リーダーVS私
他のレッドプテラの背に乗って言った私の決めセリフに対して、リーダーのレッドプテラは、きぎゃあきぎゃあ……と鳴くのみ。
こんなことならオロチを連れてくれば良かった、と一瞬だけ後悔をする。けれど、オロチにはスコルピウス領内で田んぼをどこに作れば良いのか、連日調査をしてもらっている。今日も領内で調べてくれているはずだ。
「そもそも、オロチだって魔物と話せるか分かんないもんねぇ……」
折角、決めセリフを考えたのにな。なんて思っていたら、リーダーが火を噴いた。そういえば、そんな攻撃もするんだったっけ……と強化した手で受け止める。そして火にほんの少し魔力を込めると、火を丸めて投げ返した。
これは、リカルドと魔術の制御訓練でやったキャッチボールの応用だ。最初は失敗してリカルドをうっかり焼いてしまったことが懐かしい。リカルドはこの訓練でかなり防御と治癒能力をあげるのが上手くなったんだよなぁ。私は……うん、まぁ少しは上達したよね。
私が投げ返した火の玉をリーダーが避けたことで後ろにいたレッドプテラへとあたる。
ジュッッ──。
「へ?」
後ろにいたレッドプテラは黒い煙となって消えてしまった。本当にそこにいたの? と聞きたくなるくらい影も形もない。
「姉さん! 消さないで!! そんなことやってたらレッドプテラが一体もいなくなっちゃうよ」
ノアの声が風に乗って届く。どうやってノアは倒しているのかと思えば、眠り粉を持ってきていたようで風を操って嗅がせてはレッドプテラを墜落させている。
「え、そんな手があったの?」
私の場合は、風を操ろうとすれば森を更地にしてしまうからできないのだけどね。ノアは本当に器用だなぁ……と感心しながらもリーダーへと視線を戻す。
あれ? なんだか顔色が悪いような?
「いやいや魔物に顔色なんて……ねぇ」
ないない、と自分の考えを否定して拳を握りしめる。さて、そろそろ終わりにしようか。
リーダーは私に向かって再び火を噴いた。さっきと違って、炎と呼ぶのに相応しい火力である。きっとこれを投げ返したらいくらリーダーと云えど死んでしまうだろう。
とりあえず、炎を手で弾き返す。すると、かなり気合いを入れて身体強化していたからか、光の速さで炎はリーダーへと向かっていってしまった。
眼も強化したから私には見えているけど、他の人には見えてないだろう。
「あ。これ、やばいやつかも……」
リーダーが死んじゃった場合ってどうなるの?
私は足場にしていたレッドプテラをぐっと踏み込むと、炎よりも早く移動してリーダーの前に回り込む。そして、自分で打ち返した炎を自分で受け止めるというアホなことをした。
それから、リーダーを足場代わりに踏んで、元いたレッドプテラへと戻る。
「あー、えっと……。大丈夫?」
元いたレッドプテラの上から声をかければ、なんだかリーダーの様子がおかしい。
ピーギャアピーギャァ……。
様子どころか鳴き声もおかしい。回転しながら私の周りをぐるぐる回ってるし、何事? 分かるのはリーダーからの殺気がなくなったってことだけだ。
「姉さん! レッドプテラが求愛してる!!」
「はい!?」
魔物に求愛されるとか、何? え? こんなことってあるの?




