胸がズキュキューン
ジンの家族と魔術を使える人たちを紹介してもらったんだけど、ジンは7人兄弟だった。男の子5人、女の子2人でジンは上から5番目とのこと。
お兄ちゃん感出てたのは下の子がいるからなんだ。レンさんの前だといつもよりちょっと幼く見えて可愛いなぁ。
「姉さん……」
きっとニヤニヤと気持ちの悪い顔をしていたのだろう。ノアが私の服の袖を引っ張った。
ちょっと上目遣いなのは、計算なの? 計算なのか? もう、天然だろと計算だろうとどっちでもいい! ごちそうさまです。おかわりお願いします!!
なんて胸がズキュキューンとなって、気持ちを宇宙へと飛ばしている間に、ノアが結界についてフォクス家の皆さんと魔術が使える領民へと説明してくれていた。
「なので、結界さえ上手く張れれば今までと変わらない生活が送れるはずです」
「それは大変有り難いお話なのですが……」
ノアの説明を聞いたジンのお父さんであり、フォクス領の領主であるケンシさんは言い淀んだ。きっと、結界を信じきれていないのだろう。
そりゃそうだ。公爵家の蠍の紋章を見せたから身元ははっきりしているとはいえ、自分の子どもと同じくらいの年齢の子が言っているのだ。信じてしまう方が心配になる。
やって見せる方が早いよね。
「とりあえず、やって見せます。その後に、ここに住み続けられるのかの判断をしてください」
そう言うと、私とノアはケンシさんの家の庭に出た。すると、コン、コンという音が静かに鳴っている。
「やっぱり、この文化がなくなるのは世界の損失だと思うのよね」
私の呟きにノアは頷いた。その視線はししおどしへと向けられており、珍しく興味津々といった感じだ。
「結界が張れたら1回帰るけど、そのあとすぐに戻って来ようかな。1週間は少なくとも様子見した方がいいと思うんだ。どう思う?」
どう思うかって、そんなの賛成以外ない。
「ノア、天才だわ」
私の返答にノアは満足げに笑う。そして「自分達の家を建てる許可を貰わないとだね」と言った。そうなったら、どっちが家か分からなくなるほどに入り浸りそうだ。
だけど、ノアのことだから私がそうなるのを見通した上で言ってきているのだろう。
「そうしたら、残念だけどオロチは留守番だね。ほら、魔物は入れない結界にするからさ」
「確かに! ねぇ、このまま結界を張ったらオロチってどうなるんだろう」
「…………さぁ?」
……なんか間があったよね。何だろう。ノアは可愛く微笑んでるし天使なんだけど、悪魔の尻尾が生えている気がする。小悪魔ちゃんになったのかな。それもまた最高に可愛いんだけど……。
「ノアは何を知ってるの?」
「何も知らないよ」
なるほど? 知っているわけではないのか。じゃあ──。
「何に気が付いたの?」
「うーん。一つの可能性でしかないけど、消えちゃうかもなぁって」
「えっ?」
「オロチは魔物だから、魔物が入れない結界にいたら消滅するかもしれないと思っただけ。確証はないけどね。けど、もし僕が結界を作るならそうするなって思って。だって、万が一結界を破って入ってきたら困るでしょ? それに既に魔物がいる場所で結界を張ることだって0じゃないし」
確かに。私も結界を張る魔術を作るとしたら、魔物が入って来た後と、既に魔物が領内にいた場合を想定する。