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第54話 調査行6、2日目、カルヒ


 残った2体のオーガは左の方から2匹揃ってカルヒに襲い掛かっていった。棍棒を振り回しながらなのでハーネス隊長もうかつに近寄れない。わたしは横合いから真空切りを放とうとしたけれどハーネス隊長が射線に入り放つことができなかった。


 そこでいきなりキアリーちゃんが高音で大きな声を出した。


「ハーーイーーー!」


 これまでカルヒを攻め立てていた2匹オーガは一瞬だけ手を止め、キアリーちゃんの方を向いた。その時気づいたのだけれど、カルヒの額からはかなりの量の血が流れ落ちて顔が血で真っ赤になっていた。


 キアリーちゃんに近かった1匹がキアリーちゃんに向かっていった。そのオーガの前にハーネス隊長が立ちはだかったけどハーネス隊長はオーガの棍棒の横殴りの一振りを脇腹に受けて吹き飛ばされてしまった。


 ナキアちゃんはわたしたちが戦っている前からずっと口の中で何かを唱えていた。今はキアリーちゃんに向かって何かを唱えている。


 キアリーちゃんに向かってきたオーガは棍棒を振り上げて振り下ろした。キアリーちゃんは大盾を持ち上げてオーガの棍棒を受け止めたけど、耐えきれず膝をついてしまった。


 キアリーちゃんの大盾にオーガが棍棒をもう一度振り下ろそうというところでわたしは真空切りをオーガに向けて放った。真空切りはオーガの左の肩から腕にかけてざっくりと傷をつけたけれど致命傷にはならず、棍棒はキアリーちゃんの大盾の上に振り下ろされた。キアリーちゃんは2撃目も耐え、さらに立ち上がった。


 そこでわたしの防具は物理攻撃全反射だったことを思い出したわたしはオーガに向けて駆けだしていった。


 ハーネス隊長も起き上がってハンマーを振り上げそのオーガに向かっていった。


 オーガはわたしに向かって横なぎに棍棒を振ったけどわたしは意に介さずオーガに近づいていった。当然オーガの棍棒はわたしの胴に命中したけれどそこで折れ飛んで半分の長さになった。最初から突撃しておけばよかった。


 オーガに十分近づいたわたしはギョロ目を見開いたオーガの脇腹にムラサメ丸を突き刺しそのまま一歩進んでツバ近くまで押し込んだ。そしてそこから全力を込めて振り切った。


 ドリャーー!


 オーガはパックリと切り裂かれた脇腹から臓物を吹き出してその場に崩れ落ちた。


 残るオーガは一匹。


 気付けばカルヒが地面にうずくまっていた。カルヒが戦っていたオーガは棍棒と一緒に片手を失っていたけれど、残った手でうずくまっているカルヒに殴りかかった。


 オーガのパンチを頭に受けたカルヒから聞こえてはいけないような音がした。わたしはそのオーガに向かって何を言っているのか分からない大声を上げて突撃し、反撃を受けることなく滅多切りにしてやった。


 オーガの赤い点が消えたこと確かめたあと、真空切りのX攻撃で最初に動きを止めたオーガの赤い点がまだ残っていたのでわたしは取って返してオーガの頭蓋をたたき割って止めを刺した。


 フー。これで赤い点はなくなりシステム音が頭の中に響いた。


『経験値が規定値に達しました。レベル17になりました。SSポイントを1獲得しました。力が+1されました。スピードが+1されました。巧みさが+1されました』


『経験値が規定値に達しました。レベル18になりました。SSポイントを1獲得しました。力が+1されました。スピードが+1されました。巧みさが+1されました』


『剣術5の熟練度が規定値に達し、剣術5は剣術6にレベルアップしています』


 カルヒはどうなった? あれ? 黄色い点の数が3つ? ハーネス隊長、キアリーちゃん、ナキアちゃん。


 えっ!?


 カルヒは向こうの木の根元で倒れていた。レーダーマップ上ここら辺だろうというところに注意を向けたら灰色の点が薄っすらと見える。死んでる。


 急いでカルヒのもとに駆けていったら、カルヒの手にはツバの近くで折れてしまった大剣の柄が握られていた。カルヒの革のヘルメットは変形してカルヒの頭部にめり込んでいた。ヘルメットで隠れていないカルヒの顔は星明りの下、赤黒く見える血の他に何とも言えない体液で隠れてしまっていた。


 わたしの次にナキアちゃんがカルヒのそばに駆けてきて、頭部にめり込んだヘルメットに手を置いた。


「だめじゃ。死んでおる。もうどうすることもできん」


 ハーネス隊長とキアリーちゃんもカルヒの近くまでやってきた。キアリーちゃんは剣を鞘に納め盾を利き手の右手に持っていた。注意してみるとキアリーちゃんの左手はだらんと垂れ下がっており、明らかに骨折している。


 ハーネス隊長は片手でハンマーを持って、先ほどオーガの薙ぎ払いをもろに受けた脇腹に残った手を当てていた。ナキアちゃんがハーネス隊長に向かって口を動かしている。


「カルヒのことは残念だ。

 4人になってしまった。メンバーを一人失った以上、これから先これまで以上に厳しくなるだろうが調査は続行する。みんないいな?」


 いやだと言える雰囲気でもない。島の沖合で待つ『ペイルレディー』にたったの2日進んだだけで逃げ帰ってきたと言うわけにもいかないし。


 ナキアちゃんもキアリーちゃんもうなずいたのでわたしも流されてうなずいた。



 カルヒの遺体はその場に埋めることになった。SSポイントを1ポイント使って知力を10上げればアイテムボックスの容量が100キロ分増えるけど、そうはしなかった。そのかわり根元近くで折れたカルヒの大剣の柄の付いた半分だけはアイテムボックスにしまっておいた。


 スコップを持っているわたしが墓掘りを買って出た。これで2度目の墓穴掘りだ。


 ジゼロンおじさんは出発前に失踪したまま行方不明。そして今回5匹のオーガを5人で迎え撃ち一人の犠牲者を出した。また5匹のオーガに襲われれば単純に考えて最低一人犠牲者が出る。次の襲撃が5匹ならそれでも撃退できると思うけれど、5匹ですむ保証はどこにもない。10匹に囲まれてしまえば全滅もある得る。


 わたしはそんなことを考えながら墓穴を掘っていた。


 先ほどオーガの棍棒で盾を強打されたため左腕を骨折していたキアリーちゃんはわたしが墓穴を掘っているあいだに回復していたらしく穴掘りを代ろうかと言ってくれた。


「シズカちゃん、わたしの腕はもう治ったから代ろうか?」


 確かにすごい回復力だ。それでも完全に治ったのかどうかは分からないし、墓掘りはわたしにとって重労働では全然ない。


「もうすぐでき上るから、キアリーちゃんは休んでいていいよ」


「ごめんね」


「気にしないで」


 わたしのスコップは高性能だし、わたし自身も高性能なので墓穴は5分もかからず出来上がってしまった。


「いいか悪いかは置いて、シズカは墓穴掘りも上手なのじゃ」


 墓穴掘りにうまい下手がそんなにあるとは思えないけど、慣れてしまったことは確かだ。



 幅80センチ、長さ2メートル、深さ60センチほどの穴が掘り上がった。このくらいで十分だろう。


「こんなものでいいかな?」


「これで十分だ。

 わたしとキアリーでカルヒを穴におろすからシズカは穴から出てくれ」


 深さは60センチだけど周りに掘り返した土を盛っている関係で結構深い。とは言え身体関係パラメーターが異常に高いわたしは何の苦もなく穴から出ることができた。


 カルヒの上半身をハーネス隊長が抱え、両足をキアリーちゃんが抱えて穴に入っていきカルヒを穴の底に横たえた。


 二人が穴から出てきたところで周りに盛った土を穴の中に戻していき、少しも盛りがった土をスコップで叩き、最後に墓標としてツバの近くで折れて短くなったカルヒの大剣を持ち手が上になるように土に刺してやった。


「わたしはオーガの死体から魔石を回収しておきます。

 みんなは寝てていいから」


 ハーネス隊長は、


「わるいが先に横にならせてもらう」


 そう言って毛布の上に横になった。


「わらわたちも先に寝るから、シズカも早く寝るのじゃ」


「シズカちゃん、おやすみ」


「おやすみ」


 その後オーガの死体から魔石を回収した。これも慣れたもので一体あたり5分もかからず魔石を回収できた。


 クリンで手についた血を落としてわたしもそのままになっていた毛布の上に体を横たえた。そのころには3人の寝息が聞こえていた。


 魔石を取っている時オーガの死体の臭いがきついからみんなに悪いなーと思っていたけれど、わたし自身は慣れてしまったせいかほとんど気にならなくなっていた。みんなもきっとそうだったんだろう。


 寝る前に確かめたステータス。


レベル18

SS=15

力:23

知力:16

精神力:14

スピード:26

巧みさ:30

体力:30


HP=300

MP=140

スタミナ=300


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(62パーセント)

識別2(49パーセント)

言語理解2(77パーセント)

気配察知1(77パーセント)

スニーク1(43パーセント)

弓術3(36パーセント)

剣術6(12パーセント)


<アクティブスキル>

生活魔法1(22パーセント)

剣技『真空切り』



カルヒ早々に退場。ハーネス隊長いいとこなし。なんだかおかしいぞ?

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