四精霊20
その扉をくぐった先=人一人がなんとか通れるようなメンテナンス通路。
ここまでのトンネル内と同じようなオレンジ色の照明が一定間隔で続いているそこは、その光が示す通りの一本道で、先程のシャッターを越えたその更に先まで続いているという事は、扉の前から見える範囲だけでも分かった。
「この先に祠が……?」
火と風の精霊のそれが置かれていた領域とは似ても似つかない、そしてああした祠が置かれているとは思えない光景に思わず漏れた声は、コンクリートと思われるつるつるした表面の壁に囲まれた通路内に響いた。
「多分……。この先から僅かだけど気配を感じる」
そしてその言葉に、すぐ後ろにいたリンが答える。
精霊の気配を感じるなどとは初耳だ。少なくとも、本当にそんな能力があるのなら火の精霊の前のあの灼熱の迷路で発揮してほしかったところだ。
「分かるのか?」
「多分、三精霊の加護を得たからだろうね。何となくだけど、この先にあるような気配がする」
彼女の言葉を信じて、俺はその道を進んでいくことにした。
どの道、他に進むべき道などないのだ。ここが行き止まりならその時にそれ以外の道を考えればいい。
しばらく進んだ先で、道は唐突に開けた――ちょっとしたドームとでも言うべき場所に出て。
そしてそのドームの奥、更に先に続いていると思われる扉が一つ。
他に何もない――いや。
「上だ!」
その扉の遥か上、ダクトのようなところから飛び出してきたのは、二匹のヘルハウンド。
巨大な犬の姿をしたその怪物は、硫黄の臭いを辺りに充満させながら、その牙を侵入者=俺たちの方へと剥いた。
「光よ、我が敵を射抜け!ファイアボルト!」
一瞬の膠着。
それを即座に切り崩すリンの詠唱と、飛びこんだ火球に、連中がほとんど真横に飛んだ。
と、それを認識した瞬間、反撃の突進。連中と俺たちの間にあった地面が一瞬で消滅したかのようなスピードで、こちらの目の前に飛び出してくる。
「くっ!!」
俺の首をかみ砕かんとするその鋭い牙を、なんとか剣で受け止め、腰を落として押し返す。
「……よし」
前回遭遇した際と明らかに反応速度が違う。
以前は間一髪で、ほとんど奇跡的に身を守っただけだったが、今は攻撃の瞬間を目で追うことが出来る。これが三精霊の加護により強化された聖剣の力だろうか。
「ッ!!」
即座に再度の攻撃を仕掛けてくるヘルハウンド。
その突撃にタイミングを合わせるように右前方に踏み込み、同時に横薙ぎ。
僅かな手応えが柄越しに返ってきて、それによって自分が何をしたのかを悟る。
「ッ!」
即座に振り返る。大きく開いた口に刃が飛び込んできたヘルハウンドが、両断されて地面に激突している。
「光よ、我が敵を射抜け!ファイアボルト!」
そして再度の詠唱。リンに飛びかかったヘルハウンドが、その上下の牙が完全に閉じる直前に火球に首を貫かれて崩れ落ちた。
「……よし」
「そっちも終わったようだね」
お互いに戦果を、そして傷を負っていないことを確かめると、改めて扉の前へ。ただそれだけで音もなく開いたことで、そこが自動ドアだと知った。
「「ッ!!?」」
そしてその向こうには、宇宙船の内部。
いや、実際の宇宙船がどういうものかは知らないが、そうとしか表現のしようのないSF空間が広がっていた。
どういう素材か分からない滑らかな表面を持つ壁、どうやって光を放っているのか分からない照明が一定間隔で並ぶ天井、そしてそうした壁面や天井を走っている、ネオンのように光が流れていくいくつかのパイプ。
その光の流れが、進むべき順路のように奥へ奥へと流れていて、俺たちを誘っているようにも思える。
「ここ……一体どうなっているの?」
「分からない。けど……他に進む道もない」
その結論に達したのは、事実として他に道がないという点より、その誘うような光によるものの方が大きかったかもしれない。
俺たちが足を踏み入れると、音もなく背後の扉が閉まる。
閉じ込められたか――思わずそう思って駆け寄ると、閉まった時と同様に音もなく開く。
どうやら、ただ単に自動ドアの機能だけのようだ。
「……とりあえず、閉じ込められるってことはなさそうだな」
焦って引き返したことに少しだけ覚えた恥ずかしさを誤魔化すためにそう呟いて、俺は再度奥へと踵を返した。
(つづく)
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