賢いレッドプテラ
助けるべきか、否か。助けるのは簡単だけど、振られた相手に助けられるのって微妙な気持ちにならない? そんなら振るなよ! 的なさぁ。
あぁ。でも、あのままだと大怪我しちゃうよね。うーん。やっぱり行こう! 見て見ぬふりはよくないよね!!
「ん?」
ものすごい殺気を感じてそちらを見れば落ちていくリーダーの元へと飛んでいく1匹のレッドプテラ。だが、今はもう殺気を感じない。
気のせい? いや、確実に殺気だったよね。
私が助けなくても仲間が助けてくれるなら、それでいいよね。と見守っていれば、無事にリーダーは助けに行ったレッドプテラの背中に着地した。そして、2匹まとめて落ちていった。だが、落ちる速さもゆっくりになったのであれなら大した怪我もしないだろう。
未だに足場にしているレッドプテラを私は見下ろす。
それにしても、なんでこの子はずっと大人しく足場にされてるんだろ?
「私を乗せて下まで行ってくれる?」
そう言えば、ゆっくりと下降し始めるレッドプテラ。もしかして、私の言葉が分かるのだろうか。
「ねぇ、私の言葉が分かるの? イエスなら1回。ノーなら2回鳴いてね」
キギャー。
「私はリーダー倒したことになるの?」
キギャー。
「他のあなたの仲間は人間の言葉は分かる?」
キギャキギャ!
「人間の言葉は話せたりする?」
キギャキギャ。
なるほど。っていうか、何でこの子だけ人間の言葉が分かるんだろ。ノアなら知ってるかな?
賢いレッドプテラに乗せてもらって私はノアやリーダーのいるところへと行く。すると──。
キギャギャキギャー!!
何だか、すんごい殺気を向けられた。その相手はさっきリーダーを助けに行ったレッドプテラだ。何かを言ってるんだろうけど、全く分からん。
「姉さん、お疲れさま」
「ノア!」
うん。何か疲れたよ。戦うのは良かったんだけど、なぜか求愛は始まるし、リーダー倒したことになってるのに殺気を向けられるし……。リーダーを倒したら、次のリーダーになれるんじゃなかったの?
私は乗せていてくれたレッドプテラから降りてお礼を言うと、ノアに抱きついた。
「なんか疲れちゃった。あぁー、癒されるー」
ギューッと抱き締めれば、背中をポンポンとノアは優しく叩いてくれる。あぁ、ノアは控えめに言って最高だ。優しいし、可愛いし、天使だし、頭いい……し…………。
「ノア、レッドプテラって人間の言葉が分かるの?」
「え? そんな資料は見たことないけど」
「私を乗せてくれてた子が、私の言葉が分かったんだよね。他のレッドプテラは無理らしいんだけど」
そう言ったら、ノアは私から離れてレッドプテラの方へと行ってしまった。さみしい……。
「僕の言葉、分かる?」
だが、レッドプテラは無視だ。
「ねぇ、何で返事しないの? 話すの嫌なの?」
キギャキギャ。
どういうことだ? 話すのは嫌じゃないけど、無視をするっておかしくない?
「姉さん、僕の言ってることが分かるか聞いてみてくれない?」
「うん、分かった。私の弟……ノアが言ってること分かった?」
キギャキギャ。
「もしかして、私の言葉だけ分かるの?」
キギャー!
ノアを指差しながら聞けば、答えはノー。私の言葉しか分からないらしい。
「姉さん、そのレッドプテラの上で戦ってたよね。もしかしたら、姉さんから溢れる魔力をそのレッドプテラが取り込んだとか?」
そんなことできるの? とレッドプテラへと視線を向けるが反応なし。そうだった。ノアの言葉は分からないんだった。
「ねぇ、あなたは私の魔力を取り込んだの?」
キギャー?
どうやら本人にも分からないらしい。




