の子なんだ!!)







「しかしアークよ、なんでそんなこそこそしてたんだ?」


「そりゃおめぇ、エミルに見つかるとコトだからよぉ」


(やっぱりエミルさんは保護者ポジなのか……)


「なら廊下は危険だな……窓から行こう」


「確かにそっちの方が安全そうだ」


 二人でそっと窓を開け、屋根へ這い上がる。

 瓦の感触が手のひらに伝わるが──俺、やけに動ける。


「お前慣れてないか? 常習犯か?」


「いや、俺は初めてなんだけど……体が覚えてるらしい」


 アークは不思議そうな顔をする。


(デニス……お前、こういう夜遊びしてたのか……?

 潜在的に“動き”が最適化されとる……)


 屋根沿いに移動し、二人同時に軽く飛び降りる。

 おまけに完璧な着地だ


「よし、このまま走ればすぐ快楽街に──」


 その時だった。


 ズッ……


 影が、揺れた。



「ど こ へ い く ん だぁ ?」



 目の前に現れたのは──

 感情の死んだ目をしたエミルだった。


「こ、コココッ コンビニです!」


「ココンビニってなんだぁ?」


 やばい。

 説明できる気がしない。

 こわい、エミルさんの目 こわい


 この数秒のやりとりの間に──アークは全力疾走で逃げていた


「悪いなアスノ! お前の尊い犠牲は忘れない!

 土産話を楽しみにして……ッ!?」


 アークの脚が止まる。


「か、体が動かんッ……!? この感覚……まさか!?」


「スキル:《影縫い》」


 エミルの静かな声が降る。


「アーク……覚悟の準備はいい?」


「や、やめろおおおおおお‼️‼︎」


 その後に起きたことを──俺は見た。

 見てしまった。


 容赦のない拳。

 鋭い膝。

 静かに、しかし圧倒的にエミルの暴力の数々が

 アークの身体に刻み込まれていく。


「ひぃっ……! ご、ごめ……ぎゃああっ!」


 アークは情けない声を上げながら吹っ飛ぶ。

 だが俺は──


(このアークの真っ直ぐな馬鹿さ加減が好きなんだよなぁ)


 

 モニターの画面越しにしか見れなかったものが

 実感をもって目の前で行われていることに半ば感動していた。

 いや、助けなきゃいけないんだけどさ。


 ──とりあえず、今日はもう帰ろう。


 俺はそっと後ずさりし、宿の方向へ歩き出した。

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