表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/169

第58話 死に戻り

ここから名まえを付けるなら『仕返し』ないし『やり直し』編となります。

ここ以降を書くに当り見直したところ、すこし変なところがあったので前の方の細かい部分を少し書き直しています。


 目が覚めた? わたし生きてるの? 閉じたまぶたの裏側が明るいんですけど。


 目を開けると視界は緑に囲まれていた。そして草のにおいが鼻を突いた。ここは林の中?


 ざっと見渡した感じ、雑木林の中みたい。森というほど木々が密生していないし、木立の間から雲の浮かんだ青空も見える。地面に下草は生えているけれど、むき出しの地面もあれば、小石や漬物石くらいの石の他、それなりに大きな岩もそこそこ見える。日陰になった岩肌には苔も生えている。鳥の羽ばたきや、鳴き声といったものがあちこちから聞こえてくる。ウニス・ウニグ島の森の中ではないような。


 ここってどこかで見た気がするけど、どこだったかなー?


 周りの景色より気になったのはわたしの体だ。確かわたしはボロボロになって死んだはず。


 どこかのweb小説で転生先がゾンビだった(注1)のがあったのを思い出したわたしは自分の体を確かめた。ちゃんと5体満足な人間だった。着ているのは先ほどまでと変わらない革鎧姿。


 アイテムボックスの中を調べてみるとこれまで蓄えた金貨などの現金や調査行で使ったリュック、買いこんだ食材とか食器、仕留めてとっておいた肉なんかもなくなっていた。ハーネス隊長の持っていたあのコンパスもない。


 ほかに気づいたのは、数本使ったまま回収することなく失くしたはずのボーナス矢が今はちゃんと20本入っていた。1本使ったはずの万能ポーションも20個入っている。どういうことなんだろう?


 結局わたしがアイテムボックスの中に持っていたのはこの世界にやって来た時の初期装備と、なぜかこれまでに集めた飛竜とオーガの魔石だった。


 少しボーっとしていたら、視界の端のレーダーマップに黄色い点が何個か映っているのに気づいた。レーダーマップは探査済みで周囲の状況もわかった。ということは、ここって一度来たことある場所じゃない。広域マップに切り替えたらこの周辺を広範囲にわたって歩き回っていたことが分かった。ここは最初にこの世界のやってきたときの林の中だ。広域マップを北の方にずらしていったところ、ブレスカの街らしきものも映った。


 わたし死んで振出しに戻ったってこと?


『ナビちゃん、今日の日付は?』


『わたしの内部的には新暦1255年6月10日ですが、現在位置と太陽の位置から言えば新暦1255年4月18日になります』


 やっぱり死に戻っちゃったんだ。


 わたしは気になってステータスを確かめてみた。最後に確かめた時のステータスを正確に覚えているわけではないけれど、ステータスに変化はないようだった。文字通りの振出しというわけでもないようだ。


 状況がはっきりつかめない以上、ブレスカに戻ってみることにして北を目指して歩き始めた。


 ブレスカに戻る道すがら、わたしの最期について考えてみた。


 どうしてあの時物理攻撃(・・)反転が効かなかったのか考えたところ、あの丸太は攻撃ではなくたまたま飛んできたもので攻撃とみなされなかった。そういうことだったのだろう。その後、丸太の上にオーガが乗っかりわたしは潰されてしまったのだけれども、結果から見たらそれも攻撃とはみなされなかったんだろう。物理攻撃反転の意外な抜け穴があったってことだ。


 そこのところをナビちゃんに聞いてみたところ、


『物理攻撃は反転するんじゃなかったの?』


巨大蜘蛛コリンは攻撃の意図を持たず木立をなぎ払ったため、薙ぎ払われた木が鎧に直撃したものの攻撃とみなされませんでした』


 思った通りだった。何かのゲームでダメージ反射に対して、一度何かに反射させたものをぶつけると相手にダメージが入った。意図した攻撃でも反射攻撃ならダメージを受ける可能性がある。


 わたしがそのことを知らなかったことが原因というわけではないと思うけど、ナキアちゃんとキアリーちゃんまで死んでしまった。というかわたしもそこで死んだのだから調査隊は全滅したわけだ。死に戻ったわたしは何とか調査隊の面々をあそこで死なせないためできることをしていくつもりだけど、何かいい方法を思いつかない限りあの最後の包囲をかいくぐることなんてとてもできない。でもまだ時間はある。必ず何か方法はあるはずだ。


 もしいい手が思いつけないようならなんとかして調査隊の派遣を止めさせてやる。こっちはこっちでどうすれば調査隊の派遣を止めさせることができるのか分からないという意味では、あの包囲から脱出する方法を考えるのと同じか。





 ブレスカ(まち)を目指して2日目の午後4時過ぎにはブレスカの南門に到着した。わたしの格好は前回同様鎧姿だ。



「見ない顔だが、住民票を見せてくれるか? なければ入城税20(シー)だ」


 見たことのある門衛の兵士が手を差し出してきたので、アイテムボックスから冒険者証を取り出そうとしたら冒険者証は持っていなかった。革鎧のベルトについた物入れから取り出すそぶりをしながらアイテムボックスから硬貨の入った巾着を取り出して銀貨1枚を兵士に手渡し、お釣りに大銅貨8枚貰った。巾着は物入れに戻すふりをしてアイテムボックスにしまった。


「この木札をなくさないように。住民票代わりになる。街を出る時にはこれも門衛に返してくれ」


 そう言って木札を渡された。全く同じことを繰り返してる?


 木札も革鎧のベルトについた物入れに入れるふりをしてアイテムボックスに入れておいた。


 街の南門を通り街の中に入ったわたしはまっすぐ小鹿亭に向かった。途中古着屋が目に入ったので、普段着を何も持っていないことを思い出して、一揃い購入しておいた。



「いらっしゃい。小鹿亭にようこそ」


 元気にニーナちゃんが迎えてくれた。


「お泊りですか? それともお食事ですか?」


「食事をお願いします。それと、朝夕付けて5泊お願します」


「朝夕付いて1泊100Cですから、5日分だと500Cになります」


 先ほどと同じようにベルトの物入れ経由で取り出した巾着から銀貨5枚を払った。


「宿帳になります。お名前だけでけっこうですのでお願いします」


 わたしの言語理解はまだ2なので読むことはできても書くことはできない。


「わたしはまだ字が書けないから代筆お願いします。名まえは、シズカ」


「はい。書き込みました。

 それでは、お部屋にご案内します。こちらです」


 わたしは前回同様3階の一番奥の部屋に案内された。


「お出かけになる際には、部屋の鍵はカウンターにお預けください。

夕食は6時から8時まで、朝食は6時から8時までです。時刻は街の鐘が鳴りますから分かると思います」と、いって鍵を渡された。


 さっそくわたしは防具を脱いで普段着に着替えた。手ぶらだったわたしが普段着を持っていたことは少し変かもしれないけれど、ただの客の荷物のことなどニーナちゃんは気にしないだろう。


 着替え終わったわたしは夕食の始まる6時までベッドの上で時間調整して、それから部屋の鍵をかけて1階に降りていき食堂に入った。


 食堂にはすでに数人の男女が食事をしていた。入り口でニーナちゃんを待っていたらすぐにやってきて窓際の二人掛けの席を勧めてくれた。


 礼を言って席に着いた。エールを頼もうかと思ったけど生ぬるいエールは飲みたくないのでやめておいた。


「今日の夕食の定食は豚肉のステーキとベーコンとキャベツのスープです。すぐにお持ちしますね」


 ニーナちゃんはそう言って水の入った木製のコップをわたしの前に置き、厨房に入っていったと思ったらトレイに料理を乗せて戻ってきた。


「今日の定食です。パンはご自由にお取りください。ごゆっくりどうぞ」


 笑顔でそう言った彼女は、トレイをわたしの目の前に置いて帰っていった。


 ……。


「ごちそうさま」


 わたしは完食して席を立った。


 ニーナちゃんは、ほかの客の相手をしていたけれど、わたしに気づき振り向いて会釈してくれた。





注1:転生先がゾンビだった~

常闇の女神シリーズ、その1

『闇の眷属、俺。~』https://kakuyomu.jp/works/1177354054896322020 よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 死に戻りにより初期装備と魔石しか持っていないはずが死に戻り前に古着屋で購入した普段着を宿屋で着替えるのは変です。宿泊前に購入するべき
[気になる点] セーブポイント無いと、最初からやり直しになりますよねー、 打開策生み出す為には、準備期間の長さで、 対処可能になるかもですが、 判断可能なスキルがないなら、 判断自体が難しいですよねー…
[一言] セーブは自動更新なのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ