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第29話 剣技『真空切り』


 ターナー伯爵の王都邸には、管理人のおじさんと奥さん、それに娘さんの3人が常駐しているほか、ブレスカから公費で王都のディナス大学に通っている学生が5名ほどいるそうだ。ゲランさんもかつてこの王都邸からディナス大学に通ったという話だった。一種の寮として使われていて、今回のようにブレスカからの客にも対応しているそうだ。


 食堂に入ると、二人分の料理が並べられていた。ここは来客用の食堂ということで、管理人家族と御者のおじさんは別の食堂で食事するそうだ。そういうところはキッチリ区別されている。わたしにそれがいいとか悪いとかの感想があるわけでもない。


 食事しながら、ゲランさんがわたしに、


「先ほどの、剣の型ですか? 見事なものでしたね。

 シズカさんはどちらかの高名な剣術家の指導とかお受けになっているんですか?」


 褒めてもらっちゃった。照れるねー。


「いえ、ただの我流です」


「あの美しい動きが我流?」


『胡蝶の舞』を美しいとまで言われてしまったよ。さっき何度も練習しているから再現可能とは思うけど自信はない。だって思い付きの我流なんだもん。


「そういえばシズカさんは弓の腕前もすごいし」


「あまり敵の近くで戦いたくなかったので、弓矢を主に使ってたんですが、敵の数が多いと矢がもたなくなるので、この前のブレスカの南門では剣で戦ったんです。そしたら剣の方が少し強く成ったみたいです」


「南門でのシズカさんの戦いぶりは、まさに鬼神のようだったと聞いています」


 これも照れるなー。あの時のことはよく覚えていないんだけど、ゴブリンを剣で斬り殺してたらハイに成っちゃんだよねー。次回あの時みたいなことがあったら、自分をどこかに置いていくことはしないようにしないと。


「そのことは言わないでください。えへへ」


 和気あいあいとは言わないまでも、気持ちよく昼食を終えた。


 しばらく休憩したわたしは、部屋に戻って防具に着替え、再度中庭に出て素振りを始めた。


『胡蝶の舞』もちゃんと思い出せた。キッチリ覚えたからもう忘れることはない。ハズ。


『胡蝶の舞』の動きはあくまで基本動作なので、実戦では相手の動きに合わせて変化させる必要がある。


 わたしはエア対戦相手を頭の中で描きながら、『胡蝶の舞』からの変化がスムーズになるよう何度も何度も練習を重ねた。


『剣術3の熟練度が規定値に達し、剣術3は剣術4にレベルアップしました』


 すごい勢いで剣術の経験値が溜まっていっている。


 SSポイントが今のところ8あるはずなので、剣術や弓術をさらに上の水準に持っていくために基礎ステータスを上げてやるか。スピードと巧みさにそれぞれ1ポイント振ってやれば相当のものになるはずだ。


『SSポイントをスピードと巧みさにそれぞれ1ポイントずつ割り振って』


 頭の中で考えたら、


『スピードと巧みさにそれぞれ1SSポイントを割り振ります』と、システム音が返ってきた。


 ステータスを確認するとSSポイントが二つ減って、ちゃんとスピードと巧みさがそれぞれ10ポイント増えていた。


<ステータス>

レベル9

SS=6

力:17

知力:13

精神力:12

スピード:22

巧みさ:25

体力:23


HP=230

MP=130

スタミナ=230




 初めてSSポイントを使ったけれど悔いはない! ようにしたいよね。


 しかし、こうやって見ると、知力と精神力の数字がちょっとわびしいような。頭を使っていればレベルアップ時に知力は上がるんだろうと思うけど、精神力はどうすれば上がるんだろう?


 精神力も元から比べると2ポイント上がっているから何かをすれば上がると思うけど何をすればいいのか思いつかない。精神力はたしかダメージ耐性だったはずだから、本当の意味で痛い目にあえばおそらく上がるはず。そこまでして鍛えたくはない。



 剣のレベルが4まで上がったし、ステータスも大幅アップしたので体を慣らす意味で『胡蝶の舞(すぶり)』を続けるとしよう。


 それからわたしは1時間ほどムラサメ丸を振り回し乱舞していた。ムラサメ丸が空を切る音が心地よい。



 わたしが乱舞しているターナー伯爵の王都邸の中には四隅に木が植えられて、木陰を作っている。中庭の真ん中には石の像が立っている。石の像はおそらくガーゴイルだ。見たことないけど。


 わたしはそのガーゴイルを敵モンスターに見立ててさらに激しくムラサメ丸を振り回し乱舞した。そしてわたしはその時のノリで、


「真空切り、ざん!」とか口にして、5メートルほど先に立っていたガーゴイル像に向かってムラサメ丸を振り抜いた。


 何がどうなってこうなってしまったのか見当もつかないんだけど、ガーゴイル像の頭が芝の生える中庭の地面に転がってしまった。そのときわたしの頭の中にまたシステム音が響いた。


『アクティブスキル、剣技「真空切り」を取得しました』


 やっぱりわたしがガーゴイルを首チョッパしたんだ。わたしは大きな犠牲を払ってスキルを得た。大きな犠牲の持ち主に謝らなければいけないんだけど、ここは王都だしー。ターナー伯爵はブレスカだしー。ゲランさんがわたしを怒るとも思えないしー。


 なんとなく自己完結的に安心したものの、地面に転がったガーゴイルの頭を放っておくわけにもいかないので、石像の足元にちゃんと立てておいた。こうして見ると、デュラハンぽくて逆にカッコいいカモ?


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(49パーセント)

識別2(39パーセント)

言語理解2(36パーセント)

気配察知1(42パーセント)

スニーク1(33パーセント)

弓術2(28パーセント)

剣術4(26パーセント)


<アクティブスキル>

生活魔法1(12パーセント)

剣技『真空切り』


 真空切りの有効範囲は今のところ不明だが、弓を使わなくても遠距離攻撃ができるようになった。わたしはどこに向かって成長していくのか今のところ剣士まっしぐらなんだけど。いいのかな?


 まあ、わたしの場合、生活魔法戦士くらいには成れても本物の魔法戦士には成れそうにない。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界ものの醍醐味といえばステ振り!ようやく主人公が自身の成長を意識してく部分が読んでて楽しいです。 流され系に見えますが、(分かりやすい敵以外)周囲が良い人ばかりに見えるのは安心感有りま…
[一言] 真空切りを素手でもできればどこぞの剣聖だなww
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