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ブレイカーズ ─大好きなゲームのラスボスに転生したので破滅を回避しつつ続編を生み出します  作者: 七宮ペポポ


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第20話「ラスボスだったけど、大金でアイス買います」

インザーの洞窟での下見を終えた日、アーク達にインザーの洞窟へいつでも行けると報告した。


 万全の態勢で臨むために、今日は休養日にすることを提案し、皆もそれを快く了承してくれた。




 翌日、休みというわけで。 俺は少し遅めの朝食を摂り、数日前に預けたタウロスの金を受け取るため、


 冒険者ギルドへと歩を進めていたのだが――。






「別について来なくても良かったんですよ?」




「そう? アスノ君、ギルマスにお金ちょろまかされたりしない?」




 エミルがからかうように笑う。




「ハハハ、アークじゃないんですから」




「俺だったら金より解体された肉の方を貰うぞ」




「アークェ……」




 何故かついてきたアーク達と共に談笑しながら冒険者ギルドへ向かう。暇だったのかな?


 けれど、こうして並んで歩いていると、「パーティ」っぽくて良いな




 冒険者ギルドに到着し、受付カウンターでタウロスの件を話す。


「少々お待ちください」と受付嬢は奥の部屋へと引っ込んでしまった。


 金額が大きいから手続きに時間がかかるのだろう。




 手持ち無沙汰になった俺達は、ギルドの待合スペースを見渡す。


 そこで、俺たちは一人の少女を見つけた。 ギルドの隅っこ、柱の陰に隠れるようにして、小さな女の子が座り込んでいた




 戻ってきた受付嬢に少女のことを尋ねてみる。  すると受付嬢は、「ああ……」と困ったように眉を下げた。


 彼女の話によると、少女は朝一番からここに来て、ある依頼を受けてくれる人を探しているのだという。


 だが、その依頼を受けてくれる人は見つからないだろう、と受付嬢は声を潜めた。




「どんな依頼なの?」




 エミルが尋ねる。  受付嬢は少し迷った末、事情を説明してくれた。


 彼女の母親が『熱枯れ病』にかかり、その特効薬を作るために「バルチ草」が必要なのだという。




「バルチ草……」




 俺は眉をひそめる。 バルチ草といえば、高価な万能薬の原料となる希少な薬草だ。


 生息地は険しい山岳地帯。しかも周辺には強力な魔物が生息しているため、採取難易度はかなり高い。


 現在のアーク達のレベルでは、かなり危険な場所だ。




 そんな話をしていると、視線を感じたのか、件の少女と目が合った。


 少女はトコトコと、おどおどした足取りでこちらにやってくる。


 そして俺たちの前まで来ると、小さな手を差し出した。




「あの、これ……」




 手のひらの上で、僅かな銅貨が三枚、心許なく光っていた。




「おかあさんが びょうきで…… バルチそう っていうのがひつようで……」




 震える声。必死に涙を堪える瞳。


 アークは無言で少女の目線の高さまでしゃがみ込んだ。そして、少女の頭を無言で撫でる。


 優しく頭を撫でる手とは対照的に、逆の手は白くなるほど力強く握りしめられていた。




 少女を見つめるその目は、慈愛に溢れている。だが同時に、


 自分の力不足で依頼を受けられない、彼女を救えない無力な自分への怒りが滲んでいた。


 今の彼の実力でアイゼル山へ挑めば、パーティ全員を危険に晒すことになる。


 それを理解しているからこそ、彼は「やる」と言えないのだ。




 ミーナは両手を顔の前で組み、目には涙を滲ませている。


 エミルは顔をしかめ、少女の瞳を直視できず、顔を逸らした。  重苦しい沈黙。


 大人たちが「無理だ」と判断する空気の中で――俺は、口を開いた。




「銅貨三枚なんて、そこのアイス屋で三段アイスが買える大金じゃないか。なぁ、アーク」




 俺の場違いに明るい声に、アークが一瞬ピクリと反応し、顔を上げる。




「あ、あぁ……そう、だな……そう…だけど」




「ちょっと、アスノ君、独り占めする気? 報酬は平等に分けるべきじゃない?」




 エミルが肘で俺を小突く、顔を見るとさっきまでのしかめっ面が嘘のようにニコニコしている




「わ、私もバニラが食べたいなーって!」




 ふふ、ミーナも乗ってきた。 彼女たちも分かっているのだ。


 俺がGOサインを出せば、それは「勝算がある」という意味だと。 アーク、後はお前だけだぞ。




 アークは少女から手を離し、立ち上がる。


 そして俺とエミル、ミーナの顔をゆっくりと見回した。




「良いのか? 危険……なんだぞ」




「アンタに心配されるなんて、私も落ちたもんねー」




「み、皆でやればできるよ! た、多分……」




 そう言ってミーナは俺に目を向ける。  この依頼、俺に相当な負担がかかることをミーナは察しているのだろう。


 そんな申し訳そうな顔しないでいい。逆に推しキャラに頼られて俺は嬉しかったりするんだ




「アーク、リーダーはお前だ。お前が決めるといい」




俺もしゃがみ込んで、アークと目線を合わす


いつもと違い真面目な顔で悩むアークに


俺は努めて明るく言う




「お前の決定に俺は全力で力を貸すよ、 パーティは皆で支え合うもの、だろ?」




「‼️ ……あぁ、 あぁ! そうだな!!」




 アークの瞳に、迷いの霧が晴れたような強い光が宿る。


 彼は再度、少女と目線を合わせるためにしゃがみ込み、今度はその髪をわしゃわしゃと撫で回した。




「嬢ちゃん、その依頼、俺と仲間たちが引き受ける‼️」




 アークの目に活力が蘇った。


 ここで拒否するようなヤツじゃないよな、お前は。




 それになんだか、俺は嬉しく思っていた。


 正義感だけで無鉄砲に仕事を受けず、俺たちの力量とリスクを天秤にかけられるまともな判断力が、彼にはちゃんとあった。


 もし俺の力をアテにして、感情だけで即答していたら、俺はどう思っただろうか。


 「推しに頼られたー」って深く考えずに喜んでいたか? …まぁならなかったことを考えても無駄だが


 彼が仲間を危険に晒さない判断をしたからこそ、俺は彼に更に力を貸したくなった。




 ◆




 俺達はギルドのテーブルに着き、依頼主の少女、マルナから詳しい話を聞いた。


 その後、彼女の案内で母親の元に赴き、そこにいた往診の薬師に更に詳しい病状を聞き取り、現状を把握した。


 一刻の猶予もない、というわけではないが、悠長にしている時間もない。




 向かう場所はアイゼル山。チホートから南東にある山岳地帯だ。


 以前訪れた「バーチの喉笛」よりかは危険度が低いが、誤差程度の差だ。


 俺以外は一瞬の油断が死を招く場所。 俺が全力で引率すれば大丈夫だと信じたい




 俺一人で行けば3人は安全だけど、流石にこの空気でそれを言うのは野暮だろう


 実際のところは……今後潜ることになるダンジョンでのパーティ行動の予行演習にもなる。内心、俺はそう考えていた。




「それじゃあ出発しましょうか。車借りてきますね」




 ミーナが提案する。 アイゼル山は徒歩で行くには時間がかかる場所だ。


 普通なら魔導車を手配して麓まで行くのが定石だが……。




「必要ないです。俺が運びます」




「え?」




 俺は全員に向けて手をかざす。




「《広域身体強化エリア・エンハンス》」


「《浮遊レビテーション》」




 ブワッ!!  俺たちの身体を、強烈な魔力の風が包み込んだ。




「うおおおおっ!?」




「キャッ! か、体が浮いてっ!」




「…何よこれ…… すごいバフっ」




 思い思いの感想を口にする3人。




「舌噛まないように気をつけてな! 行くぞ!」




 俺達は弾丸のように、アイゼル山に向かって空へと飛び立った。

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