第133話 ダンジョン10、第2層6
ナキアちゃんがシールド状態になったら体全体が青白く光り始めた。
「なんだかすごそう。ナキアちゃんに向かって何か投げてみようか。
鋳物の円盤をトスするくらいで軽くね」
「シズカちゃん、ちゃんと手加減するのじゃぞ」
「だいじょうぶだって」
わたしはナキアちゃんに向かって軽く例の鋳物製の円盤を投げた。
円盤はナキアちゃんに当たることなくその手前で床に落ちた。
「飛び道具が防げるなら剣もだいじょうぶそうだよね。
鞘で突いてみてもいいかな?」
「軽くじゃぞ」
わたしはアイテムボックスの中からムラサメ丸の鞘だけ取り出して、鞘の先でナキアちゃんを突いてみた。ナキアちゃんの手前でブレーキが急にかかり、押すと少しだけ前に鞘が進むけどそれだけでそこから先に鞘は進まなかった。
「魔法攻撃は分からないけど、他の攻撃は防げそうだね。
ところで、このシールドはいつまで続くんだろう?」
「わらわは一生このままなんじゃろか?」
「ナキアちゃん、シールド止め。とか考えるだけで消えると思うよ」とキアリーちゃん。
ナキアちゃんを包んでいた青白い光が消えた。
「ふー。よかったのじゃ」
「あとは魔法だね。ナキアちゃん以外魔法は使えないから、試せないけどきっと魔法にも効果あると思う。
そうだ! いいこと思いついた。
ファイヤーでナキアちゃんをあぶってみればいいんだ」
「シズカちゃんのファイヤー、威力あったよね」
「かなり強力な火が出せるよ」
「火は小さくても魔法に効くかどうか分かるじゃろ?」
「うん。でも大きくてもだいじょうぶと思うよ。
ナキアちゃん、またシールドやってくれる」
ナキアちゃんが青白く光り始めたところでナキアちゃんの革鎧に指先のファイヤーの火を近づけた。
ファイヤーの炎は革鎧の手前で広がってしまって革鎧をあぶることはできなかった。試しにナキアちゃんの革鎧を触っても熱くなっていなかった。
「やっぱり魔法耐性もあった」
これでナキアちゃんは圧倒的に固くなった。
「あのファイヤーボールと組み合わせたら最強じゃない? それにこの魔法はずーと続いてるから魔法自身にも祈りが利きそうだし」
「祈りは確かに利きそうじゃ。そうなるとホントにこのわらわが最強になってしまう。聖女が最強で良いのじゃろうか?」
「だってナキアちゃんは大魔導聖女さまだから」
「そうじゃった、そうじゃった」
ナキアちゃんが完全体の大魔導聖女さまになったところで、次の扉を開こうと元の部屋に戻って残った扉を開けることにした。
今回のフォーメーションはシールド状態のナキアちゃんが真ん中で、ナキアちゃんの左後ろにキアリーちゃん、右後ろにわたし。
「それでは、扉を開けるのじゃ」
ナキアちゃんが扉を開けると同時にレーダーマップに赤い点が現れた。部屋はいつもの正方形の石室で今の扉しかない行き止まり。石室の真ん中には大トカゲがいた。
トカゲが口を開けてナキアちゃん目がけて火の玉を吐き出した。わたしが前に出て火の玉をムラサメ丸で切ることもできたけど、ナキアちゃんのシールドを信頼してそのままにしておいた。キアリーちゃんも様子を見たようでライトニングムーブを使っていない。
ボン!
ナキアちゃんの目の前で火の玉が爆発して熱い空気がわたしにも吹いてきたけどそれだけだった。そして、そのころにはキアリーちゃんがトカゲの首を切り落としていた。
「少し眩しかっただけで何ともなかったのじゃ」
「もうこれで魔法にも安心だね。
魔石を取ってくる」
わたしは首なしトカゲをひっくり返して胸にナイフを入れ中から魔石を取り出し、トカゲの胴体だけはアイテムボックスにしまっておいた。予想通り、魔石を取り出したところで今までと同じ木製の宝箱が現れた。レーダーマップを見たらこの宝箱にも罠がないみたいだった。
「罠はないみたいだよ」
「今度は何が出てくるのじゃろ?」
万が一、罠があってそれが作動したとしてもシールド状態のナキアちゃんならノーダメージだろうということで、これからはナキアちゃんが宝箱を開く担当者になった。
ナキアちゃんが手を触れると今までと同じように宝箱の蓋が勝手に開いた。
宝箱の中にあったのは茶色の革装の本だった。
さっそく鑑定。
<鑑定>
魔法スキルブック。
表紙を開くとライトの魔法を習得する。
「表紙を開いたらライトの魔法を習得できるみたい」
「ライトというと明かりの魔法じゃな?」
「そう思う。ここちょっと暗いからちょうどよかったね」
「こういうのは大魔導聖女さまだよね」
ということでナキアちゃんが魔法の本の表紙を開いた。前回同様、本は一瞬七色に輝いてすぐに跡形もなく消えてしまった。
「どう?」
「ライトの魔法が使えるみたいじゃ。ほれ」
ナキアちゃんの斜め上に明るい光が輝いた。眩しいくらいに明るい。
「明かりの場所は変えられるかな? ちょっと眩しいからもう少し上の方がいいんじゃない?」
「やってみるのじゃ」
石室の天井近くまで明かりが上った。これならそれほど眩しくない。
「これならいいね。
夢中になって宝探ししてたけど、そろそろ昼にしようよ。いったん外に出た方がいいよね?」
「そうじゃな」
「うん」
わたしたちは午前中のダンジョン探索をそこまでで終えて、いったんダンジョンの入り口前の空き地に転移で戻った。
「外に出ると、何だかホッとするのじゃ」
「ナキアちゃん、シールドはいいけどライトは消した方がいいよ」
「そうじゃった」
ライトは消えたけどシールドはそのままだったのでナキアちゃんは青白く光ったままだ。本人が気に入ってるならいいけど、魔力とかそういったものの関係で持続時間とか制限があるかもしれないからちょうどテストになっていいかも。
「何食べようかな?」
「パンに肉とか挟むのが食べたいのじゃ」
「了解。じゃあハムとチーズで作ろうか」
わたしは生ハムとチーズの8分の1の塊をアイテムボックスからとり出してまな板の上に乗せてスライスしていき、ナキアちゃんに柔らかくしてもらったパンにはさんでサンドイッチを作った。一人二つで6個作った。
飲み物はいつも通りのお茶。
「食べようか」
3人で車座になって地面の上に座ってサンドイッチを頬ばる。
「おいしいね」
「おいしいのじゃ」
「ほんと」
「ダンジョンの中は文字通りお宝の宝庫なのじゃ。
他所の連中がやってくる前にわらわたちでお宝を根こそぎにしてしまうのじゃ」
「午後からもがんばろう」
「「おう!」」




