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イケメンクズ王子の呪縛からさよならします。お兄様、私は初恋から目が醒めましたでしょうか?  作者: 星野 満


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09. ファデとユリウス王子の愛のダンス 

※ 2025/10/30 一部修正済み


※ kei 様 誤字脱字報告わざわざありがとうございました。


◇ ◇ ◇ ◇



 王宮殿内の大広間。


 ファンファーレが鳴り響く。

 ユリウス第二王子の生誕祭の合図だ。



「レディ&ジェントルマン、お待たせ致しました~! ユリウス第二王子がご登場します。どうか両脇にお並びください。そしてユリウス第二王子と、そのパートナーに盛大なる拍手をお願い致します!」



 生誕祭の催しの司会は生徒会役員の令息だった。

 

 今回の生誕祭は学園内の行事の一つなので、生徒たちで企画運営も行っている。

 

 来月の聖教会で行うアル王子の荘厳なる戴冠式と比べると、学生の軽いノリが入った無礼講の雰囲気があった。

 

 この場に集った学園生たち、一年生から最上級生までほぼ全員出席している。


 

 中には既にお酒を飲んでいる不良系のやんちゃ令息もちらほらいた。


 

 皆のお目当ては、美味しいお酒と美しい令嬢と踊ることが目的だった。



 会場内の人々が二手に分かれて中央を開けた。

 美しく着飾った令嬢や、タキシード姿の令息たちの拍手喝采の中。


 入口の扉からユリウス王子にエスコートされたファデが登場し、その二人が連なって歩く姿に少しだけ会場がざわついた。



「あら、ユリウス殿下、礼服姿が素敵ね、偉丈夫だから見栄えがいいわ」


「馬子にも衣装じゃない。でも残念。婚約者のいないユリウス様は今日はお一人かと思ってたのに」


 ユリウスと腕を組んだ碧色のドレスが似合うスレンダーな美女が、そんな噂好きの令嬢たちの前を通る。



「あ、ちょっとあの方、メルローズ公爵家のファデ様じゃない?」


「ええ~!ファデ様ですって、嘘?」


「嘘じゃないわ。でもなぜ? 彼女はアル殿下の婚約者なのよ!」


 扇子を隠してヒソヒソと話す令嬢たち。


 

 人々がざわめく中、二人は一番奥の壇上に上がって、一礼して主賓席に座った。



 ◇ ◇



 祝賀祭は滞りなく進行して一通りの式典が終わった。


 最後は学生たちのお目当てのダンスパーティーだ。


 

 ファースト・ダンスは主役のユリウス王子と、今日のパートナーのファデが踊る。



「さあ、いきましょう、ファデ嬢」


「はい。ユリウス殿下」


 ユリウス王子は優しくファデの手を取って、中央のフロアに向かってエスコートをする。



 フロア内はまだ、誰もダンスをするものはいない。


 

 夕方の生誕祭の主賓はユリウス王子なので、ファーストダンスはユリウスたちだけで踊る。


 彼がパートナーと一曲踊った後に、会場内の令息や令嬢たちがその後に続いて踊る流れだ。



 二人を見つめる令嬢の中には、ユリウス王子の心を射止めるために、懸命に(めか)し込んだ令嬢たちもいた。彼女らの胸中はファデを見て悔しさで一杯だった。


 美の極地と言われる兄のアル王子とは違い、ユリウス王子は令嬢たちに陰で“不細工王子”と揶揄されるとはいえ、そこは腐っても(たい)である。


 家格の低い令嬢たちは「第二王子の妾でもいい!」

と今日の生誕祭に手ぐすね引いて待っている令嬢もいた。



 

 学生音楽団員による、軽やかなワルツの演奏が流れ始めた。


 ファデとユリウス王子はワルツのリズムに乗って軽快に踊り始める。


 偉丈夫のユリウスと、スラリと背の高いファデのワルツ。

 大柄カップルのダンスは異彩を放っていた。



「あら、とてもステキ、なんて軽やかに踊るのかしら!」


「ユリウス様もだけど、ファデ様もお上手だったのね、アル殿下の時は妙にぎこちなく見えたけど」


「ふふ、ここだけの話、アル殿下の背が低いから、ファデ様が踊りにくそうにみえたわ」


 令嬢たちから、二人のダンスは感嘆の溜息が洩れた。

 それほどこの日の、ユリウスとファデのダンスは見事であった。


 

 だが何よりも一番驚いたのは当人のファデだった。

 


 

 ──ええ~! なんで私がこんな軽やかに踊れるの?


 ユリウス殿下の巧みなリードのせいだろうが、とても体が軽い!


 まるで自分の背中に羽根がはえたシルフィードの気分だわ!

 アル王子の時とはまるで違う!

 ファデの目線はユリウスの胸の辺りだった。


 ──ああそうか。分かった。


 ユリウス殿下がお背が高いから、アル殿下と違ってとても踊りやすいんだわ。


 

 確かにアル殿下は背が低くて、いつも踊りにくかった。


 たまにリズムが合わなくて、私がうっかりアル殿下をリードしちゃうくらい! 

 二人のステップがずれると、アル殿下の足を何度も踏んだわ。


 その都度、アル殿下はふて腐れた。


『ファデ、お前はちっともダンスが上手くならないなあ』て。


 そうよ、だから私はダンスが下手だと思いこんで、公式行事の時だけに留めたんだわ。なおかつアル殿下以外の令息とは一切踊ることもせずに。


 それにしても──。


 

 ファデはユリウスの麗しい顔をじっと見つめた。


「ファデ嬢、どうしました?」


「あ、いえ⋯⋯」


 ファデはユリウスと眼があうと、慌てて眼を逸らしてしまう。


 余りにもユリウスが神々しくて、目が合うと眩し過ぎて仕方がないのだ!

 


 ──あああああ、お兄様あ! 


 私、とうとう見つけましたわ。心の眼で見た美青年を!

 

 ファデは心の中で嬉しい悲鳴をあげていた。


 またファデはユリウスと踊っていると、何やら屋外で踊っている気分にもなった。


 それほどユリウスのリードは風を切るように、ダイナミックで、かつエレガントにリードしていく。


 二曲目のワルツが始まると、数名のカップルたちがポジションについて、ファデたちの回りで踊り始めた。


 これらのカップルは事前に選ばれた者たちだ。皆、とても上手だった。

 

 ファデは踊っている他の令息たちの顔をちらちら見た。


 

 だがユリウス以外、心から綺麗だなと思える令息は一人もいなかった。


 もちろん見目麗しい令息はいるにはいたが、ファデの視線はいつしかユリウスただ一人に釘付けとなっていった。



 ──ああ、こんなにユリウス殿下が麗しく見えるなんて!



 不思議ね、きっと私が殿方を見つめる目線が変わったからだわ。


 お兄様の暗示の威力は凄い!


 だって、今──目の前にいるユリウス殿下は近くでよくよく見ると、以前とお顔立ちは変わらないのに……それでも、なぜか私にはとても美しく見えるんだもの!!



 ファデは感無量となった。


 

 それに私にはユリウス様の碧き瞳が、私への気配りや全ての振る舞いが何故か凄く私を()でてくれてるとわかるの!


 ユリウスはファデの心を呼応するかのように、大広間を縦横無尽に動き回って、パートナーのファデを自由に踊らせていく。



 わあ、素敵! まるで風を切るみたい!


 うん、楽しい! すっごく楽しい!


 ダンスって、舞踏会って、こんなに楽しいものだったなんて⋯⋯


 ユリウスがフロアの端からUターンした後に(ささや)いた。


『ファデ嬢、ダンスがとてもお上手ですね!』

 

『いいえ──ユリウス殿下! 貴方様のリードがとても上手だからですわ。私、今とってもダンスが楽しいです!』

 

『それは良かった⋯⋯僕も貴方と同じ気持ちです!』


『まあ、うふふ!』


 ユリウスと踊っている間、ファデは頬が薔薇色に染まり、口を開けて笑っていた!

 

 そんなファデの笑顔を愛おしく見つめるユリウス。





『ファデ新たな男に、顔面フェチ発動中!』


『ファデって、こんなに踊れたっけ?いつもは案山子みたいにギクシャクしてたのに……』


『ファデは元々上手だったのよ、あの(くず)王子が小男だから踊りづらかっただけよ!』


 ファデの心声たちも、楽しそうにファデとユリウスのダンスを見守っていた。




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― 新着の感想 ―
ファデちゃん、ユリウスと楽しく踊れてよかったですね〜♪ それにしても、ファデちゃんの心の声は容赦ないですね!笑
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