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第91話 乗っ取り2


 商業ギルドはさすがに王都の商業ギルドだけあって大きくて立派だった。


 玄関ホールに入ったら正面に受付嬢が二人座っていた。


 その受付嬢の前まで歩いていき、ナキアちゃんが来意を告げた。


「わらわはカディフの聖女、ナキアじゃが、ここのギルド長に用があるので会わせてもらいたいのじゃ」


「ナキアさま? あっ! カディフのナキアさまですね。ギルド長はさきほどいらっしゃり現在は在室中と思いますので執務室までご案内します」


 本人確認なしで名まえだけでフリーパス? ナキアちゃんてこの国の人間なら誰でも知ってる超重要人物ってこと? 本人確認しても、ナキアちゃんが『命令』とかすれば簡単に本人確認の代わりになるし、偽物とか現れたらすぐにバレるし、そんなことしたらものすごく罪が重そうだもんね。


 受付嬢の一人に案内されたわたしたちは3階まで上りその奥にあった部屋の前まで案内された。


 部屋の前で受付嬢が「カディフのナキアさまがギルド長にお話があるということでお見えになっています」


『入っていただいて』


「どうぞ、お入りください」


 受付嬢が部屋の扉を開けてくれたので、ナキアちゃんから順に部屋の中に入った。


 部屋自体はオルソン商会の会長の部屋と似たような作りだったけど、出入り口の近くに机が置いてあり女の人がそこから立ち上がってわたしたちを迎えてくれた。


 その先の部屋の真ん中には応接セットがあり、奥の窓際に大きな机が置かれ椅子から立ち上がったおばさんがこちらに歩いてきた。


 あれ? このおばさんて、ソフィアとアレックスのおばあちゃんの、たしかマリア・ベネットさんだ。すごい奇遇だ。大きな商会の会長という話だったけど商業ギルドの会長もしてたのか。


「これは、聖女さま。王都商業ギルドにお越しいただきありがとうございます。

 みなさん、どうぞおかけください」


 わたしたちが並んでソファーに腰を下ろし、向かいにベネットさんが座った。秘書っぽい女性はソファーの脇で控えている。


「それで、どういったご用件でしょうか?」


 ベネットさんはわたしのことに気づいていないのかな?


「ギルド長はオルソン商会を知っておるじゃろ?」


「もちろんです。オルソン商会は当ギルドの有力な会員です。

 オルソン商会がいかがいたしました?」


「拉致誘拐、人身売買、人殺しなどかなりあくどいことをしておったので懲らしめたやったのじゃ」


「オルソン商会にはそういったうわさがあったことは存じておりますが、懲らしめたとは?」


「いろいろ問い詰めた後の帰り道、わらわたちを亡き者にしようと傭兵を送りつけてきのじゃ。傭兵どもは皆殺しにしたので実害はなかったのじゃが、それだけで済ますほどわらわたちは甘くはない。

 当然の報いとしてオルソン商会の会長を切り殺してもよかったのじゃが、それでは面白くないじゃろ? そこで、オルソン商会の全てをあの男から譲り受けたのじゃ。

 シズカちゃん、証文を」


 アイテムボックスから証文を取り出してベネットさんに渡した。


「えっ! シズカさん?」


「どうも」


 気付いてくれたようだ。


「そういえば、聖女さまは国に請われ魔族調査隊に加わったとかうわさになっていました。シズカさんも調査隊の一員でしょうからお仲間だったんですね」


「はい。今日はたまたま訓練が休みになったもので、3人で街を歩いていたら誘拐事件なんかに巻き込まれ、あれよあれよという間にこんなことになってしまいました」


「そうでしたか。

 それで、これが譲渡の証文。

 これはわたしの方で預からせていただきます。ナキアさまが証人になられるわけでしょうからこれは正式な譲渡契約書として扱われます。

 ナキアさま、オルソン商会についてはいかがなさいます?」


「面倒じゃから買い手があれば、そっくり売ってしまおうと思うておる」


「分かりました。

 いったん商業ギルドで買い取らせていただき、わたくしどもで時間をかけて処分していきましょう。

 それでよろしいでしょうか?」


「良しなに」


「当方の買い取り金額については、オルソン商会の資産などを精査してみないと正確な金額は不明ですが、いちおう名の売れた商会ですからのれん代だけでも金貨20万枚は下らないでしょう。特別な問題がなければ金貨200万枚から300万枚というところでしょうか。

 当方でも一度にお支払いできる金額ではありませんので、当ギルドに口座をお作りしその中に預ける形でよろしいでしょうか?」


「金は3等分して欲しいので、口座は3つ作ってくれるかの。わらわとシズカちゃんと、こっちに座っておるキアリーちゃんの3人分じゃ」


「かしこまりました。まずは3つの口座に金貨7万枚相当の信用をお付けしますので、その範囲内でいつでも引き出し可能です」


「かたじけないのじゃ。

 そういえば、面白いものをオルソン会長の部屋で見つけたのじゃ。

 シズカちゃん、あの紙の入った箱を」


 借金の証文ぽい紙の束の入った箱があったな。わたしたちには何の価値もない。とかあのおじさんが言ってた。


 アイテムボックスの中からその箱を取り出してベネットさんに渡した。


「借金の証文ですね。

 借り手の名まえは、……。どれもそこそこ名のある役人です。

 借金漬けにして役人を操っていたのでしょう。

 どうします?」


「ギルド長が良しなに使ってくれて構わんのじゃ」


「それでは商業ギルドのために使わせていただきます。

 オルソン商会が役人たちに貸した金は当ギルドが責任をもって回収し、ナキアさまたちの口座にお入れします」


「それはありがたいのじゃ。

 あと一つ頼みがあるのじゃが?」


「何でしょうか?」


「わらわたちは、オルソン商会の指図でさらわれておった女を10人ほど助けたのじゃが、全員冒険者ギルドに預けておる。

 わらわの(・・・・)口座の金を使って、その女たちが立ち直れるようにしてもらえぬじゃろうか?」


 聖女さまはホントに聖女さまだった。


「かしこまりました。そのように取り計らいます」


「済まぬのじゃ」


 そこで扉の外から『お茶をお持ちしました』と声がかかった。


「どうぞ」


 女性がワゴンを押して中に入ってきて応接セットのテーブルの上にお茶と茶菓子を配ってワゴンを押して出ていった。


 ベネットさんがお茶を一口飲んで、秘書の女性にオルソン商会の差し押さえの指示をした。


「差し押さえ用の人を、そうねー、最低でも20人ほど集めて、護衛も付けてオルソン商会の本店に向かわせて差し押さえて頂戴」


「かしこまりました」


 女性は一礼して部屋から出ていった。


「ナキアさま。あとは当ギルドにお任せください」


「任せたのじゃ」


「オルソン商会の資産の処分などが終わればお知らせしますが、どちらにお知らせすればよろしいですか?」


「今日はたまたま暇つぶしで人助けしただけじゃから、特に知らせずともよいのじゃ」


「でしたら、下の受付におっしゃっていただければ分かるようにしておきますので、お時間がある時いつでもお越しください」


「了解したのじゃ。

 わらわたちはそろそろ失礼するのじゃ」


「玄関までお送りします」


「それには及ばんので、後は頼んだのじゃ」


 ベネットさんが一礼する中わたしたちは部屋を出て階段を降り商業ギルドを後にした。



三人団のノリになってしまいました。

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