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第130話 ダンジョン7、第2層3


 火吹きトカゲから魔石を取ったあと、死骸ごとアイテムボックスに収納しておいた。火吹きトカゲの見た目は大トカゲというよりワニっぽい。味の方はどうなんだろ? 最近食べることと飲むことしか考えていないような。


 今いる石室にはわたしたちが入ってきた扉の正面にも扉があったので、その扉を開けることにした。床に広がった火吹きトカゲの体液を回り込んで扉の前に立った。


「また何か飛んでくるかもしれないから、ナキアちゃんとキアリーちゃんは壁の陰に隠れててくれる?」


「了解」「了解なのじゃ」


「1、2、3で開けるね。1、2、3」


 扉を押し開けたら、正面に大蜘蛛がいた。大蜘蛛と言っても巨大蜘蛛コリンのような怪物バケモノではなく足を広げて1メートルくらいの蜘蛛だ。それでもそんな蜘蛛は地球にはいないはずだから十分巨大だけどね。その蜘蛛がわたしに向かって近寄ってきた。


 腰の鞘から引き抜いたムラサメ丸をそのまま片手で突き出して蜘蛛の頭を刺したらそれだけで蜘蛛は動かなくなってしまった。もちろんレーダーマップの上から赤い点は消えている。


 ムラサメ丸が突き刺さった蜘蛛の頭から青白い体液が流れ出て床の上に広がった。


 ムラサメ丸を血振りしてクリンをかけて鞘に戻し、あらためて部屋の中を見回したら、先ほどの部屋と同じ10メートル四方の石室だったけど、扉はわたしの開けた扉だけで行き止まりの部屋だった。



「なんだか雑魚ざこしか出てこないね」


「シズカちゃん。シズカちゃんだから雑魚と思うのかも知れぬが、今の蜘蛛の動きはそうとう素早かったのじゃ。

 キアリーちゃんもそう思うじゃろ?」


「うん。思う」


 戦闘モードの時と普段では時間の感覚が違うように思える。


 巨大蜘蛛コリンと違って体内が毒の塊でもないだろうと思ったわたしは、アイテムボックスからナイフを取り出して大蜘蛛の胸を背中から割いて手を突っ込んで中から魔石を取り出した。大蜘蛛の魔石はさっきの火吹きトカゲの魔石と区別できないくらいそっくりだった。この第2層のモンスターの魔石はこの大きさなのかもしれないとなんとなく思ってしまった。


「シズカちゃん。さっきまでなかったハズだけど、正面の壁の前に箱が」


 知らぬ間に壁の前に現れたのはかどを板金で補強した一辺30センチほどの四角い木の箱で、いかにもな箱だ。


「きっと宝箱だよ」


 宝箱と言えば罠がつきものだけど、レーダーマップには紫の点は映っていない。宝箱の罠もレーダーマップで識別できると信じてみよう。


「宝箱には罠が付きものなんだけど、この宝箱は罠じゃなさそうだから開けてみるね」


 わたしが宝箱の蓋がどうなっているのかよく調べようとしゃがんで手を出したら宝箱の蓋が勝手に開いた。


 宝箱の中をのぞくと、中には磨いた10円玉の色と輝きのなんの装飾もない指輪がぽつんと1つ入っていた。銅の指輪だ。何かの魔法の指輪なのか? ただの指輪なのか? 識別したところやっぱり『銅の指輪』だった。


 ただの銅の指輪だと10円の価値もなさそうな気がするけれど、それではあまりにもかわいそうなので魔法の指輪だよね。残念なことに鑑定スキルなどないのでそれがどういった指輪なのかは全然分からない。


「ただの銅の指輪じゃないと思うんだけど、どう思う?」


「見た目は安物の銅の指輪じゃな」


「だね」


 呪いとかあれば問題だけど、ナキアちゃんがいれば何とかなるかな?


「ナキアちゃんて、呪いのアイテムとかの解呪ってできる?」


「以前、呪いの壺というのを解呪できないかと持ち込まれたことがあったのじゃ。ただでもよかったのじゃが後々面倒なので金貨1枚で解呪を試してみたのじゃ。

 やってはみたものの解呪できたかどうかは自分では分からなかったのじゃ。そう言ってやったのじゃが、呪いの壺の持ち主は喜んで帰ってその後何も言ってこなんだ。きっと解呪はうまくいったのじゃと勝手に思うておるのじゃ」


「ちなみにその壺にかかっていた呪いとは?」


「持ち主が言うには、その壺を持っていると商売が繁盛すると聞いて大金を払って買ったそうなんじゃが、もともとうまくいっていなかった商売がさらに悪くなるし、大金で壺を買ったことに腹を立てた女房には逃げられるしと散々な目に遭ったそうじゃ」


「それって呪いじゃないような。

 何であれ壺を捨てればいいだけじゃなかったの?」


「わらわも本人にそう言ったのじゃが、大金を払って買ったものなので捨てるのは忍びなかったと言っておったな」


 この世界でも壺の商売があることには驚いた。不幸を呼ぶ壺か。壺を買うだけで大金が消えるわけだからそれだけでも十分不幸だよね。



 ステータスアップとスキルが増えるかも知れないのでナキアちゃんの祈りで軽い呪いなら解呪できると信じて、指輪をはめてみようと思う。


 その前に、今のステータスを確かめておかなくちゃね。


レベル76

SS=10

力:73

知力:55

精神力:48

スピード:97

巧みさ:92

体力:48


HP=480

MP=2750

スタミナ=480


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(89パーセント)

識別2(80パーセント)

言語理解2(95パーセント)

気配察知1(95パーセント)

スニーク1(48パーセント)

弓術MAX

剣術8(27パーセント)

威風(10パーセント)

即死


<アクティブスキル>

生活魔法1(43パーセント)

剣技『真空切り』

アドレナリン・ラッシュ

威圧

弓技『不射の射』

転移術


 スキルが少し伸びてた。


「わたしがこの指輪をはめて何が起こるか確かめてみるね。呪われたらナキアちゃん解呪を頼むよ」


「任せてくれとは言えぬが、やってはみるのじゃ」


 二人にことわって、銅の指輪を左手の中指にはめた。


 ブカブカだったのでこれは使えないのかと思ったら指輪が縮んだみたいでぴったりフィットした。魔法の指輪であることははっきりしたけど、このまま抜けなくなっては嫌なので指輪を抜こうとしたら簡単に抜けた。この分なら呪いはなさそうだ。


 再度左手の中指に指輪をはめてステータスを確かめた。


レベル76

SS=10

力:73

知力:55

精神力:48

スピード:97

巧みさ:97(+5)

体力:48


HP=480

MP=2750

スタミナ=480


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(89パーセント)

識別2(80パーセント)

言語理解2(95パーセント)

気配察知1(95パーセント)

スニーク1(48パーセント)

弓術MAX

剣術8(27パーセント)

威風(10パーセント)

即死


<アクティブスキル>

生活魔法1(43パーセント)

剣技『真空切り』

アドレナリン・ラッシュ

威圧

弓技『不射の射』

転移術

シールドバッシュ



 おお! 巧みさが+5された上にアクティブスキルとしてシールドバッシュが手に入ってしまった。これはキアリーちゃんに上げた方がいいな。


「武器なんかの扱いが少しうまくなったうえで、シールドバッシュってスキルが使えるようになるみたい。キアリーちゃんがはめてたらいいんじゃないかな」


「そうじゃな。ところでシールドバッシュとはどんなスキルなんじゃ?」


「ありがとう。

 シールドバッシュは盾で相手を殴りつける攻撃なんだよ」


 わたしは指輪を抜いて、キアリーちゃんに渡した。


 指輪を受け取ったキアリーちゃんがわたしと同じく左手の中指に指輪をはめた。


「あっ、指輪がピッタリ。

 シールドバッシュ、やってみるね」


 キアリーちゃんが左手に持った盾を突き出したら、


 ビシッ! 何だか凄い音が響いた。


「すごいよこれ。威力が今までと段違いみたいだよ」


「確かに、ものすごく痛そうなのじゃ」


「キアリーちゃん、こんどモンスターが出たらナキアちゃんのガード役はわたしがするからシールドバッシュスキル試そうよ」


「うん」



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