アリア、怒る
ノアにシールドも張ってもらったし、これでこのレッドプテラをぶん殴れる。
「さぁ、拳で話し合いましょう? あなたたちレッドプテラは力こそ正義だもんね。分かりやすくって助かるわ。こういうの私、得意なんだよね」
『ま、待ちなさいよ! 暴力は何も生まないわよ!』
何言ってるんだか。それなら、喧嘩なんか売らなければいいだけなのに。
「そっちから売った喧嘩でしょ? 口で言っても分からない子には拳で分からせるのも大事だと思うんだよね。そのために、あなたを強くして話せるようにしたんだし。そんじゃ、いくよ!」
これ以上、ぐだぐだ話していても埒が明かない。拳で語り合えばいい。きっと語り合えばスッキリだ。一方的に私がだけど。
『ちょっ……』
『待って……』
『許じで……』
『ごべんなさ……』
ボカスカと手加減の意味も込めて、利き手じゃない左手で殴る。その間、レッドプテラは謝っていたが、いったい何に謝っているのか。それが重要だ。
「あなたは何に謝ってるの?」
『あんたに逆らったこと』
「うーん。残念ハズレ。もう少しよく考えてみようか。あなたは自分の罪をもっと自覚すべきだよ」
そう言って、思ったよりも物凄く弱かったレッドプテラをめちゃくちゃ手加減して殴った。それなのに、なんと数発で気絶をしてしまった。
なんとも呆気ない。
「ノアー、この子気絶しちゃった。シールドはもういいや、ありがとー!」
そう言いながらレッドプテラに背中を向ければ、私の背中に向けてレッドプテラは火を吐き出した。どうやら気絶したふりをしていただけらしい。
私はそれを難なく手で掴む。火傷しないようにきちんと皮膚を強化して。
「ねぇ、何で後ろから攻撃したの? それってとっても卑怯だよね」
レッドプテラが吐き出した朱色の火は、私の右の掌の上でゆらゆらと揺らめいている。
「こんなんで私を倒せるとでも思ったの?」
背後を狙う卑怯ものに、ノアが卑怯だと言われた。何て許しがたい。
私は右の掌をグッとレッドプテラの翼へと押し付けた。
『あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!!』
ジュッという火が消える音と共にレッドプテラが叫んだ。さっきノアに植え付けられた恐怖心のためか、地面を転げ回っている。その姿は、土で自身の火を消そうとしているかのよう。
「ねぇ、もうとっくに火は消えてるよ?」
そう声をかけたが、レッドプテラは止まらない。仕方ない。本当に気絶させよう。
ゴスン! と拳を脳天に叩き込めば、レッドプテラは今度こそ本当に気を失った。
「姉さん、すっごく手加減してたね」
楽しそうにノアは言う。その隣でべにちゃんが頷いている。
「赤ちゃん相手に本気を出す大人はいないでしょ。あれと一緒だよ」
戦うにしても力の差が歴然すぎた。私の魔力を流したのに、体は大きくなれど、力はほとんど強くならなかったのだ。
『お姉様は、お優しいのですね!』
嬉しそうな声でべにちゃんは言う。けれど、全く優しくないと思う。トラウマにトラウマを重ねるという悪行を果たしたのだから。
それから小一時間で目が覚めたレッドプテラ。もちろん、ノアにはきっちりと謝罪をしてもらいましたよ!




