03. 弟のユリウス第二王子登場!
※ 2025/10/28 修正済み
◇ ◇ ◇ ◇
怒鳴り込んできたのは、アル殿下の双子の弟ユリウス第二王子だった。
双子とはいっても二卵性双生児なので似ても似つかない。
碧眼金髪は同じでも容姿は対照的だった。
背の低いアル王子に対して、ユリウス王子は背が高く肩幅も広く見事な体躯。
兄弟が横に並んだら大人と子供くらい背丈が違う。
ただ、肝心の顔に至ってはアル殿下に大きく軍配が上がる。
双子王子の亡き母は、絶世の美姫と言われており、母の面影はアル王子にそっくり引き継がれていた。
対してユリウス王子は国王の若い頃にそっくりだった。
高すぎる鼻、鷲のような眼光。大きな口。
すべての顔のパーツが大きく厳つい、一見ドキッとするくらい怖い顔をしていた。
ハッキリ云えば学園の令嬢たちが『キャーキャー!』発狂するときめき顔ではない。
“不細工王子のユリウス”
アル王子の取り巻き令嬢たちは、ユリウス王子を見る度に陰でそう噂をしていた。
とはいえ令嬢たちは、ユリウス王子のブルーアイズが陽光に輝く透明な美しさを知らない。太陽神アポロンの如く、立派な体躯の筋肉美に気付かない。
そもそも彼女たちはアル王子しか見えてないのだ。
◇ ◇
「ユリウス、お前何しに来た?」
「兄さん酷いよ!さっきから聞いてれば、なぜファデ嬢を王太子妃にしないんだ!彼女の身にもなってみろよ」
「バカ!、声が大きい、誰かに聞かれたらどうする。まずはドアを閉めろ!」
「こんな重大な話、生徒会室でしていい話ではない。兄さんこそ不用心過ぎる、僕が廊下を通るだけで筒抜けだった。馬鹿は兄さんじゃないか!」
「煩い!いいから早くドアを閉めろ!」
ようやくユリウス王子はドアを閉めた。
「ファデ嬢、顔が真っ青だけど……大丈夫かい?」
「あ、はい……」
ユリウス王子はまっさきに、ファデの不安げな表情を心配して言った。
「ユリウス、お前には関係ないよ。これは僕とファデの問題なんだ!」
「そんな事はない! これは王族の沽券に関わってくる大事だ。兄さん、ファデ嬢はこの国の筆頭公爵令嬢なんだぞ! なぜ元平民で新興貴族の成り上がりの娘なんか正妃にするんだよ!」
「お前、よくまあペラペラと。王子のくせに口が悪過ぎるぞ。……何よりハニーの父親、オペラ伯爵に大変失礼だろう」
「失礼も何も、本当の事じゃないか!」
ファデはユリウス王子が現れて、2人のやりとりを聞いている内に、すっかり涙が引っこんだ。
──まあ、ユリウス殿下は⋯⋯お顔は……あれだけれども⋯⋯言ってる事は漢だわ!
ユリウス王子は続けた。
「それに、いくらハニー嬢が孕んだからって横暴すぎる。第一兄さんはまだ成人前の学生だよ。まずはこの破廉恥な自分の行為を大反省すべきだろう!」
「破廉恥だ?」
「破廉恥じゃないか」
ユリウス王子は負けてない。
「これが破廉恥といわずしてなんと言う? れっきとした婚約者のファデ嬢がいるのに、兄さんは最低野郎だよ。悪質な裏切りじゃないか!」
ユリウス王子は更に続けた。
「僕も生徒会の役員だからよくわかる。兄さんが外で下位貴族の令嬢たちとイチャついている時に、ファデ嬢は放課後も生徒会の雑務をコツコツとこなしていたんだ。それも正妃教育もしながらね!」
「………」
アル王子は弟に正論を言われてぐうの音もでないのか、苦虫をつぶしたような顔だ。
──ああ、ユリウス殿下。あなた様はなんて私の事をそんなに庇ってくれるのかしら。
ファデは引っ込んだ涙がまた溢れ零れそうになった。
確かにこれまでもユリウス王子は、同じ生徒会役員で執務室で話した事はあれど、ファデはアル王子しか眼に入らなかった。
ファデにとって透明人間だった大男が突然、自分を庇ってくくれる、初めてユリウス王子を意識したのだ。
ファデにとっては新鮮な驚きだった。
◇
『良かったね~ファデ!』
『ほんとにねえ、この際、アル王子からユリウス王子に切り替えちゃえば?』
『だめよ、ファデは超がつく面食いだもん!』
またまた、ファデの心声たちがざわめき出す。
さすがのアル王子も真が悪そうにボソリと言った。
「僕が浅はかだったのは自覚してる。だから今こうして、ファデにお願いしてるんじゃないか……」
「ねえ、兄さんがハニー嬢を愛してるとは言え、彼女の父親は賭博経営の元平民。墜ちぶれ男爵を借金地獄にさせて、その地位を乗っ取ったって聞いたよ、なおかつ新興伯爵の娘と再婚した男だ。その曰くつきの娘を正妃なんて⋯⋯駄目だよ、そんないかがわしい男の娘を、王族の一員などさせられない。側妃にすら値しない」
──そう、そうですわ、ユリウス殿下、その通りです!
ファデは顔を上げて内心、頷きながらユリウスの横顔を頼もしげに見つめた。
「お前さあ、さっきから黙ってれば何様のつもりだ? 王太子の僕に向かって──フン、そんな毅然と偉そうに言うが、僕は知ってるんだぜ、お前は昔からファデが好きだったもんなあ。だから未だに山ほど来る見合い話を、悉く断ってるんだろう?」
「!?」
──へ、ユリウス殿下が……私を好き?
ファデは突然のアル王子の言葉にびっくりした。




