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第104話 6日目から7日目


 移動しながら巨大ミミズのことをナビちゃんに聞いたら、おそらく沼ミミズ(アブイディン)だろうということだった。


 例のごとく人魔大戦時魔族が人族の水源に放ったモンスターということだけの情報で、弱点などは分からずじまいだった。しかし、水源にモンスターとはえげつないけれど、水源に毒流すことに比べればそこまでひどい話ではないような気もほんのわずかにした。


 野営地はもしものことを考えて沼からかなり離れた位置になった。わたしは邪魔な草をムラサメ丸で薙いでやった。この日も燃料となる枯れ木は手に入らなかったので最初から炭火だ。


 今日の夕食はカメの脂を使って揚げ物をしたかったけど、ちょっと面倒だったので、初めてのガゼルの焼肉と干し魚のスープにすることにした。野菜は里イモと玉ねぎとニンジンをナキアちゃんとキアリーちゃんが近くで見つけてくれたのでちゃんとしたスープが作れそうだ。


 下ごしらえを簡単に済ませたわたしはハーネス隊長とカルヒが作ってくれた低めのかまどに木炭を入れ、上に金網を乗せて強力ファイヤーで炭に火を点けた。


 干し魚を手で折って鍋にいれ、その後水を入れてナキアちゃんに沸騰させてもらい、塩コショウをして野菜を入れた。これなら20分もかからずスープは完成する。


 その後塩コショウしたガゼルの肉を金網の上に乗っけてどんどん焼いていった。ガゼルの肉は真っ赤に近いような赤い肉で、火が通ると赤身の牛肉のような感じになった。


 焼き上がったガゼル肉を小皿に取り分けていき、みんなに配って自分も食べてみる。


 ガゼル肉は見た目通りさっぱりした牛肉という感じで癖がない。パンと一緒に食べてもおいしい。


 ガゼル肉の2巡目を配って、鍋の中の野菜を見たら火が通っていたので深皿に入れてみんなに配った。


 ……。


「今日の夕食もおいしかったのじゃー」


「ホントだよね。シズカちゃんがいてくれてよかったー」


「確かに今日の夕食もうまかった」


「うまかった」


 みんな喜んでくれた。お酒を飲んでいない関係ですっかり忘れてたんだけど、その日はデザートとして生のブドウを出した。ナキアちゃんに凍らない程度に冷やしてもらったブドウは甘味はそれほどでもなかったけど、久しぶりの生ブドウですごくおいしかった。


 ナキアちゃんとキアリーちゃんはブドウを食べながらブドウの種の飛ばしっこをしていたけど予想通りナキアちゃんが圧勝した。


 デザートを食べ終え夕食の後片付けが終わったころには日もとっぷり暮れて空には雲一つなく星が瞬いていた。


 みんな今夜もあるかもしれない襲撃に備えてヘルメットを被って毛布の上に横になっている。わたしもヘルメットを被って横になって、しばらく空の星を眺めていたら知らず知らずのうちに眠っていた。



 その夜はモンスターの襲撃はなく朝を迎えることができた。種切れしたのか? それだったらありがたいけどまさかね。


 昨日の夕食の残りで朝食を済ませたわたしたちは、前方の沼地を迂回するため北東方向に進んでいった。


 2度目の小休止のあと、沼地がやっと途切れたのでわたしたちは東に向けて進んでいき、方向修正のためその日一杯南東方向に移動した。


 目的地に向かって斜めに進んだわけだけど、東に見える山並みはだいぶ近づいてきた。これなら、遅くても明後日には山に足を踏み入れられそうだ。


 その日の夕食は、カメの脂を使った揚げ物にした。パン粉は堅パンを削れば用意できるけど、小麦粉も玉子もないので、衣なしのうえ塩コショウだけの素揚げだ。それでもカラッと揚がればおいしい素揚げができるはず。


 揚げ物は手が込んでいるのでスープ作りはパスしようかと思ったけれど、明日の朝のこともあるので、干し肉で出汁を取ってナキアちゃんとキアリーちゃんが集めてきた里イモと玉ねぎとニンジンで作ることにした。


 まずはスープの下ごしらえ。野菜の皮をむいてざっくり切ったらそれでおしまい。干し肉をちぎりながら鍋の中に入れ野菜を入れたから水を入れ、かまどの上に乗っけてナキアちゃんに鍋を沸騰してもらえば後は放っておいてだいじょうぶ。


 次は揚げ物。材料は、イノシシ肉とガゼル肉。豚肉と牛肉のようなものだ。


 肉の下ごしらえをしたあと鍋の中にカメの脂を入れ、ナキアちゃんに熱してもらって融かした後、ハーネス隊長とカルヒに作ってもらったかまどに金網を置いて油の入った鍋を置いた。


 水を温めるのと脂を温めるのはどういった違いがあるのか分からないので油の温度が全く分からない。小さな肉片を融けた脂の中に入れて様子を見ることでだいたいの目安にすることにした。


 しばらく見ていたら若干濁った油の中で肉の小片から泡が盛んに上がり始めたので、切り分けた肉を投入していった。


 それほど大きな鍋ではないので温度が下がらないよう肉の量は少な目だ。


 いったん沈んだ肉がそのうち浮いてきていい色合いになったところで、順番に取り皿の上に乗っけて配っていった。一巡目はイノシシ肉だ。


「これは熱々じゃがおいしいのじゃ」


「おいしい。口の中火傷しちゃった」


「キアリーちゃん、一度に食べるからじゃ。どれ、……」


「ナキアちゃんありがとう。もう治っちゃった」


「これもおいしいな」


「おいしい」


 最後にわたしも食べてみたけれど、素揚げなのに断然おいしかった。


 2巡目はガゼル肉。


「こっちの赤い肉も格別なのじゃ」


「おいしい。また口の中火傷しちゃった」


「キアリーちゃんはあわてんぼうなのじゃ。どれ、……」


「ナキアちゃん、ありがとう。もう治った」


「これもおいしいな」


「おいしい」


 これはこれで実においしい。癖がない上に筋張ったところが全然のないので熟成した高級和牛の赤身って感じ。熟成した高級和牛の赤身というのはなんとなくの想像です。わたし普通はオーストラリア産の真っ赤な牛肉とか食べてました。済みません。


 素揚げ3巡目の途中あたりでスープもでき上ったので、深皿によそってみんなに配った。


 今回用意した肉は一人頭だと600グラムで3キロほど。これをさほど大きくない鍋で揚げるとなると相当な量だ。かまどに炭を追加しながら全部を揚げるだけで2時間近くかかってしまった。その前にみんな満腹で食事を終えてデザートとして出したリンゴを食べている。


 揚げ物の残りは皿にとってアイテムボックスにしまっておいた。




突然ですが、本作『生きてくだけで~』の主人公シズカ(旧名鶴井静香)は堀口明日香の親友という設定です。ここは試験に出るので、よーく覚えておいてください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 粉があればソテーとか出来るのになぁ、 バターも欲しくなりますねー
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