第52話 調査行4、初日から2日目
魔力の話が出たので、毛布の上に横になって自分のステータスを眺めてみた。
レベル16
SS=13
力:21
知力:16
精神力:14
スピード:24
巧みさ:28
体力:30
HP=300
MP=140
スタミナ=300
<パッシブスキル>
ナビゲーター
取得経験値2倍
レベルアップ必要経験値2分の1
マッピング2(60パーセント)
識別2(47パーセント)
言語理解2(76パーセント)
気配察知1(75パーセント)
スニーク1(41パーセント)
弓術3(24パーセント)
剣術5(98パーセント)
<アクティブスキル>
生活魔法1(20パーセント)
剣技『真空切り』
魔力っておそらくMPのことだと思うけど、いままで気にしたことは一度もなかったんだよね。ステータスで確かめてみてもHP、MP、スタミナどれも最大値しか表示されてないし。
『ナビちゃん、そこのところどうなの?』
『ステータスの表示は最大値ではなく現在値です。
これまでHPが減ることはありませんでしたのでHPについては現在値=最大値となっています。
スタミナについてはこれまで最大で100程度低下したこともありましたが、数分で回復しておりステータスを確かめた時には最大値に戻っていました。
MPについてはこれまで回復速度が消費速度を上回っていましたので常に最大値が表示されていました』
なるほど。そういう仕様ならそれでいいカモ。最大値なら体力や知力から分かるんだしね。
大魔術師はないにしても今のところSSポイントがだいぶ貯まっているのでそれ関係に振ってみるのもアリか。でも魔法云々より、剣でバッタバッタと切り倒したり、的に矢を命中させたときは爽快なんだよねー。
そんなことを考えていたら、知らない間に眠っていた。
翌日。夜間不寝番のナビちゃんに起こされないまま夜明け前に目が覚めた。起き上がって周りを見たところちゃんとハーネス隊長も毛布の上で寝息を立ててぐっすり眠っていた。
わたしが起き上がったせいか、ナキアちゃんとキアリーちゃんも目を覚まし、ハーネス隊長たちも目を覚ましたようだ。
立ち上がったハーネス隊長から指示があった。
「あと2時間ほどで出発するからそれまでに支度をして腹ごしらえも済ませてくれ」
朝食は昨日の残りを予定しているし、ヘルメットと手袋は外しているけれど、他の防具は着けて寝ているので準備は終わっているようなもの。体全体にクリンをかけたらすっきりした。そこでステータスを確かめてみたけれどやっぱりMPは変わらぬままだった。
時間があったのでかまどに薪を入れて火を点け、昨日の鍋を上に置き、水と塩を加えて増量してやった。黙ってナキアちゃんがパクチーもどきの束を差し出したので仕方なく手でちぎって鍋の中に投入した。手でちぎったことで得も言われぬにおいがあたりにたち込めた。そして、わたしの両手にもにおいがついてしまった!
『なんだ!? この変な臭いは』
カルヒが何か言っていた。カルヒもこのにおいが苦手だったか。少し評価が上がったカモ?
火力が弱いものの20分ほどで鍋は温まった。
わたしたちはすぐに深皿によそって朝食を始めた。
ハーネス隊長たちは昨日の肉が各自の鍋に残っていたようで、温めずそのまま食べていた。パンと一緒と言いたいところだけど、パンは水に浸けて別途食べていた。今日もナキアちゃんは堅パンを柔らかくしてあげなかったようだ。何かわだかまりでもあるのだろうか?
日が昇ったようで林の中だけどかなり明るくなった。出発までまだ時間がある。
後片付けを終え、リュックの中に各自の荷物をしまい終えたわたしたち3人は、ヘルメットと手袋を着けて出発準備を済ませた。
ハーネス隊長たちも準備が終わったようだ。
ハーネス隊長がベルトの物入れから例のコンパスを取り出して方向を確かめた後、
「少し早いが、出発しよう」と、出発を告げた。
今日もハーネス隊長を先頭に昨日と同じ隊列でわたしたちは東進を再開した。
午前中1時間進むごとに10分休憩を4回繰り返し、4回目の休憩は30分ほどの休憩となった。この間、モンスターの襲撃はなかった。ヘビと大ガエルを途中見つけたけど、見逃してやった。キアリーちゃんは赤いキノコだけを熱心に集めていた。
30分休憩の後1時間進むごとに10分休憩を4回繰り返し、最後の休憩はなくその日の行程はそこで終わった。そしてわたしたちは野営の準備を始めた。
「ハーネス隊長、今日は肉を焼こうと思っているんですが、一緒にどうですか? カルヒも一緒で」
「おう、それは済まんな」
「ありがと」
カルヒがお礼を言える人だとは思っていなかったので正直驚いた。
「何か手伝えることはあるか?」
「大き目のかまどを作ってもらえますか? 肉だけだとさみしいからスープも作りたいし」
「わかった」
「じゃあ、わらわたちは薪をあつめてくるのじゃ」
「行ってくるね」
「わたしは下ごしらえしておく」
一人あたり肉1キロは多いかもしれないけれど焼いておけばいつでも食べられるので5キロほどの昨日と同じバラ肉をまな板の上に出して厚さ1センチくらいになるようナイフでスライスしていった。スライス肉はまな板の上に並べて軽く塩コショウしてやった。大きなまな板は使いでがあって便利だ。
昨日きれいに血を洗い流した大ウサギの肝臓と心臓もスライスしておいた。もちろん臭みなどは何もなかった。
スープ用には出汁が出ればいいだけなのでスライスした肉を1枚使ってサイコロにしておいた。スープ用にコクが出ると思いデーツを薄く輪切りにしておいた。
玉ねぎは昨日使ったので野菜はイモしかないけど、そこはしかたない。イモは里イモみたいなイモで皮をむいたらヌルヌルしていた。ヌルヌルはクリンで簡単に落ちた。クリンは重宝する魔法だ。
皮をむいた里イモは一口大に切ってボウル代わりの小さい鍋に水を入れてその中に入れておいた。ウォーターも重宝する魔法だ。
下ごしらえが終わった頃、立派なかまどもでき上がり、ナキアちゃんとキアリーちゃんも薪をどっさり抱えて戻ってきて、かまどの中に薪を組んでくれた。
薪の準備が終わったところで、わたしはかまどの上に大型金網を置き薪の下の方に入っていた枯れ葉に火を点けた。
すぐに火は大きくなったので、金網の隅の方に大き目の鍋を置いた。そしてその中にサイコロにした肉を入れて肉に焦げ目ができるまで炒めてやった。
鍋で肉を炒めながらスライスした肉をトングで金網の上にどんどん乗せていった。調査隊のメンバー内ではわたしのアイテムボックス使用はデフォルトになっているようなので宙から何か出てきても誰も驚かない。
鍋に入れた肉はすぐに炒め上がったのでその後水を入れ、塩と一緒に輪切りのデーツを鍋に入れ良くかき回しておいた。
網焼きの方もでき上がってきて、いい匂いが漂い始めた。炭焼きではないので煤っぽいし煙臭くはあるけれどそれもまた野趣ということで。かまどの周りに全員集まり黙って出来上がりを待っている。なんだかすごくおかしくなってきた。
焼き上がったイノシシ肉のスライスを一人2枚ずつ木皿に乗せて渡していった。
最初はハーネス隊長。
「ほう、うまそうだ」
次にカルヒ。
「……」
予想通り。空いた金網には肉を乗せていく。
そして、ナキアちゃんとキアリーちゃん。
「これはうまそうなのじゃ」
「ヘビやカエルより断然おいしそう」
そして、わたし。塩加減は申し分なし。ちょっと噛み応えがあるけれどそれくらいの方が食べた実感がするので満足感がある。
煮立ってきた鍋のアクをすくって、里イモを入れた。里イモはざっくり切っているので20分はかかりそう。でき上がるまで肉を食べてればいいでしょ。
みんなで食べる方がおいしいよね。