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第51話 調査行3、初日3


 イノシシを仕留めて不要な内臓部分を捨て、心臓と肝臓を切り分けた後枝肉にしてからさらに骨付きのまま小分けしてやり、みんなの待つ空き地まで戻っていった。


 出かけていって1時間もかかっていないし、日はまだ沈んではいない。空き地からほんの100メートルしか離れていなかったしね。



 留守をしていた間に空き地にはかまどが2つ出来上がっていた。1つはハーネス隊長とカルヒのかまどでもう一つが残るわたしたち3人のかまど。



「もう帰ってきたのか。ダメだったのか?」と、ハーネス隊長が聞いてきた。帰ってきたのが早すぎたみたい。


「いえ。

 イノシシを仕留めました」


「1時間も経っていないのにもう仕留めたというのか?」


「仕留めて解体もしています」


「解体までも。

 ものはアイテムボックスの中か?」


「はい」



 ハーネス隊長とカルヒにはイノシシの前足1本枝肉を渡しておいた。


「肝臓とか心臓食べます?」


「あのあたりは下ごしらえに時間がかかるからこの肉だけで十分だ」




 男二人のところからナキアちゃんとキアリーちゃんのところにいった。


「シズカちゃんが狩に行っておる間にわらわたちは野菜とキノコを集めておったのじゃ。

 これじゃ」


 平たい石の上にイモに見える根菜と玉ねぎのような根菜、それに赤い傘の上に白い斑点のあるあのキノコ、それにあの緑の葉っぱが置かれていた。イモと玉ねぎと葉っぱは水洗いされていた。わたしもイモはここまで来る途中で見つけていたんだけど玉ねぎもあのキノコもあの葉っぱも見なかった。ナキアちゃんとキアリーちゃんには何かそういったスキルがあるのかも?



 わたしは、二人にどこらへんの肉を食べるか聞いてみた。


「一番うまいのは腹の辺りの肉と思うのじゃがどうじゃろ?」


 腹の周りの肉というとバラ肉だよね。


「どこを食べてもおいしいんじゃない」と、キアリーちゃん。


「どこの肉もたくさんあるから、ナキアちゃんのご要望通り腹の辺りの肉を出すね」


 アイテムボックスからこの前買ったまな板と豚バラの塊を出した。肉は5キロくらいの塊だったのでナイフで切って1キロほどにして残りはしまっておき、まな板の上で1キロの塊肉を一口大にして鍋の中に入れた。


 かまどにはたきぎとかの用意は済んでいたので、下の方に入れられた枯れ葉に火を入れたら簡単に火はその上の枯れ枝に回った。火を点けた後、鉄棒を2本かまどの上に渡してその上に鍋を置いた。


 火が大きくなって肉がジュージュー言い始めたのでしばらく自作木ヘラでかき混ぜて表面に薄っすら焦げ目がつくよう炒めてからウォーターで水を入れた。生活魔法のウォーターがなければ調査行は荷物運びも含めて大掛かり、大人数になっていたと容易に想像がつく。


「シズカちゃんの手さばきは見事なのじゃ。もしや料理も天才なんじゃろか?」


「あり得るね」


 料理については市販のルーで箱に書いているレシピを見ながらカレーが作れるくらいでそれ以上のものは作れませんよ。


「野菜は何入れる? 今日は玉ねぎにしようか?」


「そうじゃな。肉も多いからイモはなくていいじゃろ。いろどりに緑の葉っぱが見つかってよかったのじゃ」


「赤いキノコは? 今日も簡単に見つかったし、

 キャンプの時に見つけてリュックの中に入れたままにしてたら腐らずに半分乾燥したけど色はそのままだし、そっちも使えるんじゃないかな?」


「あれが入ると、どっと疲れるからやめない?」


「あの疲れも気持ちいいんだけどね。また今度にしよう。

 あれって、火にくべて煙を吸っても気持ちよくなるような気もするんだよね」


 ナキアちゃんがいるからどうとでもなるんでしょうが、キアリーちゃんがどんどん危ない方に向かっているような。


 わたしは話ながらも玉ねぎを適当な大きさに切っておいた。


 鍋の中ではアクが浮いてきたのでお玉で取って、頃合いを見計らって玉ねぎを投入した。


 塩を入れるタイミングはいつがいいのか分からなかったので、玉ねぎを入れたタイミングで岩塩を削って投入しておいた。


 肉を炒めた時コショウをすればよかったんだけど、忘れていたのでついでに塩の後コショウを鍋に振りかけた。これは王都のお店で買ったコショウではなく、神さまからもらった粉コショウだ。




 わたしたちの鍋がようやくでき上ったころ、ハーネス隊長たちを見たら、イノシシの前足をそのままかまどの上に置いて直火であぶってた。フォークを突き刺して回そうとしているんだけどかなり苦労している。うまく焼ければ美味しいと思うけれど、どう見てもうまく焼けそうではない。


 ハーネス隊長がイノシシの前足と悪戦苦闘している横で、カルヒはコップに入れた水を飲みながら堅パンをナイフで削って食べていた。かわいそうなので明日は差し入れしてやるか。


 などと思っていたら、ナキアちゃんが嬉しそうに二人を見て、


「男二人で食事はわびしいのじゃ。ヒッヒッヒ」


 二人のパンくらい柔らかくしてやればいいものを。聖女さまは意外とお人が悪いようだ。


 今日は明日の朝の分も含めて3人分の用意しかしていないので、いまさら救援はできない。


 わたしは男性二人のわびしそうな姿を見て見ぬふりをして、でき上った具沢山スープを先日買った深皿に入れておいしくいただいた。


 鍋の中身が3分の1くらいになったところで、みんなお腹いっぱいになった。残ったスープは鍋ごとアイテムボックスにしまっておいた。


「明日の夕食はイノシシ肉の網焼きにしようか?」


「それも楽しみなのじゃ」


「楽しみ」


「あの二人もかわいそうだから明日はみんなで食べない? 金網なら大きいのがあるし」


「あまりの粗食で元気が出なくなっては困るからそれもよかろ」


「いいんじゃない」


「そうするね」



 わたしたちが食べ終わって片付けが終わった辺りでハーネス隊長たちは肉が焼けたようで、肉を何とか切り分けていた。お皿を持参しているわけではないので、鍋の中に切り分けていた。まだ熱いみたいで相当苦労していた。


 明日の網焼きで肝臓や心臓も食べたいと思い付き、大ウサギの肝臓とか心臓もそのままだったので、まな板の上で適当に分解して鍋の中に入れた。その上からウォーターの水を入れて晒しておくことにした。これでまだ残っていた血もきれいになるだろう。きれいになるでここでもクリンが効くと思って試してみたら血の塊みたいなのが水の中にしみ出てきた。


 クリンって万能じゃん。


「シズカちゃんはいつもクリンを使っておるが、魔力が切れないのじゃな。これもすごいことなのじゃ」


「クリンって魔力とか使ってるの?」


「魔法に類するものはすべて体内に宿っておる魔力を使っておるのじゃが、シズカちゃんは違うのか?」


「魔力が減ったって感覚が何もないから気付かなかった」


「ウォーターはそうとう魔力を使う生活魔法じゃが、あれもそうなのか?」


「うん」


「なんと。シズカちゃんは大魔術師の素質があるのじゃ!」


「すごーい!」


 なんだかおかしなことになってきちゃった。






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