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番外編 真鍋 幸次郎
真鍋は、決断が遅いと言われる。
自覚はある。
でも、理由もある。
決めた瞬間、
その責任は自分に来る。
三浦透が資料を持ってきたとき、
真鍋は少し安心した。
二択。
しかも、どちらも破綻していない。
(丸投げじゃない)
それだけで、
話を聞く気になる。
「……今回は、こっちで」
そう答えたあと、
透の肩がわずかに下がるのが見えた。
(ああ、待ってたんだな)
真鍋は、
即断即決ができる人間じゃない。
でも、
考えずに出した答えで
誰かが傷つくのは、もっと嫌だ。
会議では曖昧。
返事も遅い。
だから部下は不安になる。
それも、わかっている。
夕方、フロアを見回す。
透はまだ席にいた。
声をかけようとして、やめる。
(今日は、判断を渡しただけで十分だ)
帰りのエレベーターで、
真鍋は天井を見上げた。
決めないのは、
逃げじゃない。
失敗を誰かに背負わせないための、
遠回りだ。
それが、
伝わらないこともある。
でも、
全部をわかってもらおうとは思っていない。




