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第50話 調査行2、初日2


 オーガをたおしてレベルアップしたわたしがステータスを確かめていたら、ハーネス隊長以下が褒めてくれた。


「シズカ、でかした。

 一度に3匹のオーガをたおすことは容易ではないので肝を冷やした。

 キャンプでのオーガといい今回といい、見事だ」


「シズカは剣の天才だったのじゃな」


「すごいよねー。あんなに離れた位置でしかも相手は動いてたのに同じ傷口に攻撃できるんだもの」


「全くキアリーの言う通りなのじゃ」



「フン。2匹を取り逃がしてしまったが、あいつらが仲間を呼んでこなければいいがな」


 一人だけ褒めてくれなかったけれど、確かに仲間を引き連れて戻ってこられれば厄介だ。引き連れてくるのがオーガでなくてもブレスカの時のようにゴブリンを大量に引き連れてこられてもそうとう厄介にはちがいない。この位置だと囲まれる可能性も高いのでさらに厄介なことになる。でも一つ一つ確実に乗り越えていくことは大事だ。乗り越えられなければそこでお終いだもの。


 今回は運よくオーガの攻撃を許す前に撃退できたのだけど、反省点は弓を最初に用意していなかったことだ。剣は構えるまでの時間はかなり短くて済むけれど、弓矢は構えて的を狙うまでそれなりの時間がかかる。弓で一撃を放ってからでも弓をアイテムボックスにしまって剣を構える時間は十分あった。


「いまの襲撃はたまたまなのか、われわれの上陸を察知しての出迎えだったのかは分からないが、たまたまだったことを祈ろう」と、ハーネス隊長が危惧を口にした。


 もし魔族がわたしたちの上陸を察知した上で、オーガにわたしたちを襲わせたのならば、沖合に停泊している海軍の『ペイルレディ』も襲撃される可能性が十分ある。


 飛竜程度であの『ペイルレディ』が沈むとは思えないけれど、甲板上はかなりの被害が出るだろう。飛竜のかわりに海のモンスターなんかが現れて艦底を食い破られれば最悪『ペイルレディ』が沈んでしまう。そうなればこの島で雪隠詰めになるわけだけどだいじょうぶだろうか? わたしたちが任務を無事終えて帰りつくまで『ペイルレディ』が無事であることを祈るしかない。



「せっかくなのでオーガの魔石を回収します」


「ああ」


 ハーネス隊長の許可を貰ったわたしは、うつ伏せに倒れたオーガをまず検分した。


 わたしの放った真空切りの斬撃がうつ伏せに倒れているオーガの背中まで達していた。


 わたしはオーガの背中の上に乗り、その切り口からからざっくりとムラサメ丸を突き刺して背中の肋骨ごと切り口を広げてオーガの心臓近くまで腕を突っ込んで魔石を取り出した。


 初めて取り出した魔石は思った以上に大きかった。誰も何も言わなかったのでわたしがいただきクリンで血の汚れを落としてアイテムボックスの中にしまっておいた。オーガは食べられるのかもしれないし食料が無くなれば考慮しなければならないけど、モンスターとはいえ人型は遠慮したい。ハーネス隊長も何も言わなかったので放置だ。


 作業を終えたわたしはクリンをかけながら地面におろしていたリュックを背負い直した。


 わたしが魔石を回収しているあいだ、武器がダミーメイスのナキアちゃん以外、リュックに武器や盾を括り付けてリュックを背負い、わたしたちはオーガが現れそして逃げていった東に向けて歩き始めた。



 再出発して5時間。わたしたちは1時間ごとに10分ほど小休止しながら林の中を黙々と歩き続けた。その間モンスターには遭遇しなかった。


 日もだいぶ傾いてきたころ、野営するのに良さそうな空き地が見つかった。


「よし、今日はここまでにしてここで夜明けまで野営しよう。

 各人、夜明けまで休んでくれ」


「ハーネス隊長、夜間の見張りとかしないでいいんですか?」


「ああ、わたしが警戒しておくからだいじょうぶだ」


「隊長は寝ないで平気なんですか?」


「寝ないわけではない。

 わたしは寝ていても異変があればすぐに目覚めることができる」


 午前中のオーガの襲撃も最初に気づいたのはわたしだったし、飛竜が『ペイルレディ』を襲ったときハーネス隊長もカルヒも素手だったけどだいじょうぶなのだろうか?


 今のわたしは肉体年齢は18歳だけど中身はプラス8歳のれっきとした大人なのでそのことについては何も指摘しなかった。わたしも眠りが浅い方だから何かあれば気付けると思うんだよね。そういえばナビちゃんってわたしが眠っているあいだに見張りの代わりはできないんだろうか?


『レーダーマップは共有していますから夜間に限らず見張りできます』


 なーんだ。ナビちゃん、それならこれから何かあれば注意してね。わたしが寝ていたら起こしていいから。


『了解しました』


 やっぱり人任せじゃね。これで一安心。


 リュックを降ろしたわたしたちは野営の準備を始めた。移動中レーダーマップ上には黄色い点がそれなりに現れてはいたけれど、わざわざ狩をしていないので、いまのところアイテムボックスの中にしかそれらしい食べ物は入っていない。ちょっと狩に出かけたいところだ。


「ハーネス隊長、暗くなるまでこの近くで狩をしていいですか?」


 そう聞いてみた。


「そうだな。ある程度食料を確保しておきたいところだ。当てはあるのか?」


「はい」


 現に今レーダーマップの端、距離にして100メートルに黄色い点が映っている。その点はわたしたちの気配には気づいていないらしく、その位置でじっとしている。


「キアリー、シズカについて行ってやれ」


「一人でだいじょうぶです。というか、狩なので一人の方がいいです」


「シズカならオーガを一人でたおせるか。

 ならば用心していけ」


「はい」


「シズカちゃん、かまどはナキアちゃんと一緒に作っておくから一緒に食べよう」


「うん。じゃあ行ってくる」



 隊長から許可を貰ったわたしは烏殺をアイテムボックスから取り出して、じっと動かない黄色い点に向かって歩いていった。黄色の点まであと30メートル。そこからわたしは腰を落とし音を立てないようゆっくりと黄色の点に近づいていった。


 距離20。


 見えた!


 黄色い点の正体はおそらくイノシシ。相当大きい。お尻をこちらに向けて根菜でも掘り当てようとしているのか地面に穴を掘っている。


 お尻に矢を当てても致命傷にはならない。


 わたしは矢をつがえてからいつでも射ることができるように弓を水平にしてつるをわずかに引いたまま、ゆっくりとイノシシの頭部を狙える位置まで右回りに回り込んでいった。つがえた矢は念のためボーナス矢にしておいた。



 距離を変えず回り込んである程度の射線が確保できたところで、弓を引きながら狙いを付けた。照準の赤い丸はイノシシの顎の斜め後ろあたり。


 ビュン。


 弓を射た音に反応してわずかにイノシシが首を上げながらこちらを向こうとしたところ、矢はイノシシの耳の下、こめかみあたりに深々と刺さった。


 ドウッとイノシシはその場に倒れて動かなくなった。今回も一撃でたおしてしまった。


 まずはボーナス矢の回収だ。


 片手で矢羽の先の辺りを掴んで思い切り引っ張ったら簡単ではなかったけれど何とか引っこ抜けた。クリンできれいにしてアイテムボックスにしまっておいた。


 見た目は100キロは軽く超えていそうなイノシシ。頭を落としていらない内臓を捨ててしまえばだいぶ軽くなる。



 ムラサメ丸でイノシシの頭を切り落とそう。地面にうつ伏せになっているので首チョッパしづらいけれど首の骨を断ち切りさえすればあとはナイフでどうとでもなる。鬼包丁と化したムラサメ丸を一閃。


 わたしの腕では首の皮一枚という訳にはいかなかったけれど、首の骨を断ち切り4分の3ほど首を切った。


 当たり前だけど切り口から血が流れ出てきたので、先に血抜きをするためイノシシの後ろ足2本を束ねてロープを括り付け、近くにあった太い枝に引っ掛けてイノシシを吊り上げた。枝がかなりたわんだけど折れることなくもってくれた。


 血の滴りが落ち着いてきたところでイノシシの首を落とし、それからはナビちゃんの指示に従って解体していった。


 50分ほどかけて大まかに解体を終えてアイテムボックスにしまっておいた。不要な部位は頭と一緒に穴を掘って埋めている。結局出来上がりで枝肉と肝臓、心臓を合わせて70キロちかくになったけれど何とかアイテムボックスの中に収納できた。5人で割れば一人14キロ。往復20日と考えると一人1日700グラムの肉。十分のような気がする。




<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(60パーセント)

識別2(46パーセント)

言語理解2(76パーセント)

気配察知1(74パーセント)

スニーク1(41パーセント)

弓術3(24パーセント)

剣術5(98パーセント)


<アクティブスキル>

生活魔法1(18パーセント)

剣技『真空切り』





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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゴミでも腐らないなら内臓や屑肉もアイテムボックスに入れておくのはアリかもなぁ、狼型モンスター現れた時とかに餌や囮に使えそう、調査が終わったらゴミは処分だろうけどー
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