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ブラコン悪役令嬢は、弟の破滅を阻止するためにすべてを物理でねじ伏せる。~王子様は結構です。運命の相手、自分で見つけました~  作者: うり北 うりこ@ざまされ2巻発売
第2章 領地編1~新たな出会い~

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心が瀕死状態になりまして



 可愛いものが大好きなだけなのに、ひどい言われようで心をバッキバキに折られた私は、もうやる気ゼロだ。心は瀕死状態である。


 そんな私はジンに近付くと、ジンの左肩におでこを乗せた。


「ジン。帰りはおんぶしてって……」


 無理なのは分かっているが、ジンにお願いしてみる。ちょっと無茶を言いたいくらいのダメージだったのだ。何度も言うが心は瀕死なのだよ。

 あぁ、つらい。言葉の暴力だ。よし、肩に頭をぐりぐりしちゃおう。うん。


「いてででででで……」


 ジンは私の両肩を押して、私の頭を離す。そして、何とも形容しがたい視線を向けながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。まるで、あやすかのように背中を撫でられる。


「アリア、痛いからやめような」

「うん。でもね、私も心が痛い」


 そう答えれば、ジンは小さくため息をついた。


「領までは無理だぞ」


 とんとん、と背中を軽く叩いたあと、目の前でジンはしゃがんだ。これは、私をおんぶしてくれるということだろうか。


「いいの?」

「して欲しいんだろ?」


 当たり前のようにそう返されて、私は小さく頷いた。

 私の方が中身は圧倒的年上なのに、何でだろう……ジンにはすごく甘えたくなる。


「ありがとう」


 そう言いながらジンの背中に体を預ければ、「よいしょっ」と言いながらジンは立ち上がった。


「じじくさい」

「うるせー。そんなこと言ってると下ろすぞ」

「やだ。ごめん」


 ジンはくつくつと笑いながら「しょーがねーなー」と言う。あぁ、なんて甘い。どろりと溶けてしまいそうだ。

 ジンと付き合える子は幸せなんだろうな。うらやましい。オロチがジンに婚約者はいないって言ってたけど、付き合ってる子はいるのかな。好きな子とか……。


 まだ見ぬその子を想像して泣きたくなった。私じゃダメなんだろうか。あぁ、でも私は相応しくない。細やかな気遣いもできなくて、中身は年上なのに甘えてしまう。さっきだってジンを膝から落としちゃった。

 それに、好きな男の子をおんぶしてダッシュとか……。色気の『い』の字もなければ、良い雰囲気になるわけもない。



「オロチ、私の良いところってどこだと思う?」


 ジンに聞く勇気なんてなくて、隣を歩いていたオロチへと聞いてみる。


『魔力が多いところだな』

「魔力……」


 まさかの魔力の多さとか……。それは生まれつきのやつだ。褒めてくれてるのだろうけど、真っ先に出てくるのがそれとか微妙に……いや、そこそこ凹む。

 あぁ。むしろ魔力くらいしか取り柄がないのかもしれない。そんな思考に囚われた時──。


「アリアは無鉄砲だし危なっかしいけど、まっすぐで優しいところに皆が惹かれるんだと思う。まぁ、貴族らしくはないけどな」

「……それって、ジンも?」


 言うつもりなんてなかったのに溢れた言葉。答えを聞きたくないのに、聞きたいだなんてどうかしてる。


「いやっ。今のは……その…………」


 顔がカーッと熱くなって、心臓が今度こそ肋骨(ろっこつ)を突き破って、こんにちはするんじゃないかってくらいにドキドキしてる。

 そんな私の気持ちなんて知らないのだろう。ジンはのどを振るわせて笑う。


「俺だってそのうちの一人だよ。当然だろ? アリアはフォクス領(うちの領)の英雄だ」

「あぁ、なんだ。そういうこと……」


 拍子抜けするような答えにがっかりしてしまう。だけど、これではっきり分かった。きっと私は恋愛対象として見られていないんだと。

 確かにジンの前では食い意地はってたし、楽々おんぶして馬よりも速く走ったし、その他もやらかした気がするけど……。


「どうせ私は女の子らしくないもん」


 拗ねたような声が出た。そして、その言葉の身勝手さに自分に絶望する。折角、褒めてくれたのに最悪だ。時を戻す魔術があれば、今すぐ戻したいくらい。



 

 

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