00. プロローグ・初恋の嘶き
ファデット(愛称ファデ)は筆頭公爵メルローズ家の令嬢。
現在、貴族高等学院二年生。
聡明なファデだったが、性格は気弱でお人好し。
彼女の最大の欠点はイケメンフェチ。
とにかく美形大好き、中身は度外視だった。そんなファデが幼い時に出会った金髪碧眼イケメン小公子。
第一王子アルフォンス(通称アル王子)に一目惚れ。
ファデの願いめでたくアル王子のフィアンセとなった。
だが突然アル王子から「愛する女を正妃にしたい、君は側妃になってくれないか」と云われる。
初恋の君の正妃になれると、信じ切っていたファデは大ショック。
「なぜ自分が側妃なのか」と訊ねたら、アル殿下はとんでもないことを言い放つ!
※短期連載完結済みです。(2日に分けて投稿します)
※ イケメンクソ王子ざまあ作品で、最後はハッピーエンドです。
※ 春のチャレンジ2025「学校」参加作品です。
◇ ◇ ◇ ◇
プロローグ・初恋の嘶き
九年前──。
王宮の庭園。
美しい初夏の花々が咲き乱れる庭園内、ひとり蹲って泣いている少女がいた。
メルローズ公爵令嬢ファデットこと愛称ファデ。
ファデは王室主催の小公子や小公女の懇談パーティーに、両親と参加していた。
銀髪ですみれ色の瞳のファデ。
他の小公女と比較しても美少女の部類だろう。
だが、ファデの性格は外見に反して、大人しく引っ込み思案だった。
王子や王女を含めた、お茶会では隣席の小公女が話かけても、恥ずかし屋のファデは上手く応えられない。
その後のダンスでも、パートナーとなった小公子の足を何度も踏んでしまった。
ファデはたまらず「ごめんなさい!」とその場から逃げ出してしまう。
その途中、ファデは噴水近くの庭園で石に躓いて転倒した。
すみれ色のミニドレスの中から見える、ファデの膝小僧は、擦りむいて血がでていた。
──もうお家へ帰りたい……
こんな華やかな場所で知らない人ばかり。
お父様、お母様どこにいらっしゃるの?
泣きべそをかくファデ。
『ファデ、メソメソしちゃ駄目よ』
『元気出せよ、ファデ!』
時々、こうしてファデには心の声が耳元で囁く時があった。
ファデにしか聴こえない心声。
たまにだがファデが物心付いてからずっとだった。
多分、気弱なファデの為に彼女を守護する精霊たちが、温かく見守っているのだろう。
その時であった──。
「君、どうしたの?」
背後から少年の声が聞こえた。
ファデが振り向くと、自分と同じくらいの小公子が涼やかに微笑んでいた。
「あ……」
見た事もないような美しい金髪碧眼の小公子。
若葉が生い茂った木漏れ日の中、キラキラと輝く金色の髪。
ああ、何て綺麗な男の子……。
ファデは小さいお胸がキュンキュン、突然ときめいてしまった。
「可哀そうに転んだのか。擦りむいて血が出てるね」
と小公子はファデの前に跪き、ファデの頬につたう涙の雫を白いハンカチでそっと拭ってくれた。
「もう泣かないで……」
小公子はそう言って、そのままハンカチで怪我したファデの膝小僧を縛ってくれた。
ファデは目の前の小公子が、余りにも麗しく優しかったので、体が硬直して一言も発せなかった。
「大丈夫だよ。家令に薬を塗ってもらいに行こう。さあ、僕につかまって!」
と小公子は片手をファデに差し出した。
おずおずと小公子の温かな手を取るファデ。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」
天使のように微笑む美形の小公子。
その時、ファデの脳裏には何かが降臨した──。
天上から神獣ペガサスの嘶きが、ファデにははっきりと聴こえたのだ。
生まれて初めてファデは恋をした。
そして、これが未来の婚約者アルフォンス第一王子こと、アル殿下とファデとの出会いであった。
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※これまで9作品投稿して初めてです!
心からお礼いたします。
※初めて読む方、このまま良ければ一読下さいませ。