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普通の令嬢とは?


 うーん。これは魔力をあげれば、答えが分かるやつ? でも、魔力をあげたらオロチを眷属(けんぞく)にしちゃったしなぁ。前科ありの身としては、魔力をあげてみるというのはダメな気がする。

 

「ねぇ、魔力あげたらまた眷属になっちゃうと思う? やっぱりダメだよね」

「それはそれで、今回はいいと思うけど」

 

 え? いいの? そう思ってノアを見れば苦笑されてしまった。

 

「レッドプテラのリーダーに姉さんはなりに来たんでしょ? 1匹くらい会話ができないと不便だよ。それに魔力をあげてその子を強くすれば、レッドプテラのまとめ役もお願いできる。困った点は、姉さんがどんどん普通の令嬢から遠ざかってることくらいかな」

「私、普通じゃないの?」

 

 そういえば、領地に戻ってからカトリーナに年に1回くらい会うだけだ。普通の令嬢が分からない。


「えっ、普通だと思ってたの?」


 驚きを隠せないという視線を浴びて、私はそっと視線をそらした。知ってるよ、普通の令嬢は魔術は使えないし、眷属もいないことは。


「確かにちょっと特殊な自覚はある」

「あー、良かった。姉さんが普通なら世の中の令嬢はみんな特殊だよ。普通は走り回ったり、魔物に近付こうとしないから」

「嘘でしょ……。走りもしないの?」


 それって、運動不足なんじゃ……。あぁ、でもダンスや乗馬は運動になるか。


「姉さん、その返しが既にずれてるから」

「えー!」


 何でよ! どこがよ! 不服だけど、これが前世との感覚の差なんだろう。仕方ない。


「姉さんが考えてること、なんか違う気がするんだけど……。まぁいいや。どうする? 眷属にするつもりで魔力あげてみる?」


 うーん。悩ましい。しっかり考えたいのに、なんかまだ一匹はキギャキギャと殺気が剥き出しで鬱陶(うっとう)しい。何で一匹だけあんなに敵意を見せてくるんだか。

 理由を知るにも、通訳が必要なんだよね。


「失うものより、得られることの方が多いもんね……」


 失うのは、私のなけなしの普通くらいだ。このままじゃ魔物使いにでもなってしまいそう。まさか、国家反逆を企ててるとか思われない……よね? 

 

「ねぇ、ノア。眷属を増やすと危険人物扱いされないかな? 国を追われたり、無い罪をかぶせられて殺されたりしない? それでスコルピウス家が滅ぼされたりとか……」

 

 私が無実の罪で裁かれる可能性だって十分にある。そんな漫画を読んだことあるもんね。確か時間が逆行する、ざまぁものだった気がする。実際に私が裁かれた場合は、流石に転生に加えて逆行まではしないだろうから、待ってるのは死のみだ。それも私だけじゃない。家族全員の。

 

「姉さん。そんなこと僕がさせると思う?」

 

 ゆらり、とノアの瞳に朱が混じる。にこりと微笑んでるのに何だか怖い。けど、そんなノアもいい! 好き!! じゃなくて、何で魔力が揺らいでるの?

 

「スコルピウス家がその気になれば、王家なんて簡単に潰せるよ。僕たちが代わりに王家になるのなんていつでもできる。だけど、そんなことはしない。何でだと思う?」

「国が混乱するから?」

「半分アタリで、半分ハズレ」

 

 半分ハズレ? 国民のためってことかな? それなら混乱に含まれるだろうし……。

 

「姉さんはさ、自分が国を治めることになったらどう思う?」

「えっ、面倒くさい」

 

 自分の自由な時間は減って、責任が増える。国のために生きなくてはいけなくなる。それは、領主と似ているようで違う。

 上手く言えないけど、背負うものが違うのだ。他国と渡り合い、自国の貴族をまとめ、時には正し、切り捨てもする。最高責任者なんて気が重すぎる。

 

「面倒くさい。本当にね。だから、スコルピウス家は反乱を起こさないし、王になることを望まない。そもそも、スコルピウス家は愛に生きる人が多いから。政略結婚なんてできないよ」

「確かに。政略結婚は無理だね」

 

 私の返事にノアはクスリと笑う。

 

「スコルピウス家は王家より強い。けど、反乱はしないし、玉座も狙わない。王家がスコルピウス家に害をもたらさない限りは、国を想っている限りは、王家の味方をする。むかーしからの約束ごとだよ。だから、安心して姉さんの好きにするといいよ」

 

 ノアの言葉に頷く。

 

「レッドプテラを、この子を眷属にしてみる」

 

 私はレッドプテラへと近づく。まずは、意思を確認しなくては。嫌だと思う子を眷属にはしたくない。

 

「眷属になって、私のことを助けてくれないかな?」

 

 キギャー! とどこか嬉しそうにレッドプテラが鳴いた。

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