プロローグ
「ノアー! はやくはやく!! 早くしないと逃げられちゃうって」
「姉さん、落ち着いて。巣は分かってるんだから、急ぐ必要はないよ」
「え? 巣が分かってたの? でも、はやくしないと誰かに取られちゃうかもでしょ!?」
木々の枝から枝へと飛び移り、プテラノドンのような見た目の真っ赤な魔物、レッドプテラをノアと一緒に追いかける。なぜ、追いかけているかって? 手懐けて飼うために決まっている。
私はレッドテプラの背に乗って空を飛ぶ必要があるのだ。
確かに魔術で身体強化をすれば馬車よりも速く走れるし、重力とスピードのコントロールを身に付ければ水の上を走ることもできた。だけど、飛ぶのだけは道具が必要なうえに繊細な風の魔術が必要ときた。
繊細な魔術も以前よりは上手くなったし、使えないことはない。でもね、人間だもん。得意不得意くらいある。
山を跡形もなく吹き飛ばすのと、扇風機の微風くらいに風を調整し続けるのって、圧倒的に山を100個くらい吹き飛ばしちゃう方が簡単だ。
だから、私は考えたのだ。どうすれば空をらくに飛べるかを。私以外も移動ができるかを。
そして、気がついたのだ。魔物に乗れば良いことに。
あのレッドプテラたちは私の野望を叶えるためには必要不可欠。力持ちなうえに飛行速度も速い。
それは、遂に見つけたお米を生産している領地とスコルピウス領への交通手段にもなってくれるはずだ。
まさか、お米の生産が隣の領だったとは。
領地の屋敷から隣のフォクス領に行くは、山を5つ、谷を2つ、河を3つほど越えなくてはならない。隣とはいえ、普通は行き来するのに片道半月は少なくともかかる。遠回りしなくてはならないのだ。
隣だからと気軽に行こうとしたら、山・谷・河あり、魔物ありときたもんだ。フォクス領に行こうと朝早くに家を出たのに、帰ったら夕方だったことは記憶にも新しい。プチ冒険になってしまったのだ。
ぎぎゃあぁぁぁぁ、ぎぎゃぎゃぎゃぎゃ!!
興奮したような声でレッドプテラたちは鳴いている。こちらに気が付いたみたいだ。
「ノア! いっくよー!!」
拳を身体強化させる。確か、リーダーよりも強いと認められれば、その群れの頂点になれるはずだ。
さぁ、(力ずくで)手懐けようか。
第2章が始まりました!
よろしくお願いいたします(*´∇`*)




