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ブラコン悪役令嬢は、弟の破滅を阻止するためにすべてを物理でねじ伏せる。~王子様は結構です。運命の相手、自分で見つけました~  作者: うり北 うりこ@ざまされ2巻発売
第2章 領地編1~新たな出会い~

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しゅいちゃんの弱いもの


「なぁなぁ! オレのことも乗せて飛んでくれるか!?」

 

 わくわくした表情(かお)でリカルド様は聞く。だが、べにちゃんもしゅいちゃんも反応はドライだ。

 

『お姉様のご命令であれば』

『いやよ』

 

 しゅいちゃんは、そっぽまで向いてしまっている。ただ、それでめげるリカルド様ではない。

 普段、ノアはリカルド様に対して基本的に塩対応。なので、二人の対応には慣れっこなのだ。

 

「うーん。どうしたら乗せてくれんの?」

『べには、お姉様以外の人間を乗せることがイヤです』

 

 ハッキリと言い切ったべにちゃん。それでも、リカルド様は気を悪くした様子などなく「そっかー」と納得している。

 

「んじゃ、そっちの……しゅいだっけ? しゅいは、何でいやなわけ?」

『あたしは、基本的にイケメン以外は乗せたくないわ。アリアとノアは特別枠よ。……逆らったら大変なんだから』


 ぼそぼそと付け加えた最後の言葉は、しっかり聞こえている。

 特別枠とか、逆らったら……については、どうでもいい。だけどさ、聞こえないふりをしてあげるわけないよね?


「しゅいちゃん?」

『な、何よう……』

「ノアのことどう思う?」

『どうって……』


 じり、じりとしゅいちゃんは後ろに下がっていく。


「なんで、ノアが特別枠かなぁ? イケメン枠でしょうよ」

『はい? なんでこんな小さな子どもがイケメン枠なのよ!?』

「……小さな子ども? でもさっき、かっこいいって言った時に頷いてたよね? そこんとこ、詳しく!!」


 面倒くさそうに、しゅいちゃんは大きな溜め息を吐く。だが、ノアと視線が合った瞬間にベラベラと話し始めた。


『確かにさっきの笑い方は、かっこよかったわよ。でもね、たかだか10年くらいしか生きてない子どもにトキメキを感じるなんて無理。あたしたちがどんくらい生きると思ってるの? 500年~700年くらいよ。10歳くらいなんて赤ちゃんみたいなもんよ』


 な、なるほどぉ……。人と魔物の違いってやつか。それなら、イケメン枠じゃなくても仕方ない……かな?


「因みにしゅいちゃんは、何歳なの?」

『あたし? あたしは93歳よ。そろそろ結婚適齢期ってやつね!』


 93歳が結婚適齢期……。想像できない。


「へぇ。結構、ばあさんなんだな!」

『なんですってぇ!?』


 失言をしたリカルド様は、しゅいちゃんに翼でバシバシと叩かれている。おしりを狙っているあたり、子どものしつけみたいな感じなのだろうか。


「いてっ!! いてーってば!!」


 叫びながら、リカルド様は一瞬でノアの背後へと移動した。魔術で身体強化をしたみたい。


「ノア! 助けてくれ!!」

「レディにそんなこと言うなんて、誰が相手でも失礼だろ。王家はそういう言葉、特に厳しいだろ?」

「いつも気にしてっから、スコルピウス家(ここ)に遊びに来たときくらい自由にさせてくれよ」


 半泣きのリカルド様。ノアの後ろに体を縮こませて、どうにかしゅいちゃんの視界に入らないようにと必死だ。


『ねぇ、リカルドって言ったっけ? あんた王様なの?』

「い、いや。オレは王様じゃない」

「王様の息子だよ」


 ノアの後ろから恐る恐る答えるリカルド様。そして、足りない言葉を足してあげるノア。


 えっ? なんか神々しいんだけど。


 あれね。美少年と美少年とか最高だよね。

 赤い瞳と銀髪のヤンチャ系のリカルド様と、黄金の瞳とブロンドの髪を持つ天使のノア。この組み合わせが眼福すぎる。


 だけど、この気持ちを分かち合える人はいないみたい。

 お父様とお母様は微笑ましげに見てるし、執事のセバス、メイドのミモルとメモルは特に何とも思ってなさそう。べにちゃんは私ばっかり見てるし、しゅいちゃんは子どもに興味なし。


 あぁ、ここにカトリーナがいてくれたなら……。

 手紙でリカルド様の人気っぷりを書いていたカトリーナがいてくれたら、この気持ちを分かち合ってくれたかもしれないのに。



『王様の息子ってことはえらいのよね? 人間の中でのトップってことでしょ?』

「ん? まぁ、そうなるのか? オレよりすごいヤツなんていっぱいいるし、オレ自身がスゴいわけじゃ……」

『でも、えらいのには変わりないわよね!? 仕方ないなぁ、リカルドは特別に乗せてあげるわ』


 おっふ。しゅいちゃんは、権力に弱かったんかぁ……。   





 

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