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第169話 プリフディナス11、7年、再会、そして……。

これにて明日香編も完結し『生きてくだけで~』完結します。最後までよろしくお願いします。


 わたしがこの世界、ガーディアに来て7年経っていた。プリフディナスは順調に発展して人口は海外派遣組も加えて65万を超えた。


 以前話に出ていたドライグ王国の魔族調査隊に王宮内の工作員を通じてジゼロンが応募した。試験は体力測定のようなものでリュックを背負って2時間ほど走っただけだったらしい。エンシャント・ゴールドドラゴンがリュックを背負って2時間も走っているところを想像したらおかしくなっちゃった。


 当たり前だけどジゼロンは試験に合格した。それで3週間ほどの事前キャンプに参加することになった。キャンプ内容は、キャンプ地でパンだけ支給され、それ以外は各自でキャンプ地周辺の山野を巡って食べ物を調達するといった一種のサバイバルゲームだったらしい。


 キャンプに参加した調査隊のメンバーは隊長、ジゼロン、若い男性が1人に、若い女性が2人だったところ、キャンプ終盤に若い女性が1人メンバーに加わったようだ。ジゼロンは隊長から調査隊のスケジュールを聞いていた関係でいつ離脱してもよかったため、おそらく最後のメンバーになるであろうその女性が加わったあと離脱したそうだ。その際残った5名でオーガ1匹もたおせないようなら全く見込みがないので、転移魔法陣をキャンプ近くに置きそこでオーガを召喚して放ったところ、放ったオーガは簡単にたおされてしまったうえ、転移魔法陣も破壊されたとのこと。思っていた以上に調査隊のメンバーの能力が高いことが分かった。


 ジゼロンはそこまでキャンプに付き合ってから調査隊から完全に離脱した。


 プリフディナスに帰ったジゼロンは調査隊が上陸するのを待ち受けることにした。具体的には、調査隊がこのウニス・ウニグ島へ上陸してからの経路上にモンスター用の召喚魔法陣を設置していった。基本的に毎夜襲撃するという。ちょっとやり過ぎかと思ったけれどわたしは何も言わなかった。



 それから2週間ほどして、調査隊がウニス・ウニグ島に上陸したとジゼロンから報告があった。


 上陸初日から5夜連続でモンスターを放って調査隊を襲撃したそうだけど、調査隊はそのことごとくを撃退したとのこと。ジゼロンがどういったモンスターを使ったのか聞いていないけど、ジゼロン自身驚いていたから人族を代表しているというべき調査隊の実力は本物だ。という結論になった。


「ジゼロン。このまま放っておいても調査隊はプリフディナスに到着すると思うから、彼らを迎えに行ってこの宮殿で饗応しましょう。そしてこのプリフディナスを案内してわれわれ魔族の文明に触れさせて送り帰せばいいんじゃない。

 おそらく彼らはわたしたちとの戦争など無理と諦め実力を養う方針を採用するんじゃないかな」


「陛下のおっしゃる通りだと思います。

 わたしが適当な場所で彼らを迎え、玉座の間に連れてまいります」


「ジゼロン、そうしてちょうだい」



 数日後。調査隊が外周山脈の外側のふもとにたどり着いたとジゼロンが報告してきた。翌日の午前中に外周山脈を横断するトンネルを通って外周山脈の内側に到達すると思うのでそこで待ち受けて玉座の間に転移で連れてくると言う。



 翌日。ジゼロンが調査隊を迎えに行ったので、わたしはリリーム以下の大臣やその他の官僚を従えて玉座の間で彼らの到着を待った。


 現在の玉座は2代目の玉座で、妙な浮き彫りが施されていないシンプルな椅子だ。その分座り心地もいい。


 15分ほど何もすることなく玉座に座っていたら、部屋の真ん中の転移魔法陣が一瞬赤く光った。そこにはジゼロンのほか革鎧を着た5名の人族が立っていた。転移がめずらしかったのかここがめずらしかったのか5人とも部屋の中を見回している。5名の中で4人はリュックを背負っていたけど1人だけリュックを背負っていない女性がいた。ジゼロンやリリームのようにアイテムボックスの能力を持っているのかもしれない。


 ジゼロンが転移魔法陣からわたしの前まで歩いてきて、


「陛下、みなさんをお連れしました」と、報告し、玉座に座るわたしの隣りに立った。


 あいさつは基本なのでわたしから調査団に声をかけておいた。


「わたしはプリフディナスの女王アースカ。

 みなさん、プリフディナスにようこそ」


 あれ?


「みなさんの実力はモンスターをたおされたことで十分証明されました」


 一人だけリュックを背負っていない女の子、あれ? なんだろ?


「人族のみなさんにこのプリフディナスに立ち入ってもらいたくなかったためモンスターを向かわせたわけですが、みなさんがことごとく退けたため考えを変えてみなさんをお招きすることにしました。モンスターも結構コストがかかるものですしね」


「われわれの国にモンスターを送ったのはあなたですか?」


 調査隊の隊長らしき禿げ頭のおじさんがわたしにたずねた。


「その通りです」


「それはなぜ?」


 そこでわたしは包み隠さず理由を話した。隊長はわたしの話を理解してくれたようだ。そしたら例の女の子がわたしに質問した。


「魔族は人族を征服するとかそういった意志を持ってるんじゃないですか?」


 もちろんそんなことはないので否定しておいた。この女の子の声。ちょっと。


「もしかして?」


「もしかして?」


「あなた、すごく若く見えるけど静香?」


「明日香なの?」


「あっ!」


「あっ!」






 あれから10年。人族の各国との交易も順調で定期船も就航している。そうそう、あのダンジョンだけど、山肌に空いていた入り口は知らぬ間になくなっていたそうだ。しかも、第3層のヒールポーションの湧き出ている部屋だけ転移で跳んでいけたそうで、跳んだ先にはどこにも扉もなかったそうだ。実質的にあのダンジョンは1部屋だけのダンジョンになったようだ。それでよかったのだろう。



 各地に散っていた魔族たちが魔族の国が故地にできたといううわさを聞き付けたようで世界中から少しずつ集まってきた。プリフディナスの人口は500万を超えている。


 プリフディナスでは8年前からラジオ放送を開始しており、今年中にはモノクロだけどテレビの試験放送も始まるという。技術的な問題よりも放送内容なんだよね。


 ラジオ番組も音楽と技術関連のニュースとラジオ体操くらい。テレビについても具体的に上がっている番組内容は今のところテレビ体操しかない。そこで思いついたのが、世界を旅してその景色を放送することだ。世界を旅すると言っても馬車でてくてく進んでいるのでは番組にならないので、島の天然ガス田から採集したヘリウムガスを充てんした大型飛行船を番組用に建造することにした。



 静香たち(・・)を交えての飛行船の計画会議時、わたしは撮影機材や撮影クルーを乗せる関係でペイロードに余裕を持たせるため、動力系統の代わりにジゼロンにベルトを付けて飛行船を引かせよう。と、提案したんだけど、静香たちがジゼロンが可哀そうだから止めようよ。と、言うものだから普通のプロペラで進む普通の飛行船になっちゃった。



 それから4カ月ほどで計画通り飛行船は普通に完成し、撮影機材と撮影クルー、そしてレポーターを乗せてプリフディナスの造船所兼飛行船建造所から飛び立っていった。


 番組のレポーターは本人たちの強い希望で静香たち3人。宮殿や補給基地に直結した転移魔法陣を飛行船の中に複数設置しているので補給はもちろん上下船も飛行中に可能だ。


 建造に関わった研究所の技師たちによれば、3年から5年後と考えられるエンジン交換まで飛行を続けられるということだった。番組は半年の予定だったけど、他に放送するものもないだろうということでもう半年分のロケをしちゃった。今では静香たち3人はプリフディナスでの人気を誇るタレントになっていて、ドラマ制作の話も出ている。


 プリフディナスでの人気を誇るタレントといってもそもそもタレント総数が3人だし、ドラマの話も出ているのは出ているけど、静香たちが勝手にそう言ってるだけともいえる。それくらい、別にいいけどね。



 今のわたしは長期休暇中で、ガーディア一周の遊覧飛行をしながらドラマの脚本を書いている静香たち(・・)と楽しんでいる。



(明日香編、完、生きてくだけで特になにもしなくていいと神さまに言われたので、そのつもりで異世界を満喫します、完)




エレナちゃんと、ベネット姉弟のエピソードを取りこぼしてしまいました。申し訳ありません。


フォロー、☆、コメント、レビュー、ギフト等、みなさんありがとうございました。

また、シズカの素晴らしい挿絵を描いていただいたイモの子さん(https://www.pixiv.net/users/94860326)ありがとうございました。


作中登場した人形ひとがたは地球の管理者のつもりです。現在ちょっとずつ書いている(仮)『山田太郎、異世界を闊歩かっぽする』の冒頭出てくる親切な地球の管理者と同じ存在を想定しています。


人魔大戦ですが、人族と魔族が適度に消耗し続けることで魔力の循環が改善すると考えたアドミナが仕掛けたものです。結果として、魔族はほぼ滅んでしまい魔力の循環はさらに悪化してしまいました。


近況ノートに書いたかもしれませんが、今回の地名の多くはウェールズ語からとりました。ちょっと変わったモンスターの名まえも同様です。なお読みは適当です。


国名ザッド・ドライグ(ウェールズ語で屠龍)通常ドライグ


王都ディナス・イ・ブロデウ(ウェールズ語で花の都) 通常ディナス


フォルジ(ウェールズ語で訓練する)


ウニス・ウニグ(ウェールズ語で孤島)


プリフディナス 魔族の都:(ウェールズ語で都)


カディフ:ウェールズのカーディフのこと


ゴルレウィン:(ウェールズ語で西)


モニス・イー・エル:(ウェールズ語で高い山)

巨大蜘蛛コリン:蜘蛛


巨大亀クルバン:カメ


宣伝:

ここまでお読みの方で未読の方は少ないかもしれませんが、未読の方はぜひ。

現代ファンタジー『岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する』

https://ncode.syosetu.com/n0114hv/


ダークファンタジー『影の御子』https://ncode.syosetu.com/n7742im/

2023年11月16日より投稿開始しました。よろしくお願いします。


シリーズもの

『常闇の女神』

https://ncode.syosetu.com/s6906g/


『宇宙船をもらった男』

https://ncode.syosetu.com/s6907g/


『堀口明日香シリーズ』

https://ncode.syosetu.com/s3330f/


単体長編

異世界ファンタジー『ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏はんぺい-』

https://ncode.syosetu.com/n1501hd/


SF『宇宙のスカイスフィア』:未完

https://ncode.syosetu.com/n5730hv/


SF『銀河をこの手に! 改 -試製事象蓋然性演算装置X-PC17-』

https://ncode.syosetu.com/n1044ii/


現代ファンタジー『異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!』

https://ncode.syosetu.com/n0154gb/





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[良い点] 毎日の更新ありがとうございました~ 新作も楽しみに待ってます
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