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天才と天才


 ノアは少しずつ私の魔力を動かして、結界を小さくしていった。

 

「終わったよ」


 そう言って、ノアはそっと手を離す。


「ノアはすごいね」

「すごいのは、姉さんだよ。こんな大きな結界は僕には作れない」

「うーん。でも、結局はやり過ぎて大変なことになっちゃったわけだし。オロチだってこんなに小さくなっちゃったし」

 

 指からいつの間にかに私の肩に移動していたオロチの『シャー』という音が聞こえる。これじゃあ、神様というかただの蛇だ。

 

「姉さんはそう言うけど、領地を覆うほどの結界なんて父さんにだって無理だよ。僕たちにできるのは、既にできた結界を……姉さんの魔力を動かして小さくしたり、形を変えるくらいだからね。だから、姉さんがいなければ、フォクス領は魔物に荒らされてなくなっていた。ここは元々、魔物の出る領域だからね」

 

 そう。フォクス領は特殊だったんだ。いや、今も特殊だ。魔物の住み処の一部にできた領地だから。

 

 この世界の人間と魔物。基本的には交わらずに生きている。住み処がしっかり分かれているのだ。たまに魔物が人里へと紛れ込んでしまうことはあるけれど。

 前世でいう熊や猪が人里に出没してしまうのと頻度は差ほど変わらないように思う。

 

「確かに私は魔力が多いし、結界を張るのも私じゃないと難しかった。だけど、一人じゃできなかった。ノアがいてくれたから、今以上の被害を防げたし、安心して結界を張れたんだよ」


 本当に心強かったのだ。ノアがいなかったら、上手くいかないかもしれない……という不安に押し潰されそうだった。

 私が姉なのに、ノアに頼りっぱなしだ。


「ありがとう。いつも私の気持ちを尊重してくれて。どうしても、フォクス領がなくなって欲しくなかったの」

「尊重してるんじゃない。姉さんの望みが叶うことが僕の願いなんだ」


『これで付き合ってないとか、冗談だろう……』というオロチの言葉は小さすぎて私たちの耳には入らなかった。


「よし。僕はとりあえず、結界の修復と点検の仕方を教えてくるから、姉さんはオロチを戻してあげて。あと、これを使って」


 手渡されたそれはチリンと小さくなった。


「首輪?」


 まるで動物の首輪みたいなデザインのそれはベルト部分が黒で、光沢感の全くない銀色の鈴が一つついている。


「それを着ければ、結界のなかにも入れると思うよ」

「思う?」


 なぜ、思うなんだろう。絶対じゃないってことだよね……。

 そんな私の疑問が伝わったのだろう。ノアは少しだけ自信なさげに視線を下げた。


「僕が作ったんだ……」

「えっ! すごい!! いつの間に作ったの?」


 まさか、ノアが魔道具を作れるなんて。すごすぎる!


「昨日、結界の張り方を習ったでしょ。あの時、もしかしたらオロチは結界内にいられないかもしれないと思って、念のために作ったんだ」


 えっ!? 昨日の夜に作ってくれたの? ってか、魔道具作れたの? かなり専門的な知識と技術が必要だって聞くけど……。しかも、オロチがいられない可能性もその時から気が付いていたとか、天才すぎない!?


 などなど、驚きと驚きと驚きと……。言いたいことはたくさんあるけど──。


「ノア、ありがとう」


 1番伝えたいのはこの気持ちだ。受け取った首輪の鈴を撫でれば、ノアの魔力に指先が触れた。

 


 

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