第138話 お宝
お宝探しのために第2層に戻ったわたしたちは、ナキアちゃんを先頭に順に扉を開けていき、中にいたモンスターをたおして魔石を回収した後、現れた宝箱からお宝をゲットしていった。第2層には木箱の宝箱しかないのかと思っていたら、今度は木箱の宝箱は一つもなくて、銀の宝箱と金の宝箱があった。ちなみに金の宝箱も銀の宝箱も宝箱の本体はなぜかアイテムボックスの中に収納できなかったのでその場に置いてきた。
主なお宝:
金の宝箱
エリクシール、3個セット
全てを癒す
鑑定結果はただそれだけだった。そういうものなんでしょ。これが2回。
ライトニングロッド(金?と銀?で出来た50センチくらいの丸い棒。太さはリレーのバトンくらいなので持ちやすい)
先端部を目標に向けて振ると電撃を目標に対して放つ。遠距離攻撃手段がなかったキアリーちゃんに。見た目は銀色のバトン。バトンの両端は金色なのでどっちからでも電撃は出るのだろう。キアリーちゃんが一度壁に向かって試し撃ちしたら壁に大穴が空いた。もう片方からでも同じように電撃が出て壁に大穴が空いた。
アイテムボックスのスキルブック
文字通りアイテムボックススキルが手に入る。
ちょうど2つ手に入ったので、ナキアちゃんとキアリーちゃんに。
容量は二人とも100キロくらいだった。アイテムボックスの中に預かっていた二人の荷物を返しておいた。
銀の宝箱
パワーグラブ(謎の黒革製の手袋)
力+20 キアリーちゃんに。
祈りのヘルメット(謎の白革製のハーフヘルメット)
祈りが強化される。
当然ナキアちゃんに。ナキアちゃんの祈りがどの程度強化されるのか試していないけど、とんでもない威力がありそうだ。おそらくナキアちゃんの『命令』は祈りの特殊な物だと思うので『命令』も強化されると思う。
メジャーシールドのスキルブック
パーティー全員にシールド効果。
ナキアちゃんに。
ブラックシールド(謎の黒い金属でできたカイトシールド)
不壊。シールドバッシュ効果50パーセントアップ。
キアリーちゃんに。キアリーちゃんの今までの盾はわたしがアイテムボックスの中に預かった。
インスタントデスアロー
あらゆる防御を無視して矢羽まで矢が貫通する。5割の確率で即死が発動する。矢じりに返しが付いていないため引き抜くことは比較的たやすい。
これはわたしが貰った。20本セットだった。わたしの即死スキルと幸運度から言って、相手がボスキャラでなければ、7、8割の確率で即死が発動するのでは?
モンスタースレイヤー(謎の黒い金属でできた長剣)
不壊。斬撃時、打撃ダメージを同時に与える。
キアリーちゃん。斬撃の効かないスライムや泥人形などにも効果があるはず。
キアリーちゃんが全体的に黒くなってしまった。今キアリーちゃんが着ている革鎧とブーツははこげ茶色なので黒でそろえた方がカッコいいかもしれない。
「大収穫だったのじゃ。腹も減ってきたところじゃし、お宝探しはこの辺にして、そろそろ野営の準備をしたほうがよいのではないか?」
「そうだね。料理は外で作って、あそこの泉の前で野営しようよ」
「それもそうじゃな」
「面白そうだね」
わたしたちは一度亀裂前の空き地に戻って夕食の準備を始めた。
アイテムボックスの中には血抜きをしていないモンスターがたくさん入っているので明るいうちに少しでも血抜きをしておきたい。
ナキアちゃんとキアリーちゃんがかまどを作って燃料の薪を拾いに行っている間、わたしは近くの立ち木の枝に首を切り取ったモンスターの後ろ足にロープをかけて吊るしておいた。
その後、野菜と肉を切って下ごしらえしてから、かまどに火を入れて料理を始めた。
今日のメインは肉マシマシの野菜炒めだ。大きなフライパンに肉を入れて火を通し、野菜を加えて塩、コショウを振って軽く炒めたらでき上り。
それに生で食べられる葉野菜に生ハムを添えて、油と酢とコショウと砂糖、それに玉ねぎのみじん切りを入れてかき混ぜて作ったなんちゃってドレッシングをかけたサラダを作ってみた。
でき上った料理はいったんアイテムボックスにしまって、血抜きがいい線終わったモンスターもアイテムボックスにしまい泉のある石室に3人で跳んで行った。
床の上に皿に盛った料理を並べていき、コップの中には壁から流れ出ているヒールポーションを入れて夕食を始めた。もちろん主食はナキアちゃんに柔らかくしてもらった丸パンだ。
「今日もおいしそうなのじゃ」
「そうだね。でもヒールポーションで薄めたお酒も楽しみだね」
ペイルレディ号でディナス港への帰りの航海の途中、王都に転移して補充した濃い酒もまだまだあるのでだいじょうぶだ。
「ヒールポーションを水代わりに飲んでいるけど、ヒールポーションて食事に合うね」
わたしもライトノベルやweb小説をよく読んでいたんだけど、食事中の水代わりにヒールポーションを飲んで食事に合うという会話は目にしたことがない。ちょっと新鮮な響きがあるようなないような。
食事を終えたわたしたちは、片付けを済ませて、さっそくヒールポーション割の濃い酒を飲んでみた。ヒールポーションは壁から流れ出ているところをヤカンにとって、ナキアちゃんに凍らないギリギリのところまで冷やしてもらった。更に桶の中に半分くらいまでウォーターで作った水を入れてその水は凍らせてもらい、その上にヒールポーション入りのヤカンを置いた。これでヒールポーションの温度をほぼ零度に保てるのだ。
コップの3分の1まで濃い酒を瓶から注ぎ、ヒールポーションをヤカンからコップの3分の2の位置まで注いでみた。ちょっと濃い感じもするけど、これくらい誤差だよね。
今日のつまみはチーズと生ハム、それにナッツ類にした。
「「かんぱーい!」」
うまい!
難点が一つだけ。濃さはちょうどよかったんだけど、常温のお酒と低温のヒールポーションを1体1で混ぜたら温くなってしまった。やはり氷を入れた方が良さそうだったので、鍋の中にヒールポーションを入れ中身を凍らせてもらい、それをボーナス矢でカチ割ってコップに入れてみた。
うまい!
二人のコップにも氷を入れてあげた。
「これは、たまらないおいしさなのじゃ」
「おいしすぎる!
なんだか体の芯から力が沸き上がってくるような。これってちょっと危ないかも?」
氷はコップの中に残ってるけど水気がすぐに空になる状態だ。
お酒を作っていくのも今日はいつも以上に忙しい。それに今日に限ってつまみの減りが明らかに遅い。転移があるからここにはいつでも来られるからいいというか。これから毎日ここで酒盛りをしそうだ。
あっ! いいことを思いついた。
ここをわたしたち専用の部屋にしてしまえばいいんだ。となると、扉が勝手に開かないように扉の前に重い物を置けばいいか。わたしが持ってる今一番重たいものは幌馬車だから、幌馬車を横向きに扉の前に置いておけばちょっとやそっとでは扉は開かないはず。
「それは良い考えなのじゃ」
「寝る時は馬車の中で寝られるしね」
さっそく幌馬車を扉の前に置いた。邪魔と言えば邪魔だけど、3人で小さな池があるだけの10メートル四方の石室を占領している中での馬車なのでそれほど邪魔じゃなかった。
「まだまだお宝はありそうだけど、そろそろカディフにいかない?」
「わらわたちはカディフに向かう途中だったことをすっかり忘れておったのじゃ」
「わたしも忘れてた」
「明日、シルバーとウーマを引き取ったらカディフに向かおうよ」
「そうじゃな。
カディフに一度行けば、シズカちゃんはいつでもカディフに跳んで行けるようになるんじゃろうし、ここにもいつでも来ることができるわけじゃしな」
「そうだね」
そう言うことで、明日は王都の牧場で預かってもらっているシルバーとウーマを引き取ってからカディフに向かうことになった。カディフってどんなところかなー?
何の準備だかわかりませんが、ダンジョンで準備が整った一行。




