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第47話 飛竜の魔石

2023年7月5日午前0時:

20話でオークの首を切り飛ばしたことにしてたんですが、オークって首が太くてとても切り飛ばせそうになかったので、頭をカチ割ったことにしました。


 わたしがステータスを確かめながらクリンをかけていたら、まわりで様子を見ていた船員たちから歓声が上がった。


 ハーネス隊長とカルヒも甲板の上に出ていたようだけど武器も持たずに手ぶらで、もちろん何も活躍しないままだった。わたしのレーダーマップに赤い点が見えたことでわたしたちは準備できただけなんだけどね。


 そういえば、いままでオーガをたおした時には魔石とか頭になかったので魔石を取り出すのを忘れていたけど、今回の飛竜は魔石を何とかして取り出そう。


「飛竜の魔石を取り出してみない?」


「これほどの大物ならば、そうとう大きな魔石が採れるはずなのじゃ」


 飛竜は両腕、両足を広げてだらしなくうつ伏せになっているので胸に魔石があるとなると取り出しにくい。


「ナキアちゃん、この飛竜をせめて横向きに寝かせたいんだけど軽くできるかな?」


「さっきもうまくいったのじゃから、簡単じゃ。

 ほれ」


 キアリーちゃんと二人して飛竜の片腕を持ち上げ反対側に力ずくでたおしたら、もう片方の腕がゴリッと痛そうな音を立てて肩から外れ飛竜は上半身だけ仰向けになった。下半身は横向きで仰向けまで返らなかった。


 体全体を仰向けにするには足の股関節を外さないと無理そうだ。魔石を取るには上半身だけで問題ないのでこのままで十分。


 わたしたちが飛竜の胸を割こうと作業していたらハーネス隊長がやってきた。カルヒはいつの間にかいなくなっていた。


「これはきみたちがたおしたのか?」


「わたしたちの方に向かってきたので討ち取りました」


「ほとんどシズカがたおしたんじゃがな」


「ブレスカの市長が武芸に秀でているということで調査隊に推薦してきただけのことはある」


「ハーネス隊長、これからこの飛竜の魔石を採ろうと思うんですが構いませんよね?」


「ここは海軍の縄張りなので海軍の細かい規則などは分からないが、多分だいじょうぶだろう。そのかわり、この飛竜の肉は船の連中に譲ってやるんだな」


「もちろんです。でも飛竜の肉っておいしいんですか?」


「わたしもまだ食べたことはないが、塩漬け肉よりマズいことはないだろう。それにモンスターの肉は腐りにくいから船では重宝するそうだぞ」


「なるほど」


 飛竜の肉を船に譲れば、朝夕のメニューが豊かになるはずなので願ったり叶ったりだ。


 そういうことなら早く作業を終わらせて、船の連中に飛竜を渡した方が賢明だ。


 船員たちがわたしたちを遠巻きに見守る中、ムラサメ丸を包丁代わりにしたわたしは、キアリーちゃんの助けを借りて飛竜の胸を掻っ捌いて中から20センチほどの黒光りする珠を見つけた。これが魔石か。


 ウォーターで水洗いしつつクリンをかけて黒光りする表面をよく見ると虹色に光っていた。これだけ大きければ何かの用途があるのかもしれないけれど、単純に宝物としての価値も高そうだ。見た感じは巨大黒真珠だしね。


「それはシズカちゃんのものだから」「その通りじゃ」


 わたしが何も言わないうちから飛竜の魔石を二人に譲ってもらった。


「ありがとう」


 わたしも気兼ねすることなく魔石を自分のものにした。将来売ることがあれば代金を3人で山分けしよう。


「飛竜はみなさんで自由にしてください」


 わーー! という歓声が艦上に沸き上がった。


 飛竜をたおしたうえでその肉を譲ったわたしたちはお客さまからヒーロー、いやヒロインになってしまった。



 ヒロインになったわたしたちは船室に戻った。


 わたしは再度自分にクリンをかけておいた。それですっかりリフレッシュしたわたしはアイテムボックスの中にしまっておいた飛竜の魔石を二人の前で取り出して、


「これって、きれいだけど何かの役に立つのかな?」


「魔石は魔道具を動かすために必要なのじゃが、これほど大きなものが入る魔道具はあまりないと思うのじゃ。それこそ王宮の宝物庫に納められている大戦時活躍したアーティファクト級の魔道具くらいしかなかろう」


「魔道具ってあるんだ」


「生活用に灯りの魔道具とかコンロの魔道具とか街に出回ってはいるが、数が少ない上、今現在魔道具を作れる職人はほんの一握りしかおらぬのじゃ。そのためそういった生活用の魔道具でも相当値が張るのじゃ。庶民はそんなものなくても生活できるしな」


 なるほど。



 その日の夕食は艦長の食堂に招かれた。艦長の感謝の言葉とともに出されたメインメニューは飛竜肉のステーキだった。部位はよく分からないと説明を受けた。食べてみたところニワトリのむね肉に近いさっぱりした味だった。ナキアちゃんとキアリーちゃんに言わせると、ヘビに近い味だということだった。飛竜も爬虫類のようなものだろうからと妙に納得した。島に上陸したらガラパゴス諸島にいるオオトカゲみたいなのがいるかも知れない。そういった天然記念物的トカゲもこの飛竜と似たような味なのだろうか?



 夜になってハンモックの中に入り今日の飛竜のことを考えたんだけど、今船が進んでいるのは陸地からかなり離れたところのハズ。それでも飛竜が襲ってきた。航続距離がすごいのか、はたまた飛竜の生息地がこの辺りにあったのか? これから魔族の調査に行こうとしているわたしたちの乗ったこの船をピンポイントで襲ってきたのは偶然だったのだろうか? 考えたところで本当のところは分からないけど、ちょっとだけ気になった。




 翌日。


 せっかくヒロインになったので、わたしたち3人は、船の中を見学して回ろうと朝食を食べた後すぐに甲板に出た。昨日飛竜の血で汚れ壊れた箱や樽などで散らかった甲板はすっかり元通りにきれいになっていた。


 昨日破壊されたマストの横棒も修理が終わって、今は帆を張っている。


 船員たちに邪魔にならないように上甲板を一回りした後、船内に入ろうと一度ラッタルを降りたところ、かなり嫌なにおいが漂っていたので早々に退散した。


「鼻が曲がってしまったのじゃ。わらわの祈りも効かぬほどの臭いだったのじゃ」


 いろいろなもの、見てはいけないようなものが船の底には溜まっているんだろうと想像してしまった。


 それからのわたしたちは、上甲板アッパーデッキで軽くストレッチなどをして暇を潰した。乙女が男だけの世界にいれば危険が危ないのだろうけど、飛竜を叩き切ったうえ、胸を割いて魔石を取り出してしまうようなヒロインたちにちょっかいを出すような勇気のある船員はいなかった。


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