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ブレイカーズ ─大好きなゲームのラスボスに転生したので破滅を回避しつつ続編を生み出します  作者: 七宮ペポポ


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3/9

第3話「ラスボスだったけど、床磨きます」

予想外の主人公との邂逅にその場から動けなくなった俺

頭の中は大学入学共通テスト日に寝坊した時のようにテンパっていた


(゛ドドットdoド゛ウスレバインダァァアアアアア‼️‼️‼️‼ 

 ナゼェココニイィィィィ゛‼)


思考回路はショート寸前、普段使わぬ脳の一部もかき回して答えを探る




そして俺がとった行動は実にシンプルなものだった




「す、すいません‼️床、床なにか拭くものないですぁああああ‼️」


とりあえず普通の人間っぽい行動をとるのが無難でベター

日常的動作を行うことにより頭を落ち着かせるんだっ


厨房奥から布切れを持って駆けつけてくれたギルド職員さんにお礼をして

俺は盛大にこぼしたエールを拭き始めた

職員さんも手伝うと言ってくれたがそれは丁寧に断った。

余計な仕事を増やしてほんとすいません


テーブルの下に潜り込み、床を拭く

程よい薄暗さに心が落ち着きを取り戻しだす。

うん、この薄暗さは陰キャの心に良い


「手伝いましょうか?」


ふいにかけられた声に、反射的に上を向いた──その瞬間。


 ゴンッ!


「ア゛ッッッイッテ‼︎」


「だ、大丈夫ですか!? ヒール!」


回復魔術をかけられた頭部から痛みがスッと引いていく

両手で頭を抱えた姿勢のまま上目遣いに声の方に振り向くと


俺の顔を覗き込むミーナの顔があった


(ウワアアッ 顔ちっちゃ!まつ毛なっが! ファンサがすぎるッ‼️)


落ち着いた脳内が再度高速回転し始める


「ア、アザマスっアザマス!」

「こっち拭きますね、アーク!ほら手伝って」

「ミーナはテーブルの方を頼む、床は俺が拭く」



 ……今、俺アーク達と床掃除してるのか?



 いやいやいや、そこに感動してる場合じゃない。

 そもそもスローラで会う前提で、初対面のシミュレーションをしてないんだぞ!

陰キャは初対面(?)の人に会うときは10パターン以上行動シュミレートしないといけないんだよ?!


「アンタ掃除うまいな」


「え?」


「床が鏡みたいに反射してる」


いや、違うんです。

ただ緊張しすぎてゴシゴシやりすぎただけなんです。



床とテーブルを拭き終わり

布を洗って職員さんに返すと頭も大分落ち着いてきた

多分、デニスの脳力のおかげだろう。頭の回転が早い

布をすすいでいる間に会話シーンを7つ作れたし、

上手く乗り切れるハズだ、多分……



 アークとミーナが腰掛けているテーブルを遠目に確認する。

 いくぞ──アスノ・パウワーとしての初会話イベントだ。



「掃除、手伝ってくれてありがとうございます。これどうぞ」


俺は手にした飲み物を二人に差し出す


「お、悪いな ほとんどアンタが片付けたのに」

「良いんですか?私ほとんど何もしてないんですけど」

「さっきのヒール代ってことで」


推しキャラに自分の不始末を処理させるのはファンとして…ね

あれから身体強化魔法つかって3倍速で動いて片付けた


「コレも何かの縁ってことで…夕食は食べましたか?おごりますよ」

「いやいやいや、そこまでしてもらうわけには…」

「あぁ、飯は宿で──」


グオォルルルルルッ


アークの腹が、魔獣の咆哮みたいな音を鳴らした。


「遠慮しなくていいですよ。幸い、今懐が温かいんで。

 メニューの端から端までいきます?」

「そ、それはっ 魅力的な提案だ」

「アーク‼️」


そう、この主人公、アーク・ブレイズは公式公認の食いしん坊キャラなのだ

マジブレは魔物を調理して食べると

ステータスが上がる少し変わったシステムがあり

アークは他のキャラより食事システムでの成長率が他キャラより2.2倍高い


『アークには飯食わせとけば良いから』というくらい育成が容易なキャラクターで

そのおかげで二次創作では大体なんか食ってる絵ばっかり投稿されていた


主人公だから成長率高いだけでしょ、そんな安易なキャラ付けはさぁと

アーク食いしん坊説に異論を唱えるユーザーも少なからずいたが

公式の無料アップデートで岩しか食べない亜人種の食べる岩まで

「うまそう」と言って食べるイベントが

挿入されて以降、完全に食いしん坊キャラで定着した


俺は職員さんを呼び止め、メニューの3分の1を注文する。


「いやーここのギルドはなかなか美味そうな料理が並んでますね」

「このブラックボアの煮込みシチュー、美味そうじゃあないか?」

「いいですね、追加しましょう すいませーん!!」

「ちょ、ちょっとアーク!?」


ミーナが慌てふためく姿を眺めながら、俺の心は満たされていた。


「いやーこまったなー。調子に乗って頼みすぎてしまったかなぁ?

 一緒に食べてくれる人がいると助かるんですけどぉ」


「……わかりました。食事代はちゃんと払います。

 アークはその…よく食べるので」


知ってる。知ってるいるから

強引にでも引き止めるために設定を使わせてもらった。


よく考えれば見ず知らずの人間からの食事の誘いなんて俺なら蹴ってる

そう考えたところで俺は名すら名乗ってないことに気づいた


「紹介が遅れました。俺はアスノ・チ─ コホン アスノ・パウワーと申します」

「あっ 私はミーナ・ナジミです」

「俺はアークだ。よろしくな」


そう言うとアークは右手を差し出してくる

俺はその手を強く握り返す


(あぁ… ほんとうに…本当にここに”いる”んだな…)


目に滲んだ涙を隠すようにメニューで顔を隠して

俺は別の話題を振る


「俺はマナバスでスローラへ行くためにチホートに寄ったんですが」


「スローラ!? スローラに行くんですか!? 私達あそこの出身なんですよ!」


食い気味に話に乗ってくるミーナ

それを横目にアークは不思議そうな顔をする


「あんな田舎に?なんにもないぞあそこは」

「ちょっと! 私たちの故郷をそんなふうに言わないでよ!」

「でもよー」


スローラはそれはもう田舎であり「なにもないがそこにある」と言える

農業や狩猟が主な田舎町だ


一応いくつかイベントがあるのだが

別に立ち寄らなくてもゲームはクリアできる、そういう町

なんだけど…ゲームプレイヤーの9割は絶対に行ってると思う

隠しイベントがその、めちゃくちゃ良くってぇ 

あれを見ないのはもったいないわけでぇ(ニチャァ


「スローラの、フルカ山のあたりに大きな泉があるでしょう? 

 あそこが絶景だと聞いて見てみたいと思って」

「あぁあそこか、よく釣りに行ったよ キングコイが美味いんだ」

「アークのは釣りじゃなくて”漁”でしょ 雷魔法使うのはやめなさい」


そうこうしてると注文した料理が運ばれてくる

初の異世界飯は香しい香りと鉄板の上で焼ける肉の音に始まり

俺の胃袋をたいそう刺激してきた


「レッドボアステーキとホロホロドリのオニオンスープです」


美味そうだ…。元々マジブレの食事シーンには何か異様なこだわりを感じていたが

ゲームではなかった”嗅覚”までプラスされると唾液が止まらなくなる

俺はあふれる唾液をゴクリと飲み込んだ



「お先にどうぞ」

「いや、アスノさんから─」

「ソウダゾ オデハ マダ ガマン デキル」


ヨダレを滝のように口から流すアークのセリフには

まったく持って説得力がなかった

その姿に俺は笑いを堪えながらうながす


「アークさん、脱水になる前にコレお腹にいれてください」

「イイノカ?‼️」

「えぇ どうぞ おかわりもどうぞ」

「イタダイキマス‼️」


行儀などまったく気にせずナイフをボアステーキに突き立て豪快にかぶりつく

ゲームだと少しずつ丁寧に減っていく絵が流れていったのだが

あれは多分他キャラの映像なんだろうな…アークのは早すぎる

パンちぎって食べる絵とか想像できんぞ

ゲーム開始前の半年間にマナーを学んだ? ないなそれは


「ウマイ!ウマイ!ウマイ!」

「あーもう ちゃんとよく噛んでたべなよー」


跳ねた肉汁や口周りをナプキンで拭ってやっているミーナと

スープをがぶ飲みしてるアークを俺はニチャニチャした笑みをしながら眺めていた

経験ないけど、大量の食事を若い後輩におごる先輩社員とかって

こういう気持ちなのかな

いや、でもこのニチャりは推しカプの新スチルを見る喜びだと思うから違うかな


そんなこんなで次々と運ばれてくる料理に舌鼓をうっていると

ギルドの扉が、軋むような音を立てて開いた。


乾いた金属音が、ざわついた空気の中で妙に耳に残る。

俺は反射的に入口のほうへ視線を向けた。


そこに立っていたのは、赤紫色の髪を持つ女性。

彼女は誰かを探すように、静かに店内を見渡している。


「あっ! 姉さん!こっちこっち!」


ミーナがぱっと声を上げた。

その呼びかけに女性は表情を緩め、すぐこちらへ歩み寄ってくる。


「あぁー‼️なんでご飯食べてるのよ!宿で食べるって決めてたじゃない!」

「ごめーん! これには事情があって─」

「海よりも高く山よりも深い理由があってな」


軽い小言に、軽く謝って、軽率な言い訳が返る。

その空気は、血縁とか家族とか、そういう言葉を

自然に想起させるほどの柔らかさで満ちていた。

気心知れた仲でしか生まれない空気を生み出していた


俺はその一幕を微笑ましく眺めて──  






いたわけではなく




困惑した顔を隠すように手で顔を覆っていた





(……誰だ、このキャラ──)




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