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コミュニケーションという名の探り合い  作者: 志に異議アリ


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3/7

佐久間 恒一


佐久間は、自分のことをコミュニケーションが苦手だと思ったことがない。


むしろ、話は早い方だし、要領も悪くない。

だから最初は不思議だった。


三浦透と、どうしても噛み合わない。

挨拶は返ってくる。

仕事もきちんとする。

でも、会話が続かない。


「これ、もう出した?」

「……はい」

それだけ。

(壁、厚くない?)


会議のあと、佐久間は透に声をかけた。

「さっきの件さ、もっとこうした方が早くない?」

透は一拍置いてから答える。

「そうですね。一理あります」

それで終わり。

(乗ってこないなあ)


佐久間は悪気なく、次の話題を振った。

「ていうかさ、昼どうする?」

「今日は、いいです」

理由は言わない。

佐久間は肩をすくめた。

(一緒にやる気、ないんだ)

午後、作業を一部任された。


佐久間はさっさと終わらせ、透にも同じペースを期待した。

「ここ、もうできる?」

透はモニターから目を離さず言う。

「確認中です」

その声が、少し硬い。

(遅いな)

そう思った瞬間、透の手が止まった。


夕方、梓先輩に呼ばれた。

「佐久間くんさ」

声は穏やかだった。

「透くんに、ちょっと急かしすぎてるかも」

佐久間は眉をひそめる。

「普通に言っただけですよ」

「うん。普通だった」

少し間を置いて、梓は続けた。

「でも、あの子ね。考えながらじゃないと、動けないタイプなの」


その言い方が、

まるで“欠点”じゃなく“仕様”みたいで。

佐久間は言葉を失った。


席に戻ると、透が小さく頭を下げた。

「さっき、すみません」

佐久間は反射的に言った。

「あ、いや。俺の方こそ」

沈黙。

でも、不快じゃなかった。


(合わないって、どっちかが悪いって意味じゃないのか)


その日から、佐久間は少し変えた。

期限を先に伝える

途中で急かさない

昼の誘いは一回だけ

透は相変わらず無口だったが、

仕事は安定していた。


帰り道、佐久間は思う。

合わせてもらえなかったんじゃない。

合わせる場所が、違っていただけだ。

同期は、比べられる存在だ。

だからこそ、距離が難しい。

並んで立つって、

同じ速さで歩くことじゃない。

そう気づいた夜は、

少しだけ肩の力が抜けた。



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