表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/169

第53話 調査行5、2日目、2度目の襲撃


 みんなで肉の2巡目を食べているあたりで鍋の中の里イモにも火が通ったようだ。


 鍋から深皿にスープをとって、みんなに渡した。


「うん? 兵舎で飲んでたスープよりこっちの方が断然おいしい。

 シズカは料理をどこかで学んだのか?」


 ハーネス隊長がまず一口スープを口に運んで驚いたようだ。わたしは味見をしていなかったけれど、デーツが効いたのだと思う。


「別に習ったことがあるわけじゃないんですが、乾燥デーツを入れてみたんです。

 かなり甘い乾燥フルーツだからコクが出るかなって思って」


「ほう。わたしにはそこらあたりのことは全く分からないが、とにかくこのスープは絶品だ!」


 次にカルヒにスープを入れた深皿を渡した。


「……」


 何もことばはなかったけど、スプーンの動きが早い。


 そして、ナキアちゃんとキアリーちゃん。


「お・い・し・い・の・じゃーーー!!!」


「こんなにおいしいスープ初めて」


 二人はちょっと大げさかもしれないけれど、おいしいと言ってもらえると嬉しいよね。


 そして最後にわたし。


 スープがみんなに行き渡ったところでナキアちゃんが「パンを柔らかくしてもらいたい者はパンを手に持って上げるのじゃ」


 わたしと、キアリーちゃんはすぐにパンを手にして上に上げた。


 ナキアちゃんが口をモゴモゴさせたらすぐにパンは柔らかくなった。


 ハーネス隊長もわたしたちを見習ってパンを手にして上に上げてナキアちゃんに柔らかくしてもらった。


「なんだ、これは! 堅パンが柔らかくなってる!

 こんなことができたのか!? 驚いた」


 ハーネス隊長のその声を聞いて、カルヒがもっそりとパンを手にして持ち上げた。



 わたしはまずスープを一口ということで、スプーンの上にサイコロに切ったイノシシ肉をツユといっしょに入れてフーフーしてから口に。イノシシ肉は赤身だったけど柔らかくなっていた。味はスープに溶けだしているのか単体だとそれほど味はしなかった。スープはその分味が濃くなっているうえ、隠れたデーツの甘みがスープにコクを与えている。ような。とにかく絶品のスープだ。すぐにわたしはパンを手ごろな大きさに手でちぎって、スープに浸けて食べてみた。これもおいしい。


 里イモはどうかな? 里イモにはフォークを突き刺してフーフーして口に運びホッホしながら食べた。里イモの中にスープの味が沁み込んでいるわけじゃないけど、これはこれで十分おいしい。


 各自が1度お代わりしたらスープを入れた鍋は空になってしまった。量が少なかったわけじゃないんだけどね。


 今回スライスした肉は1枚あたり200グラムくらいなんだけど、わたし以外の4人は4枚食べた。そしてスープを2杯に堅パンを半分くらい。


 ハーネス隊長でさえ腹いっぱいでもう食べられないと言っていたけど、ナキアちゃんとキアリーちゃんも隊長と同じだけ食べてるんだよねー。わたしはスライス肉を2枚にスープを2杯。堅パンを3分の1ほど食べたらお腹がいっぱいになった。作っているとそれだけで少し食べた気になるのか、そんなにたくさんは食べられないんだよ。とは言うものの、わたしだって結構な量食べてる。



 残った肉は明日の朝食用に皿に入れてアイテムボックスにしまっておいた。


 各自がお皿類を軽く洗ってクリンできれいにして返してくれたのでそれをアイテムボックスにしまって、金網や鍋なんかもきれいにして片付けが終わった時にはまだ7時だった。できた端から食べているし飲み会でもないから遅くなるわけないものね。


 カルヒは最後に小声で「おいしかった。ありがとう」と言って皿を返してくれた。見た目は嫌なヤツだけどそこまでおかしな人間じゃないようだ。


 明日も早いので、片付けが終わったわたしたちはめいめい毛布を敷いて横になった。



 わたしもお腹いっぱいだったせいか、若干もたれ気味だったけれど毛布を敷いて横になった。木立の梢の間から星空を眺めているうちに星が一度流れた。もちろん願い事など3度どころか一度も言えるわけもない。そもそも願い事を思いつけなかったし。


 2時間ほど寝られないまま横になっていたら、レーダーマップの端に赤い点が映っていることに気づいた。同時にナビちゃんが『敵が現れました。数は5体です』と警告してくれた。


 わたしはあまり大きな声にならないようにして「東方から何かが迫っている。数は5。距離は150歩」と告げた。ちなみに歩は長さの単位で1歩はだいたい60センチだ。距離まで告げたことでわたしが何かのスキルを使ったことがばれたハズだけどいまさらだ。


 さすがは精鋭。ハーネス隊長以下4人はすぐに跳び起きた。


 ヘルメットと手袋はみんな取っていたけどほかの防具は身につけたまま横になっていたので、わたしも含めみんなヘルメットをかぶった。手は素手のままだ。


 前回のことを思い出したわたしは烏殺を取り出して市販矢をつがえて敵が現れるのを待った。


 今回の隊形は、カルヒ、ハーネス隊長、キアリーちゃんの3人が前衛で、ナキアちゃんはキアリーちゃんのすぐ後ろ。そしてわたしは、ナキアちゃんの右に少し離れた位置で射線を確保している。


           東


 カルヒ、ハーネス隊長、キアリーちゃん

            ナキアちゃん    わたし




 前方(東)から立ち木が折れたり引き裂かれるような音が近づいてきた。大型のモンスターだ。前回のオーガの現れ方と酷似している。しかも今回は5体だ。かなり厳しい戦いになりそうだ。


「距離50歩」


 見えた!


 やはりオーガだった。一匹のオーガを先頭に4匹のオーガが横に広がっている。5匹とも片手に節くれだった木でできた2メートルほどの棍棒を持っている。3メートルを超える巨人が2メートルもある棍棒を片手で振り回すわけだから、相当広い間合いだ。こちらからの近接攻撃はかなり難しい。


 とにかくわたしは少しでも敵にダメージを与えるため早めに矢を射た。狙いは先頭のオーガだ。頭にうまく命中すればクリティカルの可能性もあったけど、今回は手堅く胴体を狙った。


 矢はオーガの脇腹あたりに命中し、深々と刺さったんだけどオーガは意に介せず動きもそれまで通りだった。すぐにわたしは市販矢をつがえ、今度は頭を狙って矢を放った。距離は10メートルもないので必中だ。


 矢の軌道を追うこともなくわたしは烏殺をアイテムボックスにしまって腰に下げたムラサメ丸を引き抜きオーガを見た。


 先ほどの矢はオーガのこめかみに突き刺さっていた。一射目と同じくそのオーガは矢を意に介さず前衛3人の真ん中で構えるハーネス隊長に迫ってきた。わたしはそのオーガのことは隊長たちに任せて、右手から迫るオーガの胴体に向かって袈裟懸けに真空切りを放った。


 こちらも距離は10メートル。


 真空切りの見えない刃がオーガの裸の上半身を斜め切り裂いた。この距離だと矢よりも真空切りの方が効果があるようだ。


 オーガはそこで一瞬立ち止まったのでわたしは第2撃の真空切りを放った。先ほどとは逆方向の袈裟切りだ。


 オーガの体には傷でXマークができ上がり、傷が交差したところから血がドクドクと流れ落ち内臓がだらりと零れ落ちた。このオーガは死んでいるわけではないがまともには戦えないだろう。


 わたしはそのオーガの横合いからこちら向かってきているオーガに真空切りを放った。




「カルヒ、わたしがハンマーでオーガの棍棒を受けるからそのすきを突いてくれ」ハーネス隊長の声がしたのでそちらを見たら、最初のオーガがハーネス隊長目がけて棍棒を振り下ろしたところだった。


 その棍棒をハーネス隊長がハンマーで何とか受け止めたところを、カルヒが大剣をオーガのがら空きの脇腹に叩きつけた。


 そこから先は混戦となったけれど、先頭のオーガはハーネス隊長の目論見通りカルヒが討ち取った。


 ここまでで3匹のオーガが行動不能になっていて、健全なオーガはあと2体。行動不能の3匹の内、カルヒのたおした1匹以外はまだ息がある。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ