あまい条件 レオナルドside3
魔道具がアリアの魔力に耐えられなくなったのだ。
怒らせてしまった。自分の気持ちを優先し過ぎた結果だ。自業自得だけど、アリアを見ることができなくて、視線は壊れたら金細工の魔道具へと向ける。
そこからは必死だった。どうにか表情を取り繕ったのは覚えているが、自分が何を話したのかはあいまいだ。
チラリとアリアを見れば、どことなく顔色が悪い。それもそうだろう。アリアの魔力を無断で封じたのだから。嫌悪感を持たれてもおかしくはない。
顔が歪みそうなのを必死に堪えて笑みを作る。
「僕が怖い?」
自棄だった。もし、怖がらせたのならこれから一緒に過ごすのは可哀想だ。だから、その時は──。
「……怖くはないですけど」
「けど、何かな?」
声が震えなかっただろうか。期待と不安でおかしくなりそうだ。
「面倒くさい。…………ぁ」
めんどうくさい? ……えっ!? 今、面倒くさいって言った?
上手く混乱を押さえ込めず、呆然とアリアを見詰めていれば、追い討ちをかけてきた。本人はフォローしたかったのだろうけど。
「あの、大丈夫ですか? 事実とはいえ、失礼なことをすみません」
「事実……」
衝撃だった。まさか、僕が他人から面倒くさいなんて言われるとは。良くも悪くも王族の僕にそんなことを言える人なんていなかったのに……。
「はは……、あははははははは!!」
そっかぁ。僕って面倒くさいのか。確かに、リカルドのことを理由付けて動かなかったり、自分は何でもできると思っていたり、面倒くさいタイプなのかもしれない。
思わぬ発見だ。良い意味で言われたわけではないのに、すごく気分が良かった。
「僕、アリアのこと気に入っちゃったよ」
「はい!?」
きっと、気に入られる要素なんてないと思っているんだろう。そんなところもおかしくて笑いが止まらない。
「絶対にアリアにお嫁に来てもらうからね」
「お断りします」
振られてしまったか。でもね、まだ時間はたっぷりあるから。
「とりあえず、今は温室に一緒に行ってくれる?」
「うぐぅ……」
小首を傾げて言えば、アリアは呻き声をあげた後、了承してくれた。うん、これからはこういう感じで行こうかな。でも、これじゃあ恋愛対象にはなれないか。
悩みながらも温室につき、アリアとオレアリアを見る。いくらアプローチしても空振りで手応えがない。これは、よくメイド達がこそこそと話していた恋愛対象外ってやつだろうか。
がっかりした自分に笑ってしまう。そうか、僕はアリアが好きなのか。
アリアとの時間を名残惜しく思いながらも、秋の庭園へと戻る。
あと少しで庭園に着くところで、今日の一番のメインであるリカルドの話をした。ここで頼むのが一番成功するから、わざと庭園のすぐそばで頭を下げた。
自分の卑怯さと、リカルドと話をするアリアを想像して息が詰まる感覚がしたけれど、それには気が付かないふりをする。
最初は断られたけれど、結局アリアは了承してくれた。
「一度だけ、お話をしてみます。てすが、期待はしないでくださいね。それと、私に親しげに話しかけてこないことが条件です」
親しげに話しかけないこと、なんて甘い条件なのだろう。親しげでなければ、話しかけようがアプローチをしようが自由なのだから。
3話と言いましたが、もう1話続きます。
本日の22時台に更新します。




