ヤン&デレなんですか?
これは、何て言うべきか。私のためにやってくれてるんだよね? まったく嬉しくはないけれど。
「ノア。自分のことは自分で守れるよ。私より強い人も、魔物もほとんどいないし」
「うん。そうだけど、許せないから。姉さんに悪意を向けるなんて、死んで当然でしょう?」
うへぇ!! ノアがヤンデレ化した。なぜ? 今まで天使だったじゃん。いや、今でも天使なんだけどさぁ。
うーん。どうしようか。やっぱりきちんと自分の気持ちを伝えるべきだよね。
「ノア、そういうのは良くないよ。私は、誰かに守って欲しいなんてまったく思ってないし、ノアが私を理由に誰かを傷つけるのはイヤ。どうでもいい誰かの敵意よりも、ノアが誰かを傷つけたり、悲しむ方がイヤ。というか、どうでもいい人や魔物に何て思われてても気にならないし……」
そう……なんだよね。私にとって大事なのはノアやお父様、お母様。ミモルやセバス……スコルピウス家のみんな。あとは、オロチやカトリーナ、よく遊びにくるリカルド。
それから、ジン……なんだよね。
もちろん、目に映る人が困っていれば助けたいとは思う。だけど、その人たちからどんな目で見られようと、どうでもいいのだ。
「ノアはさ、私がノアのためにって誰かを殺したらどうする? 嬉しい?」
「……うれしい。僕のためにって姉さんが考えてしてくれたことならうれしいよ。でも、それで姉さんが騎士に捕まるのはイヤだ」
な、なるほどぉ。嬉しいのか。予想外過ぎる。
うわー。だから、ほしきみ☆のゲームのなかでアリアが自殺した時にノアは復讐に動いたんだ。姉を害する者は絶対に許さないっていう気持ちから。
もしかしたら、ノアは生粋のヤンデレなのかもしれない。お父様もそれっぽいところあるし、スコルピウス家はヤンデレの家系なの? そもそも、姉弟間でヤンデレってありなの?
とにかくだ、このままじゃ困る。万が一にでも私に何かあった場合、相手が誰であろうとノアが復讐に出る。200%やりそうな気がする。
「ノア、約束して。もしも私のために復讐する時は、私の許可をとって欲しいの」
「とらなかったら?」
「…………もう、ノアと口をきかない」
なんじゃそりゃ! 口をきかないって子どもじゃん! いや、私は子どもなんだけど、中身は前世の16歳プラス今世の11歳だから……27歳なわけよ! 幼稚な回答過ぎて心が折れそうだ。
「口きかないって、どのくらい?」
……あれ? 効果は抜群なの? ノアって普段はあんなに大人っぽいのに、こういうのは効くの?
「ずっと、だよ。ノアが私のために誰かを傷つけたら、ずーーーっと話さない」
「……ずーっと」
うわぁ。眉間にシワよっちゃってるよ。何か、めちゃくちゃ悩んでる。悲壮感がすごい。これは、いける。あと、もう一押し。
「私のためにノアが誰かを傷つけるのがイヤだから、ノアと一緒にいられなくなっちゃうかもしれない。私は強いから、自分の力で復讐したければできるし、そうなったらノアにも相談する。だから、ノアも私の意見も聞いて欲しいの」
じっとノアの瞳を見る。ノアはまだ悩んでいるみたいだけど、かなり私の提案に心が傾いてるのが分かる。さっきみたいな悲壮感が薄れてる。
「ずーっと一緒にいるために。ね、お願い」
ついにノアは大きく頷いた。
「わかった。姉さんと一緒にいるためだからね。やっぱり、姉さんのことを姉さんの意見を聞かずに勝手にやるのは良くないよね」
「ノアーーーっっ!!」
私はノアへと抱きついた。自分の気持ちが伝わったことが嬉しくて。
だから、気が付けなかった。ノアが、私のためではなく自身の鬱憤を晴らすための復讐ならいいよね……なんて考えていたことに。




