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第137話 白い玉と人形(ひとがた)。5本の柱


「これはいったい何なのじゃろ?」


「不思議だね。そこにあるように見えるけど、よく見ると少し透けているし」


 ガーディアの立体映像を見上げながらナキアちゃんとキアリーちゃん。


「わたしたちが住んでいるこの世界は実は丸い玉なんだよ」


「シズカちゃん、いきなりどうしたのじゃ? あの部屋から流れ出ていた水はヒールポーションではなかったのか?」


「わたしの頭、ちゃんとしてだいじょうぶだから」



 わたしはビー玉くらいの魔石をアイテムボックスから一つ取り出して、


「この玉の上にもし立つことができたら、丸みがすごく急だから危ないよね」


「立つことができればそう思うかもしれぬな」


 次にわたしは飛竜の魔石を取り出して、


「この上に立つことができたとして、さっきより丸みが緩くなって急じゃないよね」


「そうじゃな」「うん」


 わたしは立体映像を指さして、


「もし、そこに見える玉の上に立つことができたら、もっと急じゃなくなって丸みが平たく見えてくるんじゃない?」


「そうじゃな」


「その玉の上に自分が立っていることを想像してみて」


「うん。想像したのじゃ」


「その玉がだんだん大きくなってくると丸みがどんどん緩くなってますます平たくなるでしょ? それがもっと大きくなると本当に平べったく見えてくると思わない?」


「確かに。玉の上にいるのか地面の上にいるのか区別は出来んの」


「でしょ。実はわたしたちはものすごく大きな玉の上にいるの。わたしたちの世界はその玉の上に広がった世界なの」


「玉の上に立っているのは分かったのじゃが、玉の端に立っておる者もおるのじゃろ? その者は下にずり落ちていくのではないじゃろか?」


「下というのは、実はその玉の中心なんだよ。上というのはその逆。地面があるからわたしたちは玉の中心に向かって落ちていかないけど、何もなければみんな玉の中心に落ちていくんだよ」


「なんと!」


 さすがはナキアちゃん。簡単に理解してくれたようだ。


「わたしの目からはうろこがまだ取れない」


 キアリーちゃんには少し難しかったのかもしれないけれどそのうち分かるようになると思う。


「で、そこに見える玉なんだけど、この世界を表しているんだよ」


「丸い地図ということじゃな」


「そういうこと」


「この玉は欠けておるところがだいぶあるのじゃな。ということはわらわたちの世界には欠けたところがある?」


「そこが問題らしいけど、わたしたちには関係ないよ」


「それもそうじゃな。

 それで、アッチの裸の女が寝ておった筒は何なんじゃろ?」


「あれは、中に入っている女の子たちがこの世界がバラバラにならないように繋ぎとめているんだって」


「なんと!

 それはそうと、シズカちゃんはどうしてそんなことを知っておるのじゃ?」


「実はさっきここを作った人というか神さまみたいな存在に会って教えてもらったの」


「さっきからシズカちゃんはずっとここにいたではないか?」


「ホントに一瞬の間にいろんなことを教えてもらったんだよ」


「相手が神ならそういったことも容易にできるのじゃろうな」


「うん。

 ここにお宝があるのかどうか聞きそびれたけど、一度岩棚の入り口の部屋に戻って探索の続きをしない?」


「そうじゃな。

 ここには目ぼしいものはなさそうじゃし、裸の女はどうも気味悪いし」


「そうしよ」



 わたしは二人を連れて岩棚の入り口、第2層への階段がある部屋に転移した。


 階段から見て左と真ん中の扉は開いてみているので残った右側の扉をナキアちゃんが開いた。レーダーマップには何も現れなかったのでモンスターもいなければ罠もないはずだ。


 この部屋もいつもと同じ大きさの石室だった。違ったところは部屋の中に円形の石台があったこと。石台の上にはボーリングの球くらいある大きな白い玉が3つ乗っかっていた。


 白い玉のことを鑑定してみたけど、名まえすら分からなかった。そうなってくるとある意味すごいものかもしれない。


「今までだったら五芒星の頂点に5つの魔石。これは模様も何もない台の上に3つ乗っかっていて大きくて白い。

 何だと思う?」


「シズカちゃんが分からぬものをわらわが分かるわけないのじゃ」


「ナキアちゃんと同じ」


 丸投げされちゃったけど、全然見当もつかない。


「本当に分からない。これ持って帰ってもいいのかな?」


「置いてあるのじゃから、持って帰っても良いじゃろ」


「そう思う」


「じゃあ、アイテムボックスの中に入れておくね」


 白い玉に手を当てて、一つずつアイテムボックスの中にしまったら、台座が床に沈んでいった。


「取って正解だったんだよね?」


「きっとそうなのじゃ」


「そのうち何かの役に立つんじゃないかな?」


 正解だったということはきっとそういうことなのだろう。


「この層はもう行くところがなくなったから上の層に戻って宝探しする?」


「そうじゃな」


「そうしよ」


 ナキアちゃん、キアリーちゃん、わたしの順で白い玉の部屋を出ていったんだけど、レーダーマップに黄色の点が現れた。わたしのすぐ後ろ、石の台座のあった辺りだ。振り返ったらあのぼんやりとした人形ひとがたが立っていた。


 前回同様人形が笑ったと思ったら消えてしまった。


 このことは前をいくナキアちゃんたちには話さなかった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 シズカたちが第2層に戻って宝探しを再開したころ。


 西の草原地帯を挟んでグラッド王国の西の国、ゴルレウィン。


 ゴルレウィンは山岳地帯が国土の2分の1を占めている。


 その山岳地帯の地中に広大かつ巨大な空洞があった。空洞の中にはわずかな光源があり、完全な暗闇ではないため中の様子をうかがい知ることができる。



 空洞の中央部に漆黒の石でできた円盤が5個、一辺が20メートルほどの正5角形の頂点をなすように地中からせり上がり石台となった。


 石台の上面には五芒星が描かれており5つの頂点にはいつのまにか青い珠(・・・)が置かれていた。


 描かれた5つの五芒星が赤く輝き始め、5つの五芒星のそれぞれの真ん中にゴブリンが実体化した。5体のゴブリンが五芒星から外に出ると、次のゴブリンが実体化し、それが数時間続いた。その後は、ホブゴブリン、そしてオーガが実体化し始めた。



 モンスターたちの実体化が一段落したところで、5つの石台は地中から再度せり上がり始め、とうとう高さ40メートルほどの漆黒の5本の柱になった。石台の上に並べられていた青い珠はいつの間にか黒くなっていた。


 それと同時に、山岳地帯の中心部を震源とした地震が発生し山岳地帯の各所の岩肌に亀裂が走った。巨大なものは幅20メートルにも高さ50メートルにも及ぶ亀裂で、山体の表面から山体中央に向けて亀裂は深く地下空洞まで続いていた。


 それまで大空洞の中でひしめいてたモンスターたちはその亀裂に入っていき外の世界に向かっていった。


 モンスターたちが空洞の中から一匹もいなくなったあと、5本の柱の先端が青白く輝き始めた。


 その柱の輝く先端から青白い稲妻が5本の柱が囲む空間に放たれ、そこに何かが現れ始めた。


 稲妻は放たれ続け、その何かは意味のある形を取り始めた。柱の先端が光るのをやめて暗くなり蒼白い稲妻が止んだとき、5本の柱が囲む空間には一つ目の巨人が立っていた。

 

 巨人はゆっくり移動を始め、やがて外部に通じる一番大きな亀裂の中に入っていった。


 その後5本の柱は地中に沈みはじめ、最初の状態である上部をわずかに残したところで沈下が止んだ。




『5本の柱』からシズカ編エンディングになります。よろしくお願いします。シズカ編に続き明日香が静香と出会うまでを描く明日香編16話で完結予定。


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