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スクエアメガネバチくそ変態うんこ野郎

「何やってんだあいつら」


 部室に続く廊下を歩いていると、扉の前で右往左往しているかおりと和葉の姿が見えた。

 扉の隙間から中を覗いたり、行ったり来たりしていて落ち着きがない。完全に不審者のそれだ。


「何やってんだお前ら」

「「きゃっ」」


 俺が背後からそう言うと、二人は肩を跳ね上がらせる。


「お、驚かせないでよっ!」

「ぐふえ」


 和葉の飛び膝蹴りが腹に炸裂して悶絶。ひどい。


「ご、ごめん」

「コータはともかく。二人は何してるの」


 と天音。ともかくじゃないから、天音さん?


「説明するより見た方が早いわ。はい」


 かおりが扉の前から退き、天音に中を覗くように促す。天音は頷いて片眼を閉じた。


「……だれ」

「俺にも見せてくれ」


 と、俺も天音の頭の上から同じように片眼を閉じて覗いた。するとそこには。

 男がいた。


『ふん、これはこうで、こうして。我ながら良いシチュエーションだ。ここでパンツを脱がせて……。ブツブツブツブツブツブツブツブツ』


 な、なんだあいつ、と無言でかおりに視線を送るも、知らないと言いたげに肩をすくめた。

 変なおっさんがいる。アニメだったらたぶん、キラリーんと効果音が鳴るタイプのスクエアメガネを着用した、おっさんだ。


 スーツを着用し、なぜかその上から白衣を着ている。髪はぼさぼさで、机の上にパソコンを広げてニヤニヤしたり怒ったり泣いたり、なんかとにかく変だ。

 一瞬理科の先生かと思ったが違う。あんな変な奴うちの学園の先生の中にいない。

 つまるところ、不審者だ。


「和葉、お前ちゃんと昨日カギ閉めたか?」


 俺が訊ねると、和葉は心外と言わんばかりに胸をそらせて、


「当り前じゃない! ちゃんと職員室にも返したわよ」

「ならなぜだ……」


 考えを巡らせる俺の横で天音が、


「不審者じゃ……、ない?」

「「「ないないない」」」


 三人が同時に首を横に振った。あれはどう見ても不審者でしょ。

 俺がもう一回覗くと、「フハハハハハ、できたゾォ。最高傑作ダァ!」と白衣を翻して高らかに笑っている。うん。間違いないね。


「でも、不審者だったら、職員室で鍵を受け取れない。校門で取り押さえられてるはず」


 天音の名推理にかおりが「頭いいわね」と感嘆。


「じゃああいつは招かれるべくして招かれた、刺客……?」と和葉。

「なんでちょっと厨二みたいな言い方」

「コータ、あんた中に入りなさいよ」


 と、背中を押したくって和葉。俺はそれに抵抗しながら、


「や、やだよ、絡まれたらだりぃだろ! 和葉の方がコミュ力あんだから!」


 と和葉を押す。


「ば、ばか、変なとこ触んないでよっ、きゃ」


 レスリングの牽制みたいに手で押し合っていると、手が滑って和葉の慎ましやかなブツに吸い込まれる。

 ぺたん。


「あ、わりい」

「~~っ! どこ触ってんのよ、ばか!」


 なんか板だなあ、と一瞬残念に思った刹那、涙目のツンデレから放たれる強烈なビンタが、俺の視界に映った。

 ぺちーん! 


「和葉の貧乳までも標的にするなんて、ほんと浩太は見境がないわね……」


 と、ゲスを見る目でかおり……。


「今のは半分事故」

「事故を起こす時点で変態。反省してこのラブコメ主人公」

「天音まで……」


 私のならいくらでも差し出すのに、なんて言って甘やかしてくれるかと思ったら天音までしかめっ面。

 がくんと肩を落としていると、


「あんたたちなーにやっての。さぼりは懲罰よ」


 一際大きなロリエの声が聞こえてきて、俺たち三人は慌てて、


「「「しーっ」」」


 と人差し指を手に。しかしロリエには伝わらなかったらしく、訝しげな表情。

 その瞬間。


「おおおお! ロリエ、実に久しいな!」 


 ガラガラアア! と響き渡る扉の音とともに、不審者が顔を綻ばせながら出てきた。

 俺は動揺しながらロリエと男を交互に見る。三人はいつの間に移動したのか、物陰からこちらの様子を窺っている。


「はあ、あなたほんとに来たのネ。来るなら連絡しなさいよ」


 とロリエ。

(まさかの知り合いかよ)

 俺はそう思いながら、変人は変人を引き寄せるんだなと、謎に感心。


「フハハハハハ。サプラーイズ!(てか連絡先知らない……)」


 と、男は笑ったり急に落ち込んだりしながら、ふと我に返ったように辺りを見回し、


「ふむ……。君たちはオレの資料かな?」

「な、なんすか急に!」


 ぐいっと顔を近づけられて俺はのけぞる。あまりの勢いにスクエアメガネの角で失神させられるところだった。


「さあ、入れ! そこのハニーたちもさあ! 待ちわびたゾォ! カモーーーンヌ!」 


 厄介な奴に遭遇した。俺たちは有無も言わさぬ刺客の勢いに押され流され屈服させられ、今日のサークルが開始した。

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