オロチさん、本当に誤差ですか?
フォクス領へと到着すれば、昨日の木の下でジンが待っていてくれた。
「ジンーーっ!」
ぶんぶんと手を振れば、ジンは軽く手をあげてくれる。その姿に震えた。
だって、かっこいいんだもん。もしかして、私ってショタコンだったのかもしれない。いや、私も子どもだから問題ないのか? でも前世が16歳で、今世の11歳を加えれば27歳なわけで。
「オロチ。私ってショタかな?」
『ショタとは?』
「少年好きってこと」
『それは、そうなんじゃないのか?』
あっ、肯定された。そうかぁ。私はショタコンだったのか。確かにノアは天使だし、レオナルドとリカルドのことも可愛いと思ったことがある。
『ん? 落ち込むことはないだろう? 幼いアリアが幼い者に好意を寄せるのは当然のことだ。ただ、姉弟は禁忌だぞ』
あれ? あぁ、オロチのなかで私はジンくらいの歳の子なのか。それにしても、ノアと私の仲をまだ疑っていたとは。
「もし、27歳が11歳に恋心を持ったら変でしょ?」
『いいんじゃないか?』
「へい!?」
ビックリし過ぎて変な声が出ちゃったよ。どう考えても犯罪臭がする案件を『いいんじゃないか?』ですと!?
『長く生きてると、それくらいは誤差だ。大した年齢差には思えない』
「えっと。オロチって何歳なの?」
『千年越えたあたりで数えるのは止めたから、分からないな』
あぁ、これは聞く人を間違えたパターンだ。ふふっ。だけど、誤差かぁ。実際に私が今27歳だと問題あるかもだけど、そうじゃないから世間から見たら何にも問題がない想いなのかもしれないな。
ジンのことをもっと知りたいって気持ちは。
「ジン、おはよう」
「おはよう。オロチ様もおはようございます」
『うむ』
口角を少しあげてジンは挨拶をすると、視線をノアに移した。
「はじめまして。フォクス子爵家の四男、ジンと申します」
私が昨日、自分のことをスコルピウス公爵家の娘だと言ったからだろうか。ジンは丁寧にノアへと話しかけた。けれど、ノアは不機嫌そうにそっぽを向いている。
「ノア、どうしたの?」
「何でもないよ」
私が話しかければいつもの笑みを浮かべるものの、ジンへ向ける視線は冷たい。
「僕はノア。君と親しくするつもりはないから。今日は姉さんの頼みだから来ただけから、勘違いしないでよね」
「そうか。わざわざありがとな。姉さん想いなんだな」
ノアの様子を見て、ジンは敬語を使うのを止めたよう。何だか、可愛い弟を見るお兄ちゃんみたいな雰囲気だ。
「当たり前だろ。姉さんは世界一美人で可愛くて見た目は女神なのにちょっとぬけているところがまた魅力的でしかも優しいんだから。それに──」
息継ぎはどこでしているの? ってくらいノアは止まらずに話続ける。
「ちょっ……。ノア、ストップ。ストップ!」
恥ずかしくなって途中で止めに入れば「言い足りないのに……」とちょっぴり頬を膨らます姿に天に召されるかと思った。
「親父には話をしたし、魔力がフォクス領のなかで強い者も集めてある。ただ、うちの領は魔術を使える者が少ないみたいなんだ。それに、使えると言ってもそよ風を起こすくらいらしい」
そう。スコルピウス家とリカルドの方が極少数。魔術は使えてもジンの言う通りそよ風程度が一般的だ。それでも魔術が使える人に集まってもらう必要があった。結界が完成したら定期点検をしてくれる人がいないと困るから。
「大丈夫だよ。結界の修復ができるのが理想だけど、点検さえできればあとはどうにでもなるから」
一番の問題は私が上手く結界を張れるかなんだよね。細かい作業は苦手だし。そのために、ノアがきてくれたんだけどさ。




