えっ?人力車じゃないの?
さて、今日は……なんと! ジンがフォクス領を案内してくれるそうです!! イエーイ!!
フォクス領は時代劇みたいな感じの街並みが広がっている。昨日も一昨日もゆっくり見てないから、今日は思う存分満喫したい。
長屋が立ち並ぶなかを歩いていると、銭湯があって思わず足が止まった。そんな私にジンは説明してくれる。
「うちは風呂があるけど、ほとんどの民はここに風呂に入りに来てるんだ。同じ源泉から温泉を引いてるから使ってるお湯は同じだけどな。……家ばっかだけど見て楽しいのか?」
「うん。とっても!」
時代劇のなかにいるみたい! なんて言えないけどね。
ゆっくり街並みを眺めながら歩いてると、ここがほしきみ☆の世界だなんて嘘みたいに思えちゃう。着物を着付けてもらって下駄をカラコロと音を鳴らして歩くのも楽しい。
足が痛くなるのは前世で経験済みだから、しっかり足の親指と人差し指の間に身体強化をした。これで、どれだけでも歩ける。今日は街並みも田んぼも和食も全部堪能するんだから!
それで、自分用の着物を買おう。あっ、でも着付けできないや。今度ミモルにも一緒に来てもらおう。私だけで覚えられる気がしない。いつかは覚えたいけど、覚えるのには時間がかかりそう。
「駕籠に乗るか? 疲れるだろ?」
ジンの気遣いにノアは駕籠? と首を傾げている。その様子を見て、私も慌てて一緒になって首を傾げた。
「駕籠に乗るって?」
「ん? 歩く距離も長いし、ノアが履いてた靴……だったか? あれと形も違うから下駄は歩きにくいだろ?」
「いや、それは大丈夫なんだけど。籠に乗るって何? 普通は馬車じゃないの?」
ノアの言葉に今度はジンが首を傾げた。な、なるほど。お互いの文化が全然違うとこうなるのか。私には無理だ。……このままだと転生者だってばれるかも。
ジンに話すのは……。うーん、ノアに相談した方がいいのかな。
なんて悩んでいるうちに駕籠がやって来た。
ジンが呼んだのかな? 二人が駕籠と馬車の説明を互いにしているのに興味なかったから、話し聞いてなかったんだよね。だから、どうして呼んだのかはよく分からない。
馬車に慣れちゃってるからかな? 馬なら良いけど人に運んでもらうのは気が引けるから、乗るのはパスしたい。ってか、何で駕籠なのよ。人力車でいいじゃん。
「オロチ、何で駕籠なの? 人力車で良くない?」
私の後ろに立っているオロチへとこっそりと聞けば、オロチはにんまりと笑った。
『その手があったな』
「えっ?」
『竜二と話してて、馬車は馬をそんなに調達できないし、費用的に無理だという話になってな。ならばどうするか……と考えた時にわれ等は駕籠という結論に至ったのだ。人力車という案はなかった。むしろ、駕籠以外を思い付かなかった。引くのは馬だけじゃと思ったからな』
声を落としたままオロチはくつくつと喉を鳴らして楽しそうだ。
「今更、人力車にはしないでしょ?」
『そうだな。馬車にするな』
ですよねー。と頷いていれば、ノアの叫び声が聞こえた。こんなに大きな声を出すなんて珍しい。
「いや、無理無理無理無理!! 人に自分を運ばせるとか無理だから!」
「何言ってんだ? 駕籠を担ぐのだって立派な仕事だろ」
あぁ、なるほど。お互いに何言ってんの? ってなって、百聞は一見にしかず……って感じで駕籠を呼んだのか。
……うん。でもやっぱり私も人力車ならともかく駕籠には抵抗があるなぁ。でもこの人たちは仕事で来た……って駕籠って1人乗りだよね? ということは誰か一人だけ乗るってこと?
「ったく、仕方ねーなー。んじゃ、アリアが乗るか?」
「う、ううん。私はいいかな。歩きたい気分だし」
結局誰が乗ったのかというとオロチが乗った。『ははははは、快適じゃ!』って喜んでたし、良かった……よね?




