表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/33

俺もリア充の仲間入り

「急に逃げ出したかと思ったら、そんなヘタレだったなんて。くそいんきゃ!」

「し、しゃあねーだろ……。なんか久しぶりで気まずかったんだから」


 くふふ、と嘲笑う和葉に、俺は赤面しながらそう言う。


「あんなにかっこよかったんだから、もっと自信持ちなさいよねっ」


 珍しく歯がゆいことを言ってくる和葉に面を喰らいながらも、俺はにやりといたずらに笑った。


「へー、そんなこと思ってくれたのか」

「べ、別にそ、そう言う意味じゃないの! それくらい堂々としなさいよってだけで。(かっこよかったのに……)」

「??」


 なぜかいつもと比べてツンの切れがない和葉に違和感を覚える俺。隣で天音が、


「見たかった」

 と残念そうに言っており、

「見んでよい」


 俺がそう言いながら、俺は天音の頭をガシガシと撫でた。よい触り心地。やっぱりベロチューしたい。


「てか、かおりと木乃葉は?」

「二人なら中よ。あと桜もいるわ」

「なんで桜が……? まあいいか、なら早く入ろうぜ」


 こんなところで押し問答をしていても仕方がないし。ここまで来たら腹をくくるしかないかと、俺が扉を開けようとすると、


「ま、まだ駄目よっ!」

「? なにゆえ?」


 立ちふさがる和葉。今日の和葉はやっぱりおかしい。ところどころ空回りしてる感じがするし。距離感も近いような……? なんかこいつ、隠してる?


「ひゅ、ひゅぴぃ~~♪」


 俺の懐疑的な視線から逃れるように、当の本人は下手な口笛を吹いてごまかしている。


「変な奴だな。今日はいったいどうしちまったんだ……。って、何する天音っ!」

「むう、暴れないで」


 急に視界が真っ暗になった。天音にバックチョークをかけられ、逃れようとするも「お、大人しくしなさい、このヘンタイっ」と和葉も参戦。

 変態と言っとけば何でもありになってない!?


「め、目隠し……?」


 抵抗虚しく、布で目をグルグル巻きにされて、いよいよ混乱。

 本能的に手を彷徨わせそうになったが、どうせ手が偶然にも和葉のぺえに当たって「どこ触ってんのよ馬鹿!」とぶん殴られるところまで読めたのでひっこめた。

 主人公補正なんてくそくらえだっ! 和葉は加減ができないんだものっ!


「いいわよ」


 そんなことを思っていると、中からかおりの声が。


「お、おいマジでなんだよ。まさかあれか!? 新手の拷問かっ!?」

「ああもううっさいわね! 早く入りなさい馬鹿浩太っ!」

「ぐへっ!」


 和葉に押し飛ばされ、転びそうになりながら中へ。 なんか扱い雑過ぎない!?


「……」


 俺はどうしたらいいのか分からず、その場で黙りこくる。しかもなんか明らかに緊迫した空気が周囲で流れているような気がするし……。


「もう取っていいよ。浩太君」


 静けさの中、黙って突っ立っていると、木乃葉の声が。


「なんか怖いんだが……」


 と言いながら、俺は恐る恐る目隠しをほどいていき……。

 目を開けると、眩しいくらいの光が入ってきて、俺は目をそばめる。

 その瞬間。


「「「「「誕生日、おめでとー!!!!!」」」」」

 

 パンパンと、不揃いなクラッカーの音が響き渡り、視界を覆いつくすほどの紙吹雪が舞い上がった。


「ッッ……!? まじかよ……」


 俺は驚きのあまり言葉を失っていた。ああ、そうか。俺、今日誕生日だった。


「浩太ってば、驚きすぎ!」


 和葉が面白そうにけらけらと笑う。いやだって、驚くだろ。

 机の上には、デカいホールケーキが置かれ、ご丁寧にろうそくが17本。

 いったいどこから仕入れてきたのかとツッコみたくなるほどのフルコースの料理が。

 これはどこからどう見ても、いわゆるサプライズ的なやつで。

 こいつらは俺の為にわざわざ準備してくれたわけで……。


「あれ、俺、なんで……」


 気が付くと、視界が歪んでいた。反射的に瞬きをすると、頬がくすぐったくなる。


「浩太君、泣いてるの!?」

「あ、あたしってば何かしちゃったかしら!?」

「和葉、責任とって切腹ね」

「コータ、だいじょうぶ?」

「う、うっせえ! 泣いてねえし? ちょ、ちょっと目にゴミが入っただけダシ?」


 俺はそんな臭い言い訳をしながら、ゴシゴシと涙をぬぐう。いやまじでなんで泣いてんんだ俺。さすがに恥ずいって。


「にぃにってば感動しすぎです。毎年柊さんの家と一緒に祝ってもらってるくせに」


 と、桜が赤裸々に暴露し、


「そうだよねえ。浩太君、演技派」

「だ、だから目にゴミが入ったんだっていってんだろっ」


 言えるわけがない。めちゃくちゃ嬉しすぎて今にも大号泣しそうですなんて! あんなことがあったから、俺はてっきり、怖がられるかと思ってたのに……。


「さて。演技派男優の浩太にはとっととローソクの火を消してもらおうかしら」


 と、すました顔のかおりに俺は、


「……なんでお前はそんな平然とした顔でサンタコスしてんだよ」


 赤い帽子に赤いジャケット、付けひげ。それはクリスマスに着る服です。

 吐息で付けひげをひらひらさせながらかおりが、


「だってそっちのほうがお祝い感でるじゃない」

「かおりったら、普通に間違えて持ってきただけよ! 鼻歌を歌いながら着替えてておもしr……」

「それ以上言ったら窒息させるわ」

「きゅ、きゅるしいわっ!」


 顔を真っ赤にさせて和葉を締めにかかるかおりに、俺は思わず顔がひきつる。


「はい、コータ」


 暴れる二人を無視して、天音がケーキを持ってきた。俺は受け取ると、ケーキってこんな重かったんだなと、ちょっと驚く。


「さあ浩太君。思いっきり吹いて。そのまま煙とともに私の顔に息を吹きかけて?」

「ごほっ、ごほっ……! 急に何言ってんだ木乃葉さん!?」


 わけのわからないことを言いながら、恍惚とした表情で躍り出てくる木乃葉に、俺はせき込む。木乃葉さんのキャラが崩壊している件。


「ああ、火が1本消えちゃったじゃないですかっ。にぃに、吹くなら愛しの妹にっ」

「妹だからって許さないよ。浩太君のバースデー吐息を浴びるのは幼馴染の役目っ」

「あ、暴れるな! 取っ組み合うなっ! 俺のバースデーローソクがまた1本消えたァァッッ!」

「ああもうまどろっこしいわね! さっさと消しなさいよ!」


 和葉がふう――っと、ものすごい肺活量で火を蹴散らし、無残にローソクがしゅん、と消えた。


「「「アアアアアアアアアア!!!」」」


 俺たちがわちゃわちゃしていると、


「あのー、もういいカナ。あまりにも青すぎて、おじさん、気まずさマックスなんだが!?」

「ってツヨツヨ先生!? いたんですか!?」

「おう、いたよ。邪魔にならないように空気に徹していた配慮ある大作家さまに敬意を……」

「ツヨツヨっ! いい仕事よっ!」


 和葉がグッジョブと親指を立てると、ツヨツヨは萎縮して、


「い、いえ。光栄です。ひゃい……」

「とはいえ、こんな豪勢な用意をしてくれたのはツヨツヨ先生のおかげね。ありがとうございます」


 と、サンタコスをやめたかおりがお辞儀。

 てかマジかよツヨツヨ先生、最高。ちゅき♡


「おい浩太。きもいからそんな熱いまなざしでオレを見るな」

「ツヨヨン、ちゅき」

 天音がそう言うと、

「あ、あまねちゃあん♡」

「あ、それ以上近づかないでください。天音が毒されます」

「しゅん」


 俺はシャ――っと威嚇しながら天音を守る。そうしていると突然背中をどつかれた。


「た、タックルすんな和葉っ」

「う、うっさい! ……こ、浩太? あ、あのね」


 と、顔を真っ赤にして珍しくもじもじしている和葉に、俺はいよいよ首を傾げる。何を恥ずかしがってるんだ? 


「な、なんだよ」


 少し身構えながらそう言うと、


「こ、浩太の好きなh……」


 和葉が口を開いたとき、彼女の後ろで巨大なハリセンを持ったかおりが見えた。なんでそんなもん持ってるんだ、かおりさん?


「バチコ――ん!!!」

「いちゃあああああい?! ……な、何すんのよ馬鹿ァ!」


 無表情のままおおきく振り、一切の容赦なく和葉の背中を打ち抜いた。和葉は飛び跳ねて涙目。


「……蚊がいたからシバいといたわ。刺されなくてよかったわね」

「普通に退治すればいいのよ! なんでよ! うぅ、ヒリヒリしゅりゅ……、ぐすん」

「……Oh、オーバーキル」

「ああ?」

「何でもないです」


 かおりの睨みに恐れて俺はそっぽを向いた。かおり怖い。恐るべし、蚊への憎悪。

 ……それ以外の感情も見えたような気がするけど見なかったことにしよ。


「それはそうと早く食べましょう。桜はおなかがすいてるのです」

「……そ、そうだな。かおり、もう一回火をつけてくれ、今度こそ俺の息吹で火を蹴散らす!」

「あなた、変なところで拘るわね……」


 やれやれと肩をすくめるかおり。

 気を取り直して、俺はニヤニヤを押えられずに息を大きく吸う。

 天音がカチッと部屋の電気を消し、


「こ、今度こそにぃにの息をっ!」

「さ、させないよっ!」


 ヘンタイ二人がスタンバイ。


「ぷぷぷ、さっきのお返しにかおりのコスプレ写真グループレイン送ろうかしら!」

「今すぐ消しなさい、さもないと屠るわよ!」


 再びじゃれ合う二人の横で、


「おほっ、オレの天使♡」


 ツヨヨンがカメラを構えてにやけ顔。その被写体俺じゃなくて天音だよね!?


「ま、これはこれでありだな」


 今日も今日とて、クローズドサークルは相変わらずだ。


「ふぅ――っ!」


 俺は全力でローソクの火を消して、人生で初めての誕パなるものを経験しちゃったのだった。

次回で完結です。期待度マックスレベル100なので刮目してください。評価などももし良ければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ