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山登り4☆

 またですか……。

 成程、理人さんだけかと思っていましたが、あの子も要注意ですね。

 それでは、今回も再発防止のための原因分析をしていきましょう。


 今回の死因:橋の動作に巻き込まれての転落死。


 では、その原因を今回も人的、物的、管理的要因の三つの視点から見ていきましょう。

 まずは人的要因。その一つ目は操作台にいた共同作業者に対して周知せずに橋の下に入りこんでしまったことが挙げられます。

 一度作業を終了し、かつそれを共同作業者――この場合はリンさんに伝えたのにも関わらず、もう一度問題を発見した理人さんはそのまま、つまり共同作業者に伝えずに作業場所に入りこんでしまった。

 せっかく安全確認をしても、これでは意味がありません。

「簡単な作業だから」「すぐ終わるから」という考えが意思疎通を省略する言い訳にならないことは今回の事例でも明らかでしょう。

 たとえ些細な事であっても、作業を再開する、機械の作動部に立ち入る場合には必ず共同作業者と連絡を取り合い、安全を確認する必要があります。


 ――と、ここまでは作業者である理人さんのお話。次は共同作業者のリンさんについてです。

 即ち、共同作業者の姿が見えず呼びかけに返事がないにも関わらず機器を動かしてしまった点。

 勿論、理人さんの行動は危険なものでしたが、その危険行動もリンさんが「安全が確認できるまで次の動作を起こさない」という判断が出来ていれば最悪の結末は回避できたと言えます。


 人間の心情として、あまり細かいことを一々相手に尋ねるのは気が引けるというものはあると思いますし、そうした心配りが必要な局面は確かに存在しますが、今回のような状況、即ち重大災害に繋がるおそれのある作業に際しては不明瞭な点、曖昧な点は必ず明確にするまで確認してください。こうした状況において、不明瞭な点を明らかにすることは決して不誠実でも無礼でもありません。

 そしてその確認を受けた側も「姿が見えないけど大丈夫だろう」「連絡がないけど大丈夫だろう」という判断による独断よりは受け答えの手間の方が遥かに簡単で安全であるという点を忘れてはいけないでしょう。


 次に、転落防止用の保護具が存在するのにも関わらず、それを使用していなかったという点です。

 これも一つ目の点と同様「簡単な作業だから」「すぐ終わるから」という考え。そして「もう一度カラビナを繋ぐのは手間」という面倒がる気持ちに起因します。

 こうした「正規の手順を理解しているが効率化、時間の短縮のためにそれを省略する」という省略行為自体は人間の性であり、完全に廃絶することは不可能です。

 ですが同時に、そうした省略行動が「どうせ問題は起きない」というリスクの過小評価と繋がっているということは常に念頭に置かなければなりません。

 これまでの事例もそうであったように「どうせ問題は起きない」という油断はこうした災害の原因として珍しいものではないということを忘れないようにしましょう。


 そして、これと関係しているのが次の物的要因。跳ね橋の上昇・下降が、橋の下に人がいる状態でも動作できる構造だった点です。

 繰り返しになりますが「正規の手順を理解しているが効率化、時間の短縮のためにそれを省略する」という省略行為自体は人間の性であり、完全に廃絶することは不可能です。

 勿論、だからといってそれを認める訳ではないというのは今言った通りですが、例えどれほど厳しく教育され、重いペナルティーを課したとしても、それでもなお根絶できないのが性というもの。


 故に、人間を教育するだけでなく「そもそも作業者がミスを犯しても危険な動作をしないように設計する」という観点が必要になります。

 この考え方をフールプルーフと呼び、有名なところでは「エレベーターは移動中にドアが開かないようになっている」であるとか「電子レンジは蓋が完全に閉まらないと起動しない」というものなどが挙げられます。

 これはいずれも「人間はミスをする」という前提に基づいた設計と言えます。


 これを今回の事例に当てはめると「すぐに終わる作業だからと共同作業者に周知せず、保護具も着用せずに作動部に立ち入る」「安全確認が取れないが大丈夫だろうという思い込みで機器を操作する」という作業者の判断ミスを前提に、そうした操作を行っても起動しないようにする必要がありました。


 続いて管理的要因ですが、これは作業を行う場合に周知徹底するよう作業員への教育が行き届いていなかったという点が挙げられます。

 勿論理人さんもリンさんもこの跳ね橋の専属の作業員という訳ではありません。よって、前もって教育というのは難しいのですが、それでも先に述べたように「大丈夫だろう」という思い込みをなくすように意識させることが出来れば、こうした事例は減っていくと考えられます。


「大丈夫だろう」ではなく「これまでは大丈夫だったが今回はそうではないかもしれない」という認識を常に持つこと。自動車の運転における「かもしれない運転」などは良く知られていますが、作業に当たる時はこの意識を常に持ち続けることが自身の身を守ることにもつながるということを忘れないようにしましょう。


 それでは、こうした点を考慮して、今回もより安全な方法、安全な環境で彼らにやり直させましょう。それでは、ご安全に!


(つづく)

投稿遅くなりまして申し訳ございません

今日はここまで

続きは明日に

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