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第65話 面接


 ゴブリン討伐を達成した翌日。


 わたしは普段着ではなく鎧姿で約束の午前10時少し前に冒険者ギルドにやってきた。


 ギルドのホールに入るとまだだいぶ人がいた。だけどわたしにちょっかいを出すようなもの好きはいないようだ。


 受付には2人ほど受付嬢が並んで冒険者たちの対応をしていた。窓口に並んでいたら約束の時間に間に合いそうもない。仕方ないので窓口のカウンター前まで行ってカウンターの先の事務室?に向かって来意を告げようとしたら、昨日の受付嬢がわたしを見つけて会釈してくれた。彼女は応対している冒険者に待ってもらいわたしの対応をしてくれた。その冒険者はわたしの方を見たけどわたしがその冒険者を見返したら目を逸らせた。


「シズカさん、こちらにどうぞ」


 受付嬢はカウンターからホールに出てきてわたしを案内してくれた。


 ホールの脇の階段を上って案内されたのは2階の応接室だった。


「こちらに市庁舎からの担当の方がいらっしゃいます」


 部屋の中にゲランさんが座っていて、わたしたちが部屋に入るとゲランさんが立ち上がった。


 受付嬢がわたしのことをゲランさんに紹介してくれた。


「冒険者のシズカさんです」


「シズカです。どうも」


「こちらが市長秘書をされているゲランさんです」


「市長秘書をしておりますゲランです」


「それではわたしは失礼いたします。お話が終わりましたらドアを開けたままお帰りください」そう言って受付嬢は部屋を出てドアを閉めていった。


 応接セットに向かい合って座ったところでゲランさんが話し始めた。


「まず市庁舎から手練れの冒険者を紹介してもらうよう依頼を出したいきさつをお話しいたします。

 昨近、王国内でモンスターの活動が活発化しており、その裏には魔族の動きがあるのではないかということで王都において精鋭からなる調査隊を組織することになったそうです。それで王宮から各都市に対して腕に自信のある者を調査隊のメンバーとして派遣してほしいと要請がありました。

 このブレスカでもメンバーを派遣しなければならなかったのですが、これはという人材の当てがなかったためギルドに適任者を探してもらうように依頼していたわけです」


「そうでしたか」


「シズカさんのお歳はたしか18歳というお話でしたがその若さでオーガをたおし、1日でホブゴブリンを含むゴブリンを多数たおされたとか」


「はい」


「ほかにたおされたモンスターは?」


「飛竜と、コリンと呼ばれる巨大な蜘蛛です」


「コリンと呼ばれる蜘蛛のことはわたしは存じていません。申し訳ありません」


「コリンの魔石はとれなかったのでたおした証拠はありませんが、これが飛竜の魔石です」


 そう言ってアイテムボックスの中から飛竜の魔石を取り出した。


「これが飛竜の魔石ですか。これほど大きな魔石をわたしは初めて見ました。

 飛竜はどのようにしてたおされたのですか?」


「わたしに向かって突っ込んできたので、『真空切り』という剣技で飛竜を甲板じめんの上に落としたうえで首を切り落としました」


「『真空切り』とは?」


「離れているものに斬撃を与えるスキルです」


「そんなスキルまでお持ちとは。

 シズカさん、ご都合がよろしければこのまま市庁舎においでくださいませんか? 市長に紹介します」


「わたしの方はいつでもだいじょうぶです」


 そう言ってわたしは魔石をアイテムボックスにしまった。


「馬車をここの裏手に止めていますのでご一緒しましょう。

 ところで、魔石が宙から現れ宙に消えたのはアイテムボックスですか?」


「はい。そんなにたくさんのものを持ち歩けませんが便利ですよ」


「アイテムボックススキルも希少なスキル。

 失礼ですがこれほどの方が今までこの国でうわさにならなかったことが不思議です」


「わたしはサイタマという相当遠い国からつい先日この街にやってきたばかりです」


「サイタマという国の名まえすらわたしは存じませんでした。

 そろそろ行きましょう」



 二人で部屋を出て階段を下りてホールに出た。ゲランさんは一度受付嬢に会釈したのでわたしも会釈してギルドを出た。そこからギルドの裏側に回ってそこに停めてあった馬車に乗り込んだ。


 市庁舎に到着した馬車を下りて、ゲランさんの後について市庁舎の中に入り、玄関ホールの脇の回り階段を3階まで上り市長室の前に到着した。


 ゲランさんが、市長室の中に向かって「冒険者ギルドからギルドが推薦したシズカさんをお連れしました」と、声をかけた。


『入ってもらってくれ』と、部屋の中からターナー伯爵の声がした。


 ゲランさんがドアを開けてわたしに先に入るような仕草をしたので、わたしが先になって部屋の中に入っていった。前回も同じだったような。


「わたしが、市長のターナーだ」


「シズカです」


「そこに座ってくれたまえ」


 ソファーに座ったら前回同様ターナー伯爵が向かいに座った。ゲランさんは立ったまま、冒険者ギルドでわたしが話したことをターナー伯爵に伝えた。


「ほう。それほどの実力者ということなら全く問題なく王宮に推薦できる」


 そう言ってターナー伯爵がうなずいたのを見てゲランさんは部屋から出ていった。


「ゲランくんから話は聞いていると思うが、王宮で魔族の旧拠点を調査するための精鋭調査隊を組織することになったそうだ。ここブレスカにも調査隊員の候補者を出してくれと要請がきたもののこれといった人材がいなくて諦めかけていたところギルドから推薦できる人物がいると連絡が昨日あったんだ。いやー、きみのような人材がいてくれて助かった」


「どうも」


「その要請に前後してモンスターの活動が各地で活発化しているので注意するよう王宮から書類が届いていたんだよ。このブレスカだとモンスターがらみの何かが起こるとすると南の森だろうということで、冒険者ギルドに南の森の調査を依頼しており現在冒険者パーティーが調査しているところだ。調査結果を待ってなにがしかの対応をとる必要がある」


 冒険者パーティーのことはすっかり忘れていた。おそらくそのパーティーは既にゴブリンないしオーガによって壊滅しているのだろう。今となっては諦めるよりほかはない。


 ターナー伯爵はさらに話を続けた。


「ということなので、王都へ行くのは調査結果が出次第ということで考えている。

 もし南の森に有力なモンスターがいるようなら、王都に出発する前にきみに討伐を依頼することになる」


 調査結果は得られないままオーガやゴブリンの襲撃を受けることになるから、おそらく出発日は前回とそんなに変わらないだろう。というかベネット姉弟のこともあるから前回と同じ日にしてもらおう。


「了解しました」


 ターナー伯爵の話は終わったようなのでわたしは席を立って部屋を出た。


 部屋を出たところにゲランさんが立っていた。


「シズカさんの連絡先を教えていただけますか?」


「小鹿亭という宿に泊まっています」


「了解しました。

 まだ流動的で王都への出発日は決まっていませんが、出発の2日前にはご連絡を差し上げますので、それまでにある程度の準備を終えていてください。

 これは支度金です」


 そう言って布の小袋を手渡された。


 これといって準備するものはないんだけど、キャンプで快適に過ごすため、そういったものを揃えておきましょう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サイタマは秘境だから知られてなくても仕方ない……(埼玉の方ごめんなさい [一言] まあ私はさらに秘境のトサなんですけどね!
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