第70話 オーガイベント
61話で以下を消し忘れていました。2023年7月27日21時50分削除しました。
そこでシステム音が響いた。
『弓術3の熟練度が規定値に達し、弓術3は弓術4にレベルアップしました』
ヘッドショット3連発が利いたのかな?
とうとうオーガイベントの日がやってきた。特に用事などないわたしは朝食を食べた後、部屋に戻って鎧姿になり南門に向かった。街に被害を出さないよう南門の先まで行きオーガを迎え討ってやろうと思っている。
今日のわたしは最初から腰にムラサメ丸を佩いて完全武装だ。寄らば切るモードなのだ。しかし、ムラサメ丸は最後の手段で、基本的には円盤で『即死』を発動させてオーガを討ち取ろうと思っている。暇なときはアイテムボックスから右手の各指の間に円盤を出す練習をしているのでかなりスムーズに円盤を右手にセットできるようになっている。
大型モンスターを1匹退治するのに100個の円盤を消費する勘定だと1000個の円盤もちょっと心もとない。今日の実戦次第で再発注してもいいけど、明後日には王都行きのイベントが発生するはずなので間に合わないかなー? わたしの幸運度からいって、10枚も円盤を命中させれば即死が発動するんじゃないかと思うんだけど甘いかな?
オーガの襲撃は昼時のはずなので、サックリ片付けてそれから昼食をとるつもりだ。この見通しも少し甘いかもしれないけれど、オーガさえ片付けてしまえばあとはゴブリンとホブゴブリン、それにヘナヘナ魔法を使うゴブリン。わたしにとっては完全な雑魚。今回は矢も十分用意しているわけだから、オーガをたおした後わたしに近づいてくるゴブリンはムラサメ丸で叩き切って、逃げていくゴブリンは円盤、遠くまで逃げていくゴブリンには烏殺と市販矢だ。3段構えの戦法なのだ。モンスターたちに逃げ場はないのだ!
意気込んでみても相手が現れなければ手持無沙汰。南門から100メートルほど街道を南に下りその辺りの道の脇で体育座りをしてイベント発生を待つことにした。
街道を行き来する馬車の御者や通行人がわたしをじろじろ見るけど無視だ無視。
まだ時刻は10時前。イベントまで2時間はある。仕方ないのでわたしはその場で『胡蝶の舞』を舞って少しでも経験値を積むことにした。
じりじりして待つこと1時間半。南の方から荷馬車がガラガラと車輪の音を盛大に響かせてこっちの方に走ってくる。来たな。
いったんムラサメ丸を鞘に納めたわたしは、ゆっくり街道を南に向かって歩き始めた。荷馬車が何台もわたしの前を北に向かって通り過ぎていった。どの荷馬車の御者も街に逃げろと親切に言ってくれていた。荷馬車の御者台には御者の他に2、3人乗っかっていた。街道を歩いていた人を拾ってやったのだろう。
わたしは親切な忠告に軽く手を振ってありがとうと言ったもののそのまま街道を下っていった。
いた。オーガがゴブリンらしきモンスター多数を引き連れて街道をこちらに向かってくる。まだレーダーマップの範囲外なので赤い点は映ってはいない。
距離は500メートルか。100メートルまで近づいたら烏殺であいさつして、近寄ってきたら円盤攻撃だ。
烏殺と市販矢を取り出したわたしは烏殺に矢を軽くつがえてオーガが100メートルまで近づいてくるのを待った。
距離150。わたしはゆっくり弦を引きオーガに狙いを定めた。オーガの太い首の下。心臓辺りが照準の丸からはみ出している。オーガが矢の飛翔中に不意の動きをしない限り矢はオーガに命中する。
コロヨシ!!(注1)
オーガは100メートルを切った。レーダーマップ上多数の赤い点が楔型になって北上しているのが見て取れる。
第一射。
矢はいつもより山なりになって飛翔し、狙い通りオーガの胸に命中し突き刺さった。あろうことか、それだけでオーガは前のめりにたおれてしまい動かなくなってしまった。
『即死が発動しちゃったの? そんなバカなー』
釈然としないがオーガは動かないし、確かに矢が命中したと同時にレーダーマップに映っていた先頭の赤い点が消えた。
オーガの後をついてきたゴブリンたちも戸惑ったようでオーガの体を囲んで何かギーギー、ギャーギャー奇声を上げている。
連中に逃げられては困るので烏殺をアイテムボックスにしまったわたしはゴブリンたちの方に走っていった。
わたしがオーガをたおしたとは思っていないらしく、ゴブリンたちもわたしが走り寄ってくることに気づいてわたしに向かってきた。たった一人の人間なんかいくら強かろうが結局は餌食だと思ったのだろう。
ゴブリンたちの先頭に立ってわたしの方に駆け寄ってくるのは体の大きいホブゴブリンだ。
ちょっと距離はあったけど、円盤を1枚右手の人差し指と中指の間に出したわたしは走りながら先頭のホブゴブリンに向けて円盤を投げつけた。狙ったのは的としては一番大きなホブゴブリンの胸だ。
わたしの投げた円盤はややカーブしながらホブゴブリンの胸元に命中した。それだけでホブゴブリンは前のめりになって街道の上に転がってしまった。赤い点も一つ消えた。即死が発動したというより単純に円盤の威力でたおしたようだ。
ゴブリンたちはたおれたホブゴブリンを放ってこっちに向かって駆けてくる。
わたしはどんどん円盤を投げてゴブリンたちをたおしていく。
ゴブリンたちがすぐそこまで迫って来た時には最初のホブゴブリンを含めて20匹ほどのゴブリンをたおしていた。
ゴブリンたちではわたしの投げる円盤を視認できないのかもしれないとふと思ったけれど、これ以上近づかれると円盤ではマズいのでわたしは腰のムラサメ丸を抜き放ちゴブリンたちに向かって突撃した。
そこから先は大乱闘というより一方的な虐殺となってしまった。十分引き付けてからの攻撃だったので南方向に逃げ惑うゴブリンたちを追いかけながら皆殺しにしてやった。
ゴブリンたちを皆殺しにしたところで、システム音がした。
『経験値が規定値に達しました。レベル28になりました。SSポイントを1獲得しました。力が+1されました。スピードが+1されました。巧みさが+1されました』
『経験値が規定値に達しました。レベル29になりました。SSポイントを1獲得しました。力が+1されました。巧みさが+1されました。体力が+1されました』
ちょっと頑張ったかな。オーガを一撃でたおしたのはある種の誤算だったけれど、おおむね思った通りの展開になった。余は満足じゃ。
レベル29
SS=20
力:30
知力:30
精神力:29
スピード:42
巧みさ:37
体力:34
HP=340
MP=600
スタミナ=340
<パッシブスキル>
ナビゲーター
取得経験値2倍
レベルアップ必要経験値2分の1
マッピング2(71パーセント)
識別2(59パーセント)
言語理解2(85パーセント)
気配察知1(85パーセント)
スニーク1(44パーセント)
弓術3(60パーセント)
剣術7(18パーセント)
威風(9パーセント)
即死
<アクティブスキル>
生活魔法1(25パーセント)
剣技『真空切り』
アドレナリン・ラッシュ
威圧
注1:コロヨシ!!
三崎亜記さんの競技掃除小説。面白かったです。