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いくつなんだよ



 失った……、いや最初から持ち合わせていたかも分からない威厳と絵心。何だか視界が悪くなったのはきっと気のせい。泣きそうなんかじゃない。

 

「アリアの絵、俺は好きだよ。ほら、完璧すぎると取っ付きにくいし、ちょっと苦手なことがある方が可愛いし……」

「ジン、私の目を見てそれ言える?」

 

 表情を変えることはなかったけれど、ジンと視線が合わない。つまり、励まそうとがんばってくれているんだろう。だけどね、中途半端な(なぐさ)めは(かえ)って心を(えぐ)るのだよ。

 

「アリア、ごめん。それは無理」

 

 ですよねー。知ってたよ! うわーん!! って、あれ……? 

 

「姉さん、勘弁(かんべん)してあげなよ。大人びてるけど、ジンだって年頃の男の子なんだから」

「そういうノアはいくつなんだよ」

 

 ジンが素早くツッコミを入れ、それに対してノアは「9歳だけど?」と平然と返している。

 

「僕が何を言いたいのかっていうと、姉さんの鈍さは時として罪だってことかな」

「ノア、やめてくれ」


 真っ赤な耳。それはきっと──。


『お前さんたち、さっさとくっついてしまえば良いのに何をぐずぐずしてるんだ?』

「「えっっ!!??」」


 ジンと視線が重なるが、恥ずかしくてすぐに視線を足元へと落とす。何てこった。まさかのラブイベントが発生してしまった。くそぅ、嬉しいとか思っちゃった私を誰か殴ってくれ。

 恥ずかしさと嬉しさで(もだ)えていれば、ジンが口を開いた。


「俺にはアリアの隣に立つ資格がない。俺は自分で何もしていない。だから、俺の気持ちは言えない」

「えっ!?」


 こ、これは告白をされているようなものでは? いや、でもはっきり言われたわけでもないし。って言うか、私の隣に立つ資格って何? 私、そんなに大それたものでもないんだけど……。いや、スコルピウス家自体は大それたものなんだけどさ。


「私の隣に立つのに資格なんていらない。だけど、私もジンと同じ気持ち。私にはやることがある。学園に通うまでに成し遂げたいことがあるの」

「俺もだ。フォクスの文化を広める。豊かにするんだ俺の大切な……アリアとノアが守ってくれたフォクスを」


 あぁ、想いは一緒か。私は日本文化を、ジンはフォクスの文化を広めたい。それって同じことじゃん。


「よし。じゃぁ、スコルピウス家とフォクス家で広めようか。フォクスの文化を。ジンもいいよね? 僕だって和食を好きなときに食べるようになりたいし」

『うむ。われも微力ながら手伝おう』


 ノアとオロチの言葉に私は大きく頷いた。嬉しい。みんな、フォクスが大好きなんだ。


「もちろん、私もやるよ! 和食が、日本の……ううんフォクスの文化が広がったら嬉しいもん」


 和食さえあれば、何だって乗り越えられる。美味しいご飯は元気の源だからね。


「ありがとう。親父にも話してみる」

「え、もう伝えてあるよ。これからスコルピウス(うち)とフォクスで提携してフォクス文化でブームを起こすんだから」


 ノア、仕事が早すぎる。私がただただ和食や文化に感激していた間にやっちゃうなんて。


「ジンはうちに一緒に来てもらうからね。貴族とも渡り合えるように鍛えるからよろしく」

「え、なんでだ?」

「そりゃ、貴族に着物とか(かんざし)とかバンバン売って稼いだお金で平民の方にも進出するからだよ。稼ぐなら貴族相手の方がお金の入りがいいからね」

「なるほど……。だけど、そこまでお願いしてもいいのか?」


 ジンが困惑ぎみに言えば、ノアは少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。


「未来の義兄には先行投資しないとね。姉さんを守れるようになってもらわなきゃ困るし」

「「ノア!?」」


 楽しそうにクスクスと笑うと、ノアは視線を田んぼへと向けた。


「頑張ろうね」


 キラキラと田んぼに張ってある水が光っている。それを眩しそうに目を細めて見つめながら呟いたノアに私たちは頷いたのだった。

 

 

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