第12話「ラスボスだったけど、対人戦します」
女が俺を斬りつけるために踏み込んでくる
「闇魔法 <<シャドウランス>>」
大樹の影から噴き上がった闇の槍が女に迫る。
前進を止める牽制のつもりだったが、彼女は足を止めない。
刀身で影槍を弾き、あるいは紙一重でかわしながら、殺気の密度を高めて距離を詰めてくる。
(来る…ッ)
木剣を握り直し、正面から迎え撃つ。
最初の一合は軽い。だが、次の瞬間には連続した打ち込みが来た。
速さよりも正確さを重視した剣。
軌道に無駄がなく、踏み込みと同時に刃が最短距離を走る。
受けるたびに、手首と肩にじんとした痺れが残った。
剣戟が続くうち、違和感が胸に引っかかる。
見覚えがある。構えの入り、重心の置き方、間合いの詰め方――どれもが、俺の記憶の奥にある「型」と重なっていた。
次の打ち合いで確信に変わる。女の動きの背後に、別の剣士の影が重なった。
研ぎ澄まされ、無駄を削ぎ落とした完成形の剣。
その影は、女の動きをなぞるように現れては消え、しかし決定的な場面では微妙に違っていた。
女の剣は鋭いが、まだ粗がある。踏み込みが一瞬早い。返しが半拍遅れる。
その僅かなズレが、影との決定的な差だった。
俺は防御に回りながら、その隙が現れる瞬間を待つ。
影が理想の軌道を描き、女の刃がわずかに外れる。
(今ッ)
上段から彼女の右肩へ木剣を振り下ろす
――鈍く、骨に残る衝撃。 確かな手応え
「ウボアアアアアー?」
しまった、と遅れて理解する。
今の一撃は、加減を誤った。
「大丈夫ですか?!」
思わず駆け寄ろうとした瞬間、女は片手を上げて制した。
「グヌヌッ……貴様ぁ、よくもやってくれたな!」
吐き捨てるような声。
だが怒気より先に、歯を食いしばる音が聞こえた。
女は一歩引き、刀を構える。
先程の居合とは違う。
上段。右の顔前で刃を立て、切っ先だけが静かに俺を指す。
(突き技か)
女は一度、深く息を吸った。肩が上下する
精神を集中させ、殺気を研ぎ澄ませていく
「《流星穿》」
目が見開かれた瞬間――
空気が裂けた。
流星穿─ 目にも止まらぬ速さで穿つ三段突き
その速度は見た目には一度しか突かれたように見えない
眉間。
反射でかわす。
喉。
木剣で流す。腕に痺れが走る。
そして、胸。
完全には避けきれなかった。
衝撃が左肩を叩き、内側まで響く。
女の口元がゆっくりと吊り上がる。
「この技を受けて、立っていられたのはお前が初めてだ」
防がれた事実よりも、その結果を噛みしめるような声音。
悔しさではない。
期待だ。
「私を、もっと楽しませてくれ」
(……舐められている、というより)
試されている─
……良いだろう、受けて立つ
一歩下がり、木剣を地面に突き立てる。
視線を逸らさず、両手を前へ。
「遊びは終わりにしよう」
魔力が収束する。
「水魔法――《アクア・ブレッド》」
上空に凝縮された水塊が形成され、重力を伴って落ちる。
「この程度ッ!」
女は即座に踏み込み、一閃。
水塊は両断され、裂けた水が岩肌に叩きつけられた。
「浮遊魔法――《レビテーション》」
俺は見下すように女の上空を飛ぶ
「逃さん!」
女が居合の要領で木刀を振るうと
斬撃が光刃となりこちらに向かって飛んでくる
(飛ぶ斬撃?!)
一瞬、超常的な現象に驚くが
(まぁ魔法がある世界だし、斬撃くらい飛ぶか)
女の放った飛ぶ斬撃をかわし、距離を取る。
「氷魔法――《アイス・ウォール》」
氷壁が形成され、逃げ場を塞ぐ。
「闇魔法――《ブラッド・レイン》」
魔法防御を下げる赤い雨が降り、ついでに水で満たす
そして――
「電撃、好きなんだろう?」
一瞬の溜め。
「雷魔法――《ギガ・ボルト》」
雷が落ちた。
水と氷に満たされた空間で、逃げ場はない。
氷壁の中を覗くと、女は倒れていた。
俺は彼女に近づき、気絶しているだけなのを確認して回復魔法をかける
そして仮面を外そうと手を伸ばすが
バチィッ─
仮面に触れると俺にも電撃が走る
「なんだこの仮面は…… 呪のアイテムか?」
側に転がっていた彼女の刀を手に取り鑑定スキルを使う
「叢雲…4番目に強い刀じゃないか 戦利品に貰って─」
いや─ ここでコレを持っていくと俺を追ってくるんじゃないか?
で、行く先々でデニス・ガーランドの名を尋ね回るわけだ
なんやかんやあって面倒事に発展する可能性が上がる
「良し!このまま帰ろう!」
俺は彼女の周りに守護結界を張って転送魔法でチホートへ帰った
◆◆◆
とある一室。
紅茶を口に運ぼうとした手が、止まった。
視界に警告ウィンドウが浮かぶ。
「おや? これは……」
映し出されたのは、浅黒い肌に銀の髪の青年
弟子に渡した魔道具に他人が触れると、こうして映像が送られるよう仕組んでおいた
(あの子を倒したのは一体どこの誰なのか)
魔道具に記憶された鑑定データを閲覧する
ログを確認し、小さく目を見開いた。
(デニス? なぜ彼が、ここに…)
映像の中の彼は、以前知る姿とは違っていた。
見た目だけではない、張り詰めていた何かが
憑き物が落ちたように剥がれ落ちている。
映像は刀を置き、守護結界を張って去るデニスを映し続けた
(刀を盗んでいったら追跡できたんですけどねぇ)
立ち上がり、軽く伸びをした。
(ガーランド家、少し調べてみるか。
その前に――可愛い弟子を迎えに行かないとか)
転移魔法を展開し、部屋を後にした。
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