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四精霊3☆

 それでは今回も、再発防止のための原因分析をやっていきましょう。


 今回の死因:熱中症による立ちくらみによる転落。

 では、今回もその原因を人的、物的、管理的要因の三つの視点から見ていきましょう。


 まずは人的要因。これには体調がすぐれない状態で作業を強行したことが挙げられます。

 今回のケースでは、理人さんは高温多湿の環境にあることや、集中力の低下や頭痛といった熱中症を疑うべき症状が出ていることを自覚していたのにも関わらず、引き返して涼むべきだというリンさんの提案を却下し、無理に前進し続けました。

 勿論時間がない、急がなければならないという状況であったことに間違いはありません。そしてそうした状況で「まだ進められる、続けられる」という認識があるにも関わらず引き返すという判断は、どうしても心理的な抵抗があるというのもおかしなことではありません。


 ですが、既に肉体的に症状が出ている場合、そこでの無理は今回の様に取り返しのつかない事態に発展する可能性があることを常に念頭に置く必要があります。

 高温多湿という環境は、想像以上に体に負担をかけますし、今回転落が発生した石の橋のような危険のある場所や危険を伴う作業、正確な判断が求められる状況において、心身の不調は非常なリスクとなります。

「まだいける」は「その判断がもう危ない」という事、そして「不調をおして作業に当たるのは労災を起こしに行くようなもの」という事は忘れないようにしましょう。

 責任感を持つ、時間を意識するというのは褒められるべき姿勢ですが、その責任感は「常に万全の状態で臨む」という姿勢にも通じなければなりません。


 そして次に、自身が熱中症を発症しているかもしれないと思い至りながらも、その結論を下すのを棚上げにしたことも、また事態を悪化させる原因となりました。

「病は気から」という言葉があります。勿論、それが正しい局面も非常に多いのですが、しかしそれは「不調を認めず無理に無理を重ねる」ことへの免罪符ではありません。責任を持って仕事に取り組むことと同じぐらい、自分の心身の状況を冷静に、客観的に判断して無理をしないことは、安全な作業には不可欠だという事を忘れてはいけません。


 今回理人さん自身が熱中症であると認めることを恐れたように、実際に熱中症は死に至るケースもある危険なものです。軽度の症状であったり、容態が回復したように見えても数時間後に体調の悪化したケースもあり、決して油断はできません。熱中症を恐れるのならば、もっと早い段階、熱中症を発症するかもしれないという危険予測自体を、洞窟内を進むより前に行うべきでした。こうした「十分な危険予知活動を行わずに作業に当たる」という行為もまた、人的要因として挙げることが出来るでしょう。

 これまでも見てきたように、焦っている状況では正常な判断が下せなくなるというのは決して珍しい事ではありません。故に、急いでいる状況でこそ一時手を止めて危険予知と作業手順の確認を徹底することが重要です。


 次に物的要因ですが、これには高温多湿の環境下での作業を想定した保護具や熱中症対策用品を用意していなかったことが挙げられます。

 高温多湿の環境は想像以上に体力を損耗させます。故に気温と湿度の把握、作業時間の設定と把握、体の冷却、水分・塩分の効率的な補給といった対策は、安全性だけでなく効率という点でも欠かすことは出来ません。

 翻って、今回の理人さんたちは高温多湿の過酷な環境での行動をしていながら、そうした装備の選定や使用という対策を行っていませんでした。必要な装備や用品、設備が増えることによる手間は確かにありますが、それでもそうした諸々は過酷な環境下で活動するためのコストであるという認識を持つこと、現場にあっては冷静に状況や自身のコンディションに基づいて適切に使用することが不可欠と言えます。


 また、現場での体の冷却以外にもプレクーリングという考え方もあります。これは作業に入る前に前もって体の内外からの冷却を行うというもので、氷嚢や冷水などを用いて外部からの冷却、冷たい飲料を摂取することで内部からの冷却を行い、あらかじめ体温を下げておくことで熱中症を予防するというものです。

 こうした様々な冷却用のグッズを適切に使用して、熱中症予防を万全にすることが必要です。


 次に管理的要因ですが、これには活動時間や活動内容を管理するルールが決まっていなかったことが挙げられます。

 作業環境を測定し、それに基づいて作業時間や必要な保護具を決定する――こうしたルールが明確に存在している状況ならば、実際に現場に向かう理人さんやリンさんも適切な判断を下すことが出来たかもしれませんし、仮に現場の判断が危険をはらむものであった場合、別の場所にいる監督者が存在していれば彼らの行動を制止することも出来たでしょう。


 現場とは、当然ながら一番状況に即した判断を下しやすい場所ではありますが、同時に判断に主観の混じりやすい場所でもあります。普段なら「これぐらいなら」「あと少しなら」という判断が危険であると分かっている人でも、現場で実際に自らが直面した事態に対してはそうした危険な判断を下してしまうことがあります。

 特に熱中症のようなどうしても主観を排除するのが困難なものの対策において、物理的・心理的に距離を置いた監督者の存在は、こうした「これぐらいなら」「あと少しなら」を防止するのに非常に重要と言えます。


 それでは、こうした点を考慮して、今回もより安全な方法、安全な環境で彼らにやり直させましょう。それでは、ご安全に!


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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