美術館で料理が出たら
結婚披露宴を、美術館でやった。
結婚式場でも、ホテルでもなく、美術館。
該当の美術館がブライダル関連を扱うことにしたらしく、しかも冬場ということで格安プランを発表。これを知った時、私はルンルンで飛びついた。
美術館は広々と大きな建物で庭も美しく、式のゲストはイベント会場であるレストランだけでなく、館内の展示品も観覧できるというサービス付き。
しかも披露宴が終わっても、美術館自体は健在なので、いつでも中に入ることが出来る。
これはすごい利点だと思った。
結婚式場だと、用がない時は入れないから、思い出の場所にいつでも行けるというのはありがたい。
いつか娘を連れて赴き、"ここで式を挙げたんだ"と語って聞かせたい。
遠いので、まだ叶ってないけれど。
さて。
変わり種披露宴は、時々耳にする。
水族館だったり、船の上だったり、キャンプ場やライブハウス。
さらに馬に乗って入場したり、ケーキの代わりにマグロにナイフ入れたり。
個性が溢れて楽しそうだけど、その際のお料理がどうなってるのか、私はひそかに気になってる。
私の結婚式のお料理は、ちゃんとコースだった。
次々に出て来て、彩の良いお祝いメニューが並ぶ。
眩しくて、うきうき!!
けれども新郎新婦には、のんびり座って食べることなど許されない。
なんといっても身体を張ったホストなのだ。
来てくださったゲストに対し、お礼と挨拶に回るのが仕事。
キャンドルサービスに、写真撮影、歓談に、あれやこれや。各テーブルを何度も回る。
一区切りするとお色直しで席を立ち、当然料理は食べられない。
新郎新婦の席に、手つかずのまま並んでいく料理たち。ああ。
アワビにフカヒレ、鯛に牛……!
そして宴が終わったら、笑顔とともに記念のお品を配り、バスに乗って去る皆様を見送る。
ふう……。
さあ、テーブルに戻って自分のお料理を……。
(ない────!!!!)
来客を見送り戻ると、料理はあっという間に撤収された後だった。
この時の気持ちは、本当に一生忘れられない。
せめてケーキ。
ケーキカットで切って配られたケーキだけでも残しておいて欲しかった。
私と主人の名前が書かれたプレート付きのケーキは、影さえ残さず消えていた……。
これが!
美術館で結婚式を挙げるということ!?
ブライダルに慣れた会場ならきっと、少しくらいお料理を控え室に運んでくれていたはずだ。
事実、妹たちはそうだったと聞いている。
けれどもものの見事に片付けられてしまった。
一言頼んでおけば良かった。
ケーキは残して、と。
思いもしなかったから、何も言ってなかったのは失敗だった。
私の口に残ったのは、ケーキカットの時、"互いにひとくち食べさせ合う"という見せ場で食べたイチゴの味……のみ。
いや、うん、正確には他にも少しは摘まめたよ? 少しはね。
でもまさか名前入りのケーキを奪われるなんて、思いもしなかったわ。
あれから何度、美味しいケーキをいただく機会があっても、「あの時食べられなかったなぁ」という思いは消えてない。
だから、変わり種ウェディングをする方。
「料理のその後について」はあらかじめ聞いて、要望あるなら相談しておいた方がいい。
ちなみに帰り道、道の駅でラーメンを食べた。空腹にラーメンは美味しかったけど、やっぱり珍しい豪華お料理、食べたかったなぁ……。
お読みいただき有難うございました!
変わり種披露宴を試してみた結果でした(笑)。
事前にコース料理を体験出来る、とか、普通いろいろあるようなので、私のケースは特殊かも知れないのですが、こういうパターンもあるとお伝えさせていただきました(笑)。
あのケーキはどうなったんだろう…(ノД`)・゜・。←まだ言ってる。
あと裾長のドレスを着るという経験もあの時初めてでしたが、いま異世界恋愛のお話でご令嬢たちを描くとき、イメージしやすくて有難いです。
やはり何事も経験。ほんと経験。