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ブレイカーズ ─大好きなゲームのラスボスに転生したので破滅を回避しつつ続編を生み出します  作者: 七宮ペポポ


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13/15

第13話「ラスボスだったけど、肉、卸します」

 転移魔法の光が収束し、チホートの裏路地に俺の姿が現れる。

 バーチの喉笛から一瞬の帰還。


「さて……宿に戻るか」


 路地裏から表通りに出ると、夕暮れのチホートは活気に満ちていた。

 仕事を終えた冒険者たちが酒場へ繰り出し、市場の店じまいをする商人たちの声が響く。


 宿の前まで戻ると、ちょうど入り口から出てくる人影があった。


「あれ? アスノ君?」


「あ、エミルさん」


 買い物かごを片手に、エミルが目を丸くしている。

 戦闘服ではなく、ラフなチュニック姿。その姿は「夕飯の買い出しに行くお母さん(若妻風)」であり

 俺の心拍数がわずかに上昇する。


「これからお出かけですか?」


「うん、アークが『肉が食いたい!』ってうるさいから買い出しに」


宿はミーナの親戚が経営していて

厨房等、自由に使わせてもらえるらしいが

今日の夕食は彼女が作るのか


「肉、ですか」


 その言葉に、俺はポンと手を打った。  

 あるじゃないか。良い肉が。しかも大量に。


「それなら、買い出しに行く必要はありませんよ」


「えっ? どういうこと?」


「実は手頃な肉が手に入りまして。よかったら俺が提供しますよ」


 俺は周囲を見渡し、広さを確認してから、収納魔法に手を突っ込む。


 取り出したのは――先程バーチの喉笛で狩ったばかりの『タウロス』だ。


 ズドンッ!!


 地面が揺れた。  丸太のように太い腕、鋼のような筋肉、そして牛頭。

 身長三メートル近い巨体が、宿屋の前の地面に横たわる。


「はい、これ」


「…………」


 エミルが固まった。  買い物かごを取り落としかけて、慌ててキャッチする。


「……えっと、アスノ君?」


「はい」


「『手頃な肉』の定義、知ってる?」


「え? 食べ応えがあって、スタミナがついて、美味しい肉ですよね?」


「サイズ感の話をしてるのよッ!!」


 エミルがビシッとタウロスを指差す。


「これタウロスじゃない! こんなのここらじゃ売ってないわよ!?」


「あ、味は保証しますよ。タウロスの肉は赤身が多くて脂もしつこくないし、食べるとSTR(筋力)……じゃなくて、精がつきますから」


「それは……まぁいいわ……

 コレどうやって調理するのよ。宿の調理場じゃ入らないわよ?」


 確かに。  この巨体を捌くには、一般的なキッチンでは狭すぎる。


「うーん、じゃあ宿の裏庭を借りて、そこでバーベキューにするのはどうですか? 丸焼きとまではいかなくても、豪快に焼けばアークも喜ぶでしょうし」


「あ、それはいいかも。外で食べるご飯って美味しいしね」


 エミルが少し乗り気になった。

 よし、方針は決まった。


「ただ……問題は量ね」


 エミルがタウロスの巨体を見上げて腕を組む。


「私たちとアスノ君を入れて四人、ミーナの叔父さん達をいれて…いや、アークが十人分食べるとしても、この巨体一体は流石に食べきれないわよ?」


「アークなら一人で一体食べれませんか?」


「貴方アークをなんだと思って… いや…… いけ、る…か?」


「量なら心配ありません! あと20体くらいあるんで!」


「なんで業者並みに在庫抱えてるのよ!?」


 エミルが素っ頓狂な声を上げた。


「20体!? タウロスの群れ狩ってきちゃったの!?」


「いや、向こうから襲ってきたんで、つい……」


「つい、で群れを全滅させないで!」


 エミルが頭痛をこらえるようにこめかみを押さえる。


「はぁ……まあいいわ。でも、そんなにあるなら余計に困るわね。毎食タウロス食べるのも飽きるでしょ」


「そうですね……。あ、そうだ」


 俺は名案を思いつく。


「調理器具、もっと大きいのが必要ですよね? 庭で焼くためのグリルとか、鉄板とか」


「ええ、宿にはそんな大きなものないし……」


「じゃあ、このタウロスを冒険者ギルドで買い取ってもらいましょう。そのお金で、調理器具とその他もろもろを買い揃えるんです」


 これなら無駄がない。  タウロスは素材としても優秀だ。

 角や皮は武具の素材になるし、肉は高級食材として流通する。


「まぁ……無難な発想ね」


「善は急げです、行きましょう!」


「ちょっと待って、このタウロスどうすんのよ! 一回しまって!」


 俺は慌ててタウロスを収納魔法に戻し、エミルと共にギルドへ向かった。



 ◆ ◆ ◆



 夕方の冒険者ギルドは、依頼を終えた冒険者たちでごった返していた。


 換金所の列に並び、俺たちの番が回ってくる。


「いらっしゃいませ。素材の買い取りですね?」


 受付の女性が事務的な笑顔を向けてくる。

 俺は「はい」と答え、カウンターの横のスペースを指差した。


「ここ、出しても大丈夫ですか?」


「ええ、構いませんよ。魔石ですか? それとも薬草?」


「いえ、魔物そのままで」


 俺は収納魔法を展開し、タウロスを一体、ゴロンと転がした。


 ドスンッ!!


 ギルドの床が悲鳴を上げ、周囲の喧騒が一瞬で静まり返る。

 近くにいた冒険者が「うおっ!?」と飛び退いた。


「タ、タウロス……!?」


 受付嬢が目を見開く。


「状態は……傷がほとんどない……? 魔法による一撃死……いえ、内側からの破壊?」


 さすがギルド職員、冷静に査定を始めている。

 俺はほっと胸を撫で下ろした。


「いけますか?」


「は、はい! 素晴らしい状態です。毛皮も角も無傷、肉の鮮度も最高……これならかなりの高値がつきます!」


「よかった。じゃあ、買い取りお願いします」


「はい、ただちに手続きを――」


「あ、残りの分もまとめていいですか?」


「……残り?」


 受付嬢の手が止まる。  俺はエミルと顔を見合わせ、指折り数えた。


「アークが食べる分として……5体キープしておけば十分かな?」


「十分すぎるわよ、あぁー 肉として解体してもらった方が楽だから全部やってもらいましょう」


「わかりました。じゃあ全部合わせて、売りたいのは15体ですね」


「じゅう……ご……?」


 受付嬢がポカンと口を開けた。  周囲の冒険者たちも、酒を飲む手を止めてこちらを凝視している。


「あの、お客様……15体というのは……?」


「タウロス15体です。あ、ここに出すと床が抜けちゃうかな? 裏の倉庫とかの方がいいですか?」


 シーン……。


 ギルド内が、完全なる静寂に包まれた。


 え?  何この空気。


「……ちょ、ちょっと確認してきます! 少々お待ちくださいッ!!」


 受付嬢が顔色を変えて、バタバタと奥の部屋へ駆け込んでいった。


 取り残された俺は、居心地の悪さに冷や汗をかく。

 視線が痛い。  周りの冒険者たちがヒソヒソと話しているのが聞こえる。


 「おい、聞いたか? タウロス15体だとよ……」

 「パーティで狩ったにしても多すぎだろ……」

 「あいつ何者だ? 見たことねぇ顔だが……」


 ……あれ?


「エミルさん……もしかして俺、やっちゃいました?」


 小声で尋ねると、エミルが呆れたようにため息をついた。


「やった、というか……アスノ君、自覚ないの?」


「自覚?」


「この辺境の街で、中級上位のタウロスを、しかも『収納魔法』から涼しい顔して取り出す時点で、もう十分異常なのよ」


「あ……」


 忘れていた。  収納魔法は「レアスキル」扱いだったことを。


「さらにタウロス15体でしょ? 『群れを単独で壊滅させました』って公言してるようなものじゃない。目立たないわけがないわ」


「うぐっ……」


 完全に感覚が麻痺していた。  ラスボスのスペックとゲーム脳が合わさった結果、常識のブレーキが壊れている。

 タウロスは大体一撃で仕留めて序盤の雑魚的みたいな印象になっちゃってて……

 目立たず行動するハズが、スポットライトを浴びにいってどうする


「ど、どうしよう……今から『実は幻術でしたー!』って誤魔化せませんか!?」


「無理に決まってるでしょ。諦めて英雄扱いされなさい」



「ヤダァァァァァ‼‼‼」



 そんな話をしていると、奥の扉が開き、気だるげな中年男性が出てきた。

 長身痩躯でメガネの下に深いクマができていた


 男は俺を一瞥する。その視線は「面倒を持ってきやがって…」といった、

 会社員時代に上司から受けた覚えがある目をしていた


「貴方がアスノ・パウワーさんですか?」


「そ、そうです」


「副ギルド長のノクフです。査定の金額が多くなりそうなので奥で話を」 


「……はい」


(ドドドどうしよ、『怪しい奴』として尋問されたらなんて答えれバインダーッ)


 あぁ…俺は調理器具代金を得たかっただけなのに、どうしてこんなことに


 俺とエミルは副ギルド長の案内のもと、ギルドの奥へと消えていった。



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よろしくお願い致します!

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