四精霊22☆
それでは今回も再発防止のための原因分析をしてみましょう。
今回の死因:充電部への接触による感電。
では、今回もその原因を人的、物的、管理的要因の三つの視点から見ていきましょう。
まずは人的要因。これにはまず通電している部分の電源を落とさずに作業を開始したことが挙げられます。
当然ながら、通電していなければ被覆されていない電線に触れても感電することはありません。今回はリンさんから電源を落とすべきか確認されているにもかかわらず、理人さんはこれを拒否しています。
これまでも何度も触れてきたように「すぐ終わるから」という認識での省略行動はあらゆる危険の源といっていいでしょう。
そして次に、感電の危険が意識から抜けていた点も挙げられます。
もし「人体に電気が流れる」と言われれば、ほとんど全ての人はその危険性を理解し、それから遠ざかるようになるでしょう。これは当然ながら感電の危険性を漠然とでも理解していて、そこに注意が向いているからです。
対して今回のケース、理人さんは初めから感電の危険性が頭から抜けていました。
恐らく彼も通電している裸電線を見せられていたら、それが危険であるという事は理解できたでしょう。
しかし今回のように、触れるはずがないと思っていたら?或いは扉に挟まっている金属棒を見つけた時点で「ただそれを取り除けばいい」というところで考えが止まってしまったら?危険に対する感受性が働かなくなれば、こうした危険を未然に察知するという意識も働きません。
そして次に、本来足場にするのに適さない木箱に登って作業したことも、また災害を引き起こす原因と言えます。
脚立や梯子、足場が近くに無いため、適当なもので代用する――だれしもがついやりがちな行為ですが、当然ながらそうした代物は踏み台にするという用途を想定していません。
上に乗って作業するのには不適当である場合も往々にしてあります。また今回のように設置した木箱の座りが悪く、容易にバランスを崩す状況にあったのも問題です。
適切な場所で適切な道具を適切な方法で使用する――これが徹底できていなければ、いかに個人が危険に気を付けようとも危険の芽を摘むことは出来ません。
では次に物的要因ですが、これにはまず適切な道具が用意されていなかった点が挙げられます。
人的要因でも触れましたが、適切な場所で適切な道具を適切な方法で使用するという事が、安全な作業には必須と言えます。
今回のケースでいえば扉の不具合発生時にはそれに対応できるように予め必要な道具を纏めておき、その保管場所を明示する必要がありました。
また次に、感電防止用の保護具や対策がなされていなかったことも問題と言えます。
仮に手が電線に触れてしまった場合であっても、電線に被覆がなされている・感電防止用の保護具を正しく着用しているという状態であれば感電は避けられたでしょう。
こうした保護具も使用する道具と同様すぐに使えるように設置場所を決めて、必要に応じて使用できるようにしておくべきです。
そして次に管理的要因。これについては、作業のルールや手順を明示していなかったという点がまず挙げられます。
通電している機器に手を触れる場合、まずは間違いなく電源を落とし、そのことを周知すること。通電していないことを確認してから作業すること。保護具や道具は使用前に点検を行い、適切なものを使用すること。こうした注意喚起や事前の教育が行き届いていなければ、安全対策は万全とは言えません。
また、これまで触れてきたように、保護具や道具の保管場所についても分かりやすく明示しておく必要があります。人間はどれほど教育しても必ず省略行動を行います。そうした省略行動を起こさないためにも、常に整理整頓された環境で必要な道具が面倒なくすぐに取り出せるようにしておくことは、単に作業の効率化や見栄えだけでなく、安全面でも効果的です。いわゆる4S活動=整理・整頓・清掃・清潔や5S活動=4Sに躾(整った状態を維持する仕組みづくりや教育)を追加したものは、まさしくこうした場合において「道具を取りに行くのが面倒」「どこにしまってあるか分からない」「どれを使っていいのか分からない」といった理由での道具や保護具の用意を敬遠することを防ぐ意味合いがあります。
と、ここまで見てきて分かったように、今回のケースでは「感電する危険」と「転落する危険」とが同時に発生しています。
感電と転倒。本来ならばそれぞれつながることはない二つの災害が、状況によっては同時に発生してしまうことで、事態がより悪化するという現象は決して珍しいものではありません。
目の前の分かりやすい危険だけに意識を向けるだけでなく、こうした複合的な災害をも想定するために、常に危険感受性を高く持ち実際の現場の状況を見て危険を判断し、それを作業員全員が共有できるよう、ツールボックスミーティングと危険予知活動を実施することが重要です。自分一人では気づかない危険を別の視点によって発見し、未然に危険を回避すること。これを常に意識して作業に取り組む必要があります。
それでは、こうした点を考慮して、今回もより安全な方法、安全な環境で彼らにやり直させましょう。それでは、ご安全に!
(つづく)
今日はここまで
続きは明日に




